2 / 7
迷い道
しおりを挟む
車はさとみを拾った横浜駅からずっと渋滞を抜け出せずにいたが、ようやくスムーズに走れるようになってきた。
この先坂道が続く。国道であるからか舗装も綺麗で走りやすいが、坂道というか山道で車線が少ない上に狭い。ずっとカーブも続くので夜間の運転は注意が必要だ。
これで昼間であれば崖下の住宅街が一望出来る、いい景色の中でのドライブになっただろうが、夜は対向車のライトで目が眩むし、上り車線は行きと違って崖側を走るせいもあってより慎重になる。
はじめがチラリと横を見ると、さとみが少々居心地悪そうにしている。
「まあ800円無くした「850円」……850円無くした程度で良かったなんて言わないけどさ」
高校生には850円は大きいだろうから。
「ピックももしかしたら次のライブでまたキャッチ出来るかも? しれないし……」
「うん……」
自分でも、無いな、と思いつつ口にしているせいか、さとみの反応はよろしくない。とはいえ妹の気分を浮上させる気の利いた言葉も思い付かない。
バンドのピックなら物販で手に入るんじゃないかとも思うが、そんなデリカシーに欠ける事は口にしないという分別はある。次の誕プレそれでいいか、とは思ったが。
まあでも、物で妹のうじうじが浮上するなら。
さとみはうつ向きがちに窓の外を見ている。
「元気だせよ。お前の気に入っていたあのサイフならさ、今度「ねえ」……うん?」
さとみが声をかけるのと同時にはじめは妙な違和感に襲われた。
「なんか……ちょっと……」
「悪い、ちょっと待ってて」
先程から落ちつかなげな妹を気にしつつ、はじめは車を停めた。
道に迷ったような気がしたのだ。
「あれ? おかしいな……」
わき道があってもそれは対向車線側で、車線を跨いで右折しなければ道なりに走るしか無い道なのだ。迷うはずがない。
迷うはずはないのだが、しかし気付かないうちにいつの間にか知らない道を走っていたらしい。
先ほどまで走っていた前の車も後続車も対向車も見当たらない。
日曜日の夜とはいえまだ深夜でもないし、正しいルートであれば横浜~東京の街道でまったく車が通っていないなんて事は普段はない。住宅も道に沿ってちらほら建っているし、街灯も市街地に出るまで途切れることはない。
しかし、今車はこの一台がぽつんと停まっているだけで後続もいなければ、街灯も少し離れたところに1つあるのが見えるだけ。真っ暗で辺りの様子がわかりづらい。人家の明かりも周囲には見当たらない。
これは……。
「迷った」
この先坂道が続く。国道であるからか舗装も綺麗で走りやすいが、坂道というか山道で車線が少ない上に狭い。ずっとカーブも続くので夜間の運転は注意が必要だ。
これで昼間であれば崖下の住宅街が一望出来る、いい景色の中でのドライブになっただろうが、夜は対向車のライトで目が眩むし、上り車線は行きと違って崖側を走るせいもあってより慎重になる。
はじめがチラリと横を見ると、さとみが少々居心地悪そうにしている。
「まあ800円無くした「850円」……850円無くした程度で良かったなんて言わないけどさ」
高校生には850円は大きいだろうから。
「ピックももしかしたら次のライブでまたキャッチ出来るかも? しれないし……」
「うん……」
自分でも、無いな、と思いつつ口にしているせいか、さとみの反応はよろしくない。とはいえ妹の気分を浮上させる気の利いた言葉も思い付かない。
バンドのピックなら物販で手に入るんじゃないかとも思うが、そんなデリカシーに欠ける事は口にしないという分別はある。次の誕プレそれでいいか、とは思ったが。
まあでも、物で妹のうじうじが浮上するなら。
さとみはうつ向きがちに窓の外を見ている。
「元気だせよ。お前の気に入っていたあのサイフならさ、今度「ねえ」……うん?」
さとみが声をかけるのと同時にはじめは妙な違和感に襲われた。
「なんか……ちょっと……」
「悪い、ちょっと待ってて」
先程から落ちつかなげな妹を気にしつつ、はじめは車を停めた。
道に迷ったような気がしたのだ。
「あれ? おかしいな……」
わき道があってもそれは対向車線側で、車線を跨いで右折しなければ道なりに走るしか無い道なのだ。迷うはずがない。
迷うはずはないのだが、しかし気付かないうちにいつの間にか知らない道を走っていたらしい。
先ほどまで走っていた前の車も後続車も対向車も見当たらない。
日曜日の夜とはいえまだ深夜でもないし、正しいルートであれば横浜~東京の街道でまったく車が通っていないなんて事は普段はない。住宅も道に沿ってちらほら建っているし、街灯も市街地に出るまで途切れることはない。
しかし、今車はこの一台がぽつんと停まっているだけで後続もいなければ、街灯も少し離れたところに1つあるのが見えるだけ。真っ暗で辺りの様子がわかりづらい。人家の明かりも周囲には見当たらない。
これは……。
「迷った」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる