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36 露店商
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ファーナが手にしているのは半分位の長さの鉛筆。筆箱にはまだ長いものが2本とちび鉛筆がたくさんある。
鉛筆がファーナにとって珍しい物であるのなら何かと交換してもらえるかと思ったのだ。
とはいっても使いかけの鉛筆なので、現金にならないのは勿論、大した物とは交換できないだろうが。
(言ってみるだけでも言ってみよう。鉛筆と交換できそうなもの…)
何と交換できるだろうかと考えたとき、先ほどひどく気になった物が目に止まった。
焚き火を囲む一同全員華とファーナのやり取りを見守っている。その中でも一番若そうな赤い髪の男の持つ小さな壺の中身を少し交換してもらえたら。
華はファーナに向かって鉛筆と男の持つ壺を交互に指差し、親指と人差し指を立て“L”の形にした手を反転させてみた。
「これと、あれ。交換してもらえませんか?」
『交換?あれと?』
ファーナも同じように“L”の手をくるくるさせたので「そうそう」と頷いていたら、ファーナが壺を持った男に何やら指示をした。
よく見たら結構幼い顔つきをしたその男…カイというらしい、が、幌馬車から机のような細長い台を出してきて華の前に置いたと思ったら、ずっとファーナの側に控えていた女性がその上に敷物を掛けた。
それからはカイと女性によって敷物の上にいろいろなもの…壺や木箱や布地などがどんどん並べられていき、いつの間にか木札の束を持ったアルベルトがそれらに木札を置いていく。木札には先ほど教えてもらったこちらの数字。
「お店…」
華が瞬きして見ているあっという間のうちに、露店が出来上がっていた。
『ローレンス商店、開店よ!』
ファーナの言葉に反射してカイが動き出した。シアも手伝い、必要そうなものを幌馬車から出していく。アルベルトの手にはいつの間にか値札の束があり、カイたちが出してくる品を待ち構えている。
必要とされている場所場面、いつでもどこでもファーナが『開店』だと言えば開店するように躾られているカイは、特別な指示がなければ自分で判断して品物を出していく。今日は護衛チームの紅一点シアが手伝ってくれているので相談できるのはありがたい。
(せいぜい10歳位にしか見えないけど17歳だっていうし…俺より明らかに賢いのは確かだけど。だけど…みんな気付いてる筈だよな…。あの子、絶対貴族のお嬢様だって…。山の中にいる貴族の17歳のお嬢様相手の品出しって何並べればいいんだよ~っ)
カイが内心頭を抱えながら幌馬車から机(小)を出そうとすると、シアが机(中)をポンポンと叩き、自分は上品な掛け布を出してきた。
『姐さん~っ』
『姐さんヤメロ。調味料に日用品と女の子の小物ってとこじゃない。ほれ、さっさと』
そんな動揺は表に見せずに露店を机ひとつ分何とか完成させたカイたちだったが、完成した露店を見て華の方が動揺した。何せ華にはこちらの現金の持ち合わせがない。まさか日本円が使える訳もなし…。
動揺する華に、ファーナがひとつひとつ品物を説明してくる。
ただの旅の人でなく商人一行だったらしいのは大変うれしいのだが、対価鉛筆で何がお買い物できるというのか。一応背負子にアレはあるが、何か誤解させたなら申し訳ないので有り金を見せておく。
「ファーナさん、あの、わたし、お金これしか…」
華ががま口から10銭のアルミ貨と5銭の錫貨をいくつかファーナに見せるが、ファーナの手で押し止められた。
鉛筆がファーナにとって珍しい物であるのなら何かと交換してもらえるかと思ったのだ。
とはいっても使いかけの鉛筆なので、現金にならないのは勿論、大した物とは交換できないだろうが。
(言ってみるだけでも言ってみよう。鉛筆と交換できそうなもの…)
何と交換できるだろうかと考えたとき、先ほどひどく気になった物が目に止まった。
焚き火を囲む一同全員華とファーナのやり取りを見守っている。その中でも一番若そうな赤い髪の男の持つ小さな壺の中身を少し交換してもらえたら。
華はファーナに向かって鉛筆と男の持つ壺を交互に指差し、親指と人差し指を立て“L”の形にした手を反転させてみた。
「これと、あれ。交換してもらえませんか?」
『交換?あれと?』
ファーナも同じように“L”の手をくるくるさせたので「そうそう」と頷いていたら、ファーナが壺を持った男に何やら指示をした。
よく見たら結構幼い顔つきをしたその男…カイというらしい、が、幌馬車から机のような細長い台を出してきて華の前に置いたと思ったら、ずっとファーナの側に控えていた女性がその上に敷物を掛けた。
それからはカイと女性によって敷物の上にいろいろなもの…壺や木箱や布地などがどんどん並べられていき、いつの間にか木札の束を持ったアルベルトがそれらに木札を置いていく。木札には先ほど教えてもらったこちらの数字。
「お店…」
華が瞬きして見ているあっという間のうちに、露店が出来上がっていた。
『ローレンス商店、開店よ!』
ファーナの言葉に反射してカイが動き出した。シアも手伝い、必要そうなものを幌馬車から出していく。アルベルトの手にはいつの間にか値札の束があり、カイたちが出してくる品を待ち構えている。
必要とされている場所場面、いつでもどこでもファーナが『開店』だと言えば開店するように躾られているカイは、特別な指示がなければ自分で判断して品物を出していく。今日は護衛チームの紅一点シアが手伝ってくれているので相談できるのはありがたい。
(せいぜい10歳位にしか見えないけど17歳だっていうし…俺より明らかに賢いのは確かだけど。だけど…みんな気付いてる筈だよな…。あの子、絶対貴族のお嬢様だって…。山の中にいる貴族の17歳のお嬢様相手の品出しって何並べればいいんだよ~っ)
カイが内心頭を抱えながら幌馬車から机(小)を出そうとすると、シアが机(中)をポンポンと叩き、自分は上品な掛け布を出してきた。
『姐さん~っ』
『姐さんヤメロ。調味料に日用品と女の子の小物ってとこじゃない。ほれ、さっさと』
そんな動揺は表に見せずに露店を机ひとつ分何とか完成させたカイたちだったが、完成した露店を見て華の方が動揺した。何せ華にはこちらの現金の持ち合わせがない。まさか日本円が使える訳もなし…。
動揺する華に、ファーナがひとつひとつ品物を説明してくる。
ただの旅の人でなく商人一行だったらしいのは大変うれしいのだが、対価鉛筆で何がお買い物できるというのか。一応背負子にアレはあるが、何か誤解させたなら申し訳ないので有り金を見せておく。
「ファーナさん、あの、わたし、お金これしか…」
華ががま口から10銭のアルミ貨と5銭の錫貨をいくつかファーナに見せるが、ファーナの手で押し止められた。
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