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最強天使、無双執事にいじられる
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『蒼くんに魔法を見られたかもしれぬが、ブルーベリーファームのドルチェピザも、遊お手製のもやしラーメンも美味だった。今日も良き一日だった』
風呂を上がり、遊の部屋でまどろむ俺。バレットにそんなメッセージを送った直後、スマホがオーロラのように輝きを放った。
『サミュエル様。日記めいた、もっとも返信に困るメッセージをありがとうございます』
ぐっ……!
俺はスマホを耳に当てた。光が窓ガラスに反射し、部屋中が小さな星屑で満ちていく。車内で蒼くんが目にしたのも、きっとこれに似た光景だったはずだ。
あの間合いと視線。何か思うところがあるようだったが——
「……サミュエル様」
「やあ、バレット。今日のドルチェピザは——!」
「あくまで予想でございますが、蒼様は魔法を目撃された可能性が高いかと」
ギクッ!
「や、やはりそう思うか?」
「ええ」
「蒼くんのあの性格だ、混乱を招くことなどないだろうが……」
「サミュエル様。ブルーベリーに心酔なさり、注意散漫でらしたのでは?」
図星である。
「ご夕食のもやしラーメンも大変魅力的でらして。ちなみに、もやしの生産量は栃木がトップクラスでございます」
我が無双執事も、すっかり栃木推しである。もやしの統計データまで押さえている執事など聞いたことがない。いや、もはや観光大使か?
しかし、執事の休暇中に天使と対面するのは厳禁だ。バレットがこの地に足を踏み入れたくとも、指を咥えて我慢せねばならぬのが現状である。
「バレットよ、久しぶりの連休はどうだ? もっとも、俺のケアをしながらにはなってしまってるが」
「上界と下界を自由に行き来し、満喫させていただいております」
どこまでも涼しい声で返す。不満の一つも言いたくなるところだろうが、そこはやはり無双執事だ。
「それはよかった。たまには羽根を伸ばすことも必要だな」
「羽根を伸ばす……おや? 天使アピール、ありがとうございます」
ち、違うっ……!
「サミュエル様。当初は戸惑いのご連絡ばかりでしたが、栃木の暮らしにもすっかり馴染まれたご様子で、安堵致しております」
「バレット……」
なんだかんだで愛のある男だ。こういう優しさが堪える。
「……そして時折、『ブルーベリーのように甘酸っぱい恋』などという、震えあがる台詞をスルーされる姿もまた、最強天使らしからぬ愛らしさが溢れていてよろしいかと」
よりによって、一番見られたくないシーンを見られていた件。
「蒼くんはその後の運転でも、夕食でも、特に何も聞いてこなかったんだが。このままやり過ごす形で問題ないだろうか?」
「ええ。ですが、いつどこで騒ぎになるかわかりませんので。残りの期間はくれぐれもお気をつけくださいませ」
——階段を上って来る足音。不規則でやけに騒がしい。遊だ。
「サミュエルさあーん!」
バアァアンッ!とドアを開けるや否や、遊が部屋に飛び込んできた。
「……あっ!」
慌てて俺に駆け寄り、オーロラのように煌めくスマホに耳を当てる。
「バレットさんですか!?」
「……え? ええ、バレットでございま……」
「バレットさんもさ、サミュエルさんと同じくらいカッコいいんですよね!?」
「!」
「あれ? もしもし?」
「………………」
——切れた。
ノイズではない。おそらく遊の勢いと突然の称賛に、バレットは何も言えなかったのだろう。
リムレスの眼鏡を細い指で持ち上げ、動揺するツンデレ執事の姿が目に浮かぶ。
再びスマホがオーロラ色に瞬いた。ははは。照れ隠しのメッセージか?
『サミュエル様、おやすみなさいませ。無邪気な遊様の声に、私もブルーベリーのように甘酸っぱい恋を思い出しました』
その傷をえぐるでない、バレットよ。
——続く——
いつも応援ありがとうございます!バレットのブラックジョークに笑いながら、リラックスなさってください^^笑!
