うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人

文字の大きさ
90 / 171

第90話 また会おう

 ゴドール地方領主就任の統括官への報告が済み、主だった腹心達全員が領主となってグラベンの街へ赴く俺に付いて来てくれるという嬉しい確認も出来た。

 実際にグラベンに行くまでは、こちらでの業務引き継ぎや申し送りなどやる事が多いので結構大忙しだった。当然グラベン側でも俺の受け入れ準備が必要なので、その準備が整ったという向こうからの連絡を待っている状況なのだ。

 そして俺が今まで役割を果たしてきた第二部隊長の後任だが、レイモン統括官に推薦した第一部隊副隊長のエドモンさんが正式に俺の後釜の部隊長になるのが決定した。何を隠そうこの人は賊徒の青巾賊がコウトの街に襲来した時に、街の交渉役を装って見事に賊徒達を騙した演技派の人物だ。当時、俺の無茶振りにも近い協力要請に快く応じてくれたように人柄もここぞという時の度胸も申し分ない。たぶん俺よりも良い部隊長になると思う。

 ところで、領主とは言ってもどこかの国に所属するのではないので、俺は貴族になる訳でもなく、どこにも所属しない独立勢力という位置付けになる。国と呼ぶには地域が小さくて限定されるのであえて独立勢力と位置付けている。俺が治める予定のゴドール地方。そしてコウトやサゴイのあるアロイン地方も似たようなものだ。将来どうなるかは俺達の働き次第ってところだな。

 旧キルト王国時代でも王都からは離れた場所だったので、中央からの圧迫も少なく自由にやれる部分が多かったのも、俺みたいな者がいきなり領主になれるという土台や土地柄を生んでるのではないだろうか。

「ほら、今度はこっちの服に着替えて」

「わかったよ、この服でいいのか?」

 色々と小難しい事柄を考えていた俺だが、現実の俺はリタ達に連れられて街の服屋で服を購入中だ。さっきから着せ替え人形のようにあれやこれやと服を着替えさせられている。それというのも一応領主になるのだから、それっぽい服は多めに持っておきなさいという理由からだ。俺も道理に適っていると思います。

「満足いく買い物が出来ましたね。エリオさんは見た目の素材が良いので服の選び甲斐があります」

 シックな感じの服選びはミリアムの得意分野だ。最近思うのだが、リタとミリアムって綺麗で頭も良くて、秘書官としても有能だし俺よりも万能なんじゃないかと思うよ。そして服選びも終わり、今日予定していた最大のノルマをこなしたのでやっと俺は自由の身になれそうだ。自由万歳。


 ◇◇◇


「エリオ君、とうとう出発の日が来たね」

「ええ、短い間でしたが統括官にはお世話になりました。グラベンとコウトは隣同士ですから、何だかんだで会う機会が結構あるでしょう。これが最後の別れになる訳じゃないので今後ともよろしくです」

「確かにそうだ。陸上で繋がる街道も河を利用した航路もあるからね。グラベンに行こうと思えばコウトからはすぐに行ける距離だ。そう言われて見ると、君の赴任地がちょっと遠くなっただけのように感じるから不思議なものだよ」

「エリオ殿、私を第二部隊長に推薦して頂いたと統括官に聞きました。ありがとうございます。エリオ殿の後任として恥ずかしくないように頑張るつもりです。さすがに私にはエリオ殿みたいなカリスマと武力はないけどね」

「エドモンさんに任せるのが一番良いと思っただけですよ。あと、エドモンさんは謙遜してるけど、俺の目から見てもエドモンさんは立派な人物ですし、俺の後を任せるにはこれ以上の人材はないと思っています。お互いに頑張りましょう」

 既に第二部隊長の引き継ぎは終わっていて今はエドモンさんが第二部隊長だ。タインさんの陰に隠れがちだが、この人は統率力もあるし武力もあるんだよね。

「エリオ君。第一部隊長の私からもエドモンを推薦してくれたお礼を言わせてもらうよ。君がゴドールの領主になると聞いて最初は驚いたけど、君にはそれだけの器と能力があると私は思ってるしもっともっと大きく羽ばたいて私を驚かせてくれ」

「タインさん、俺も自分で驚いてますよ。タインさんこそ俺に負けずに羽ばたいてくださいよ。賊徒がコウトに押し寄せて来た時にタインさんは俺の策を支持してくれました。あれがなかったらどうなっていたかわかりませんでしたよ。改めて言いますがとても感謝しています」

「君の策は私も直感が働いて面白いと思ったからね。結果的に青巾賊を相手に大勝利となったのであの時は君の策を支持して大正解だったよ」

 タインさんは結構切れ者だし懐の深さも持っている。やっぱり上に立つ人の資質を備えてるよな。

「エリオ殿、そろそろ時間ですぞ」

 ラモンさんが俺を呼びに来た。もうそんな時間か。そろそろコウトの街を出発する時間が来たようだ。この街は俺がゴドールの領主になるきっかけをくれた街だから感慨深い。住んでいた借家の解約も済ませ、花壇に植えていた草花は根っこごと静かに引き抜いて持ち出してきた。向こうに着いたらすぐに植え替えないとな。

 コウトからグラベンへの道中は船便を利用する予定だ。その船便の出航の時間が迫ってきている。

「それでは皆さんお元気で。また会いましょう」

「「「また会おう」」」

 俺達の挨拶はさよならじゃなくてまた会おうだった。
感想 20

あなたにおすすめの小説

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。