オマケの元引き篭もりが異世界征服を目論むそうです

たんたん

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小銭稼ぎ

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 まあ勝負の舞台と言ってもギルド内の酒場だけどな、俺はカードをお借りしカードを確認する。確認した限り日本のトランプと変わりなかった。しいて言えばカードの材料の紙がしょぼい位である。シャッフルに問題があるか確認をしたが、シャッフルができない程ではなかった。後は誰をカモにするかを決めなければ、俺は酒場にいる人達を観察する。

 今酒場にいるのは10人。賭けポーカーをやってる4人の中年おっさん冒険者のグループ。身なりの良さそうな小学生位の少女と1人の執事っぽい老人と護衛っぽい男のグループ。30代の女性冒険者2人のグループ。1人で飲んでるおっさん冒険者という感じである。

 よしっ、最初の客はポーカーで勝ってニコニコのおっさんにしよう。身なりの良さそうな少女はお金は持ってそうだが、とっつき難そうだからな。声をかける相手を決めた俺はさっそく動きだした。

「今日は調子がいいようですね。」

 俺が急に声をかけたので男達は会話を止め、俺に何だコイツという視線が集まる。日本にいる時から空気を読まなかったのでこういう視線には慣れている。重要なのは最後まで自分のペースを貫き通すことである。

「私は流れの芸者です。こちらのカードを使い、皆さんを驚かせることができます。見事皆さんを驚かせることができれば、お気持ちでチップをいただければと思います。手品と言うのですが、見られてみませんか?」

 俺がそう言うと不審者を見る目だった男達の顔がいい暇つぶしを見つけたと思ったのだろう、ニヤニヤに変わった。

「面白い、やってみろ。」

 ポーカーに勝っていた男に言われ、俺のショータイムが始まる。俺は男にカードを引かせ、それを山札に戻し1番上に持ってくるという基本のマジックをみせた。

 男達はポカンとした顔をした後、興奮したようにもう一度見せろと言ってくる。始めてマジックを見たのならそうなるよな、俺にも経験がある。男達に求めるままマジックを披露する、男達はどうにかマジックを見破ってやろうと必死に見てくるが5度目で降参し、良いものを見せてくれたとチップをくれた。10円っぽいから銅貨なのだろう、それを5枚程くれた。

 その光景を見ていた女性冒険者の2人組が俺に声をかけてきてマジックを披露していた。和やかな空気を突然、少女によって壊されたのだ。

「どうせただのイカサマでしょ。」

 身なりの良さそうな少女は何が気に入らなかったのかわからないが俺に喧嘩を売ってきやがった。ここで喧嘩を買うのは簡単だ、しかしそれでは今まで作ってきた空気が冷めるし少女に負けた気がする。それなら正攻法でギャフンと言わせたい。

「そう言われる方もいらっしゃいます。」

「ほらっ、イカサマじゃない。」

「いやいや気が早い、私はこう付け加えようとしたんです。そう言う方を黙らせるマジックもありますよ。」

 俺は笑みを浮かべる。俺の売った喧嘩を買うのか?と。少女は俺の挑発にのっかってきた。

「凄い自信ね、その長く伸びた鼻っ柱を叩き折ってやるわ。」

「そうですか、それは楽しみです。ですが、ムキになって泣かないでくださいね。」

「いいでしょう、受けてたつわ。そのマジックとやらをやってみせなさい。」

「わかりました、それではマジックを始めます。内容は簡単です。お嬢様の選ぶカードを私が当てます。」

「どうせ選んだ後にイカサマをするんでしょ。」

「お嬢様はお気が早い。私はお嬢様の選んだカードを当てますが、カードを当てるのはお嬢様が選ぶ前にです。イカサマがないように、私が選んだカードを先にこのテーブルに座っている以外の皆様にお見せしましょう。これでもイカサマだと言いますか?」

「そんなことできる訳ないでしょう。できるものならやってみなさい。もしできたら、チップに銀貨をあげるわ。爺、分かったわね。」

 爺と言われた執事っぽい人は懐から銀貨を出してきた。俺はわかりましたと頷き、ショーを始める。

 俺がやろうとしているのはマジックではなく、あるメンタリストのやっていたものである。相手に自分の好きなカードを引かせる話術である。俺の優秀な妹に仕込んで貰い、俺はこのテクニックをマスターした。この戦いは出来レースなのである。

 そして戦いが終わり俺の前には半べそをかいた少女が目の前にいる。そして俺の周りの席では俺の成功に沸き、どんちゃん騒ぎになっている。

 無益な戦いだった。俺は泣き止まない少女に気まずい思いをし、銀貨を貰いこの場を去ることにした。帰り際に酒場のマスターに盛り上がるから、夜にもマジックをやってくれと頼まれた。

 こうして俺は昼に加え、夜のマジックショーを成功させ、小金持ちになったのである。
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