風呂を上がり、遊の部屋でまどろむ俺。バレットにそんなメッセージを送った直後、スマホがオーロラのように輝きを放った。
『サミュエル様。日記めいた、もっとも返信に困るメッセージをありがとうございます』
ぐっ……!
俺はスマホを耳に当てた。光が窓ガラスに反射し、部屋中が小さな星屑で満ちていく。車内で蒼くんが目にしたのも、きっとこれに似た光景だったはずだ。
あの間合いと視線。何か思うところがあるようだったが——
「……サミュエル様」
「やあ、バレット。今日のドルチェピザは——!」
「あくまで予想でございますが、蒼様は魔法を目撃された可能性が高いかと」
ギクッ!
「や、やはりそう思うか?」
「ええ」
「蒼くんのあの性格だ、混乱を招くことなどないだろうが……」
「サミュエル様。ブルーベリーに心酔なさり、注意散漫でらしたのでは?」
図星である。
「ご夕食のもやしラーメンも大変魅力的でらして。ちなみに、もやしの生産量は栃木がトップクラスでございます」
我が無双執事も、すっかり栃木推しである。もやしの統計データまで押さえている執事など聞いたことがない。いや、もはや観光大使か?
しかし、執事の休暇中に天使と対面するのは厳禁だ。バレットがこの地に足を踏み入れたくとも、指を咥えて我慢せねばならぬのが現状である。
「バレットよ、久しぶりの連休はどうだ? もっとも、俺のケアをしながらにはなってしまってるが」
「上界と下界を自由に行き来し、満喫させていただいております」
どこまでも涼しい声で返す。不満の一つも言いたくなるところだろうが、そこはやはり無双執事だ。
「それはよかった。たまには羽根を伸ばすことも必要だな」
「羽根を伸ばす……おや? 天使アピール、ありがとうございます」
ち、違うっ……!
「サミュエル様。当初は戸惑いのご連絡ばかりでしたが、栃木の暮らしにもすっかり馴染まれたご様子で、安堵致しております」
「バレット……」
なんだかんだで愛のある男だ。こういう優しさが堪える。
「……そして時折、『ブルーベリーのように甘酸っぱい恋』などという、震えあがる台詞をスルーされる姿もまた、最強天使らしからぬ愛らしさが溢れていてよろしいかと」
よりによって、一番見られたくないシーンを見られていた件。
「蒼くんはその後の運転でも、夕食でも、特に何も聞いてこなかったんだが。このままやり過ごす形で問題ないだろうか?」
「ええ。ですが、いつどこで騒ぎになるかわかりませんので。残りの期間はくれぐれもお気をつけくださいませ」
——階段を上って来る足音。不規則でやけに騒がしい。遊だ。
「サミュエルさあーん!」
バアァアンッ!とドアを開けるや否や、遊が部屋に飛び込んできた。
「……あっ!」
慌てて俺に駆け寄り、オーロラのように煌めくスマホに耳を当てる。
「バレットさんですか!?」
「……え? ええ、バレットでございま……」
「バレットさんもさ、サミュエルさんと同じくらいカッコいいんですよね!?」
「!」
「あれ? もしもし?」
「………………」
——切れた。
ノイズではない。おそらく遊の勢いと突然の称賛に、バレットは何も言えなかったのだろう。
リムレスの眼鏡を細い指で持ち上げ、動揺するツンデレ執事の姿が目に浮かぶ。
再びスマホがオーロラ色に瞬いた。ははは。照れ隠しのメッセージか?
『サミュエル様、おやすみなさいませ。無邪気な遊様の声に、私もブルーベリーのように甘酸っぱい恋を思い出しました』
その傷をえぐるでない、バレットよ。
——続く——
いつも応援ありがとうございます!バレットのブラックジョークに笑いながら、リラックスなさってください^^笑!
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