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4話 帰りたい少年、帰さないジジイ
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「ちょーーーーっと待てぇぇぇぇい!!」
帰ろうとする旭の前に、光の速さでジジイが行く手を塞いだ。
旭は逃げ出した。
しかしジジイに回り込まれてしまった。
それでも帰ろうとする旭に、なおもジジイは食い下がる。
「な、何故じゃあ! お前くらいの年頃なら、魔法やら召喚術やら興味があるじゃろう!? ミラクル全開パワーで今こそアドベンチャーじゃろうが!!」
後半になるにつれ、意味のわからないことを言い出すジジイ、もとい道城に若干の疲れを感じながら旭は答えた。
「皆が皆そうじゃないし、少なくとも俺は平穏に暮らしたい。冒険にはリスクが付き物だし、スリルも味わいたいとも思わない」
「お前……本当に高校生か?」
高校生らしからぬ達観した考えに、道城も冷静にならざるを得なかった。
「とにかく、俺は帰るから」
「待て待て、分かった分かった。そこまで嫌なら仕方ない。無理にとは言わん」
「今度はやけにあっさりと引き下がるね」
「当たり前じゃ。お前はワシにとって大切な孫じゃ。無理矢理やらせるのは不本意じゃからの。まぁ、ここまで興味が無かったのは予想外じゃったが」
(その割にはしつこかったけど)
旭はそう心の中で思ったが、あえて口に出すのをやめた。このまま何事もなく家に帰りたいと思ったからだ。
「なので、お前にはちょっとしたテストだけをやってもらうことにしよう」
「ちょっと待て」
前言撤回。やはり口は出そう。何故ならそうしないと家に帰れないからだと旭は思った。
「さっき無理にはさせないと言ったのは嘘だったのか?」
「嘘ではない。お前がそう望むのなら召喚術を教えるつもりもないし、召喚士に育てるつもりもない」
だったら何故、と旭が言おうとする前に道城が疑問に答えた。
「召喚士に最も必要なものは何か分かるか?それは素質と才能じゃ」
「素質と才能? 同じじゃないの?」
「似ているようで全く違うな。素質とはその人間が生まれ持ったもの。才能とはその素質を活かす能力のことじゃ。一流の召喚士というのはどちらも兼ね備えておるのじゃ」
「……つまり、テストっていうのは、その素質と才能とやらを見るってこと?」
「察しがいいの。その通りじゃ」
流石我が孫と言いながら道城は笑みを浮かべる。
「召喚士にならないんだから必要ないでしょ」
「そうなんじゃが、単純に興味があっての」
「だから断るって。そういう面倒そうなのは」
あくまで最初の姿勢を崩さない旭に道城は言う。
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「嫌だって」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「だから嫌だって。早く帰りたいの」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「いや、だから……」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
旭は思った。
あれ、これRPGでよくある【いいえ】を選択しても絶対に断れないやつじゃない?【はい】を選ぶまで永遠にループするやつじゃない?
チラリと道城に目をやる。道城は満面の笑みでこちらを見ていたが、その表情からは言うことを聞かないと帰さんぞ、とでも言いたげな無言の圧力を旭はヒシヒシと感じていた。
道城の言う通りにしない限り終わりが来ないことを悟った旭は、観念してテストを受けることを決めた。
「ハァ……。分かったよ。やるだけやったらすぐ帰るからな」
「おぉ、流石我が孫じゃ。そう言ってくれると思ったぞ。勿論テストをやるだけじゃ。終わったらすぐに帰って構わん。では早速テストを行う部屋まで案内しよう。さぁ、善は急げじゃ」
旭が了承した途端に満面の笑みで話す道城。旭はそれを白い目で見ながら、道城の案内に従い付いて行く。
――案内された部屋の前に着く。目の前には何の変哲もない扉があるだけ。道城が扉を開け、旭も一緒に入る。中は先程の部屋と同様に板張りの造りになっていた。しかし、ただ一つだけ決定的に違う所があった。
「広っ・・・」
そう、旭が思わず呟いてしまったように広さが違うのである。ただ広いのではない・・・。本当に広いのである。更に周囲には壁は無く、何処までも地平線が続いているように見える程の広さだった。
「ホッホッホッ。驚いたか?」
横で道城がニヤリと笑いながら言う。
「家の中にこんな場所が・・・」
「勿論ここは家の中に非ず。あのドアには特殊な術をかけておっての。ワシ以外の者が開けると何の変哲もない只の部屋に出るが、ワシが開けるとご覧の通りじゃ。ここには召喚術を使う際に、その力に耐える為の特殊な結界が張られておる。ちょっとやそっとの力じゃ壊れやせん」
「召喚術って、そんな大掛かりで危険なの?」
「その召喚獣の持つ力によりけりじゃな。強大な力を持つ召喚獣にはそれなりの対処が必要じゃが、今回はお前のテストじゃからな。まぁ、そんなに心配することはないわい」
道城はそう言うと、また何やら呟きながら床に手をかざすと、そこに魔法陣が現れた。半径2m程の円で出来ており、円の中には様々な模様と何やら見慣れぬ文字が描かれていた。
それはまさに絵に書いたようなThe魔法陣だった。
「さぁ、その陣の真ん中に立つのじゃ。そうすれば、後は勝手に魔法陣が反応して全てやってくれる。時間はかからん」
道城の言葉を聞き、不安な気持ちもあったが、早く帰るためにも旭は恐る恐る魔法陣へと足を動かし、中心に立った。
しかし、魔法陣は何の反応も示さなかった。
帰ろうとする旭の前に、光の速さでジジイが行く手を塞いだ。
旭は逃げ出した。
しかしジジイに回り込まれてしまった。
それでも帰ろうとする旭に、なおもジジイは食い下がる。
「な、何故じゃあ! お前くらいの年頃なら、魔法やら召喚術やら興味があるじゃろう!? ミラクル全開パワーで今こそアドベンチャーじゃろうが!!」
後半になるにつれ、意味のわからないことを言い出すジジイ、もとい道城に若干の疲れを感じながら旭は答えた。
「皆が皆そうじゃないし、少なくとも俺は平穏に暮らしたい。冒険にはリスクが付き物だし、スリルも味わいたいとも思わない」
「お前……本当に高校生か?」
高校生らしからぬ達観した考えに、道城も冷静にならざるを得なかった。
「とにかく、俺は帰るから」
「待て待て、分かった分かった。そこまで嫌なら仕方ない。無理にとは言わん」
「今度はやけにあっさりと引き下がるね」
「当たり前じゃ。お前はワシにとって大切な孫じゃ。無理矢理やらせるのは不本意じゃからの。まぁ、ここまで興味が無かったのは予想外じゃったが」
(その割にはしつこかったけど)
旭はそう心の中で思ったが、あえて口に出すのをやめた。このまま何事もなく家に帰りたいと思ったからだ。
「なので、お前にはちょっとしたテストだけをやってもらうことにしよう」
「ちょっと待て」
前言撤回。やはり口は出そう。何故ならそうしないと家に帰れないからだと旭は思った。
「さっき無理にはさせないと言ったのは嘘だったのか?」
「嘘ではない。お前がそう望むのなら召喚術を教えるつもりもないし、召喚士に育てるつもりもない」
だったら何故、と旭が言おうとする前に道城が疑問に答えた。
「召喚士に最も必要なものは何か分かるか?それは素質と才能じゃ」
「素質と才能? 同じじゃないの?」
「似ているようで全く違うな。素質とはその人間が生まれ持ったもの。才能とはその素質を活かす能力のことじゃ。一流の召喚士というのはどちらも兼ね備えておるのじゃ」
「……つまり、テストっていうのは、その素質と才能とやらを見るってこと?」
「察しがいいの。その通りじゃ」
流石我が孫と言いながら道城は笑みを浮かべる。
「召喚士にならないんだから必要ないでしょ」
「そうなんじゃが、単純に興味があっての」
「だから断るって。そういう面倒そうなのは」
あくまで最初の姿勢を崩さない旭に道城は言う。
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「嫌だって」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「だから嫌だって。早く帰りたいの」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
「いや、だから……」
「そんなこと言わずにやってくれんかのう。ちょっと見せてもらうだけじゃから」
旭は思った。
あれ、これRPGでよくある【いいえ】を選択しても絶対に断れないやつじゃない?【はい】を選ぶまで永遠にループするやつじゃない?
チラリと道城に目をやる。道城は満面の笑みでこちらを見ていたが、その表情からは言うことを聞かないと帰さんぞ、とでも言いたげな無言の圧力を旭はヒシヒシと感じていた。
道城の言う通りにしない限り終わりが来ないことを悟った旭は、観念してテストを受けることを決めた。
「ハァ……。分かったよ。やるだけやったらすぐ帰るからな」
「おぉ、流石我が孫じゃ。そう言ってくれると思ったぞ。勿論テストをやるだけじゃ。終わったらすぐに帰って構わん。では早速テストを行う部屋まで案内しよう。さぁ、善は急げじゃ」
旭が了承した途端に満面の笑みで話す道城。旭はそれを白い目で見ながら、道城の案内に従い付いて行く。
――案内された部屋の前に着く。目の前には何の変哲もない扉があるだけ。道城が扉を開け、旭も一緒に入る。中は先程の部屋と同様に板張りの造りになっていた。しかし、ただ一つだけ決定的に違う所があった。
「広っ・・・」
そう、旭が思わず呟いてしまったように広さが違うのである。ただ広いのではない・・・。本当に広いのである。更に周囲には壁は無く、何処までも地平線が続いているように見える程の広さだった。
「ホッホッホッ。驚いたか?」
横で道城がニヤリと笑いながら言う。
「家の中にこんな場所が・・・」
「勿論ここは家の中に非ず。あのドアには特殊な術をかけておっての。ワシ以外の者が開けると何の変哲もない只の部屋に出るが、ワシが開けるとご覧の通りじゃ。ここには召喚術を使う際に、その力に耐える為の特殊な結界が張られておる。ちょっとやそっとの力じゃ壊れやせん」
「召喚術って、そんな大掛かりで危険なの?」
「その召喚獣の持つ力によりけりじゃな。強大な力を持つ召喚獣にはそれなりの対処が必要じゃが、今回はお前のテストじゃからな。まぁ、そんなに心配することはないわい」
道城はそう言うと、また何やら呟きながら床に手をかざすと、そこに魔法陣が現れた。半径2m程の円で出来ており、円の中には様々な模様と何やら見慣れぬ文字が描かれていた。
それはまさに絵に書いたようなThe魔法陣だった。
「さぁ、その陣の真ん中に立つのじゃ。そうすれば、後は勝手に魔法陣が反応して全てやってくれる。時間はかからん」
道城の言葉を聞き、不安な気持ちもあったが、早く帰るためにも旭は恐る恐る魔法陣へと足を動かし、中心に立った。
しかし、魔法陣は何の反応も示さなかった。
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