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encounter
#2 終わりを告げる足音
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学校に戻り、忘れ物を無事回収した薺は、急いで再びの帰路についていた。日は傾きつつあり、空には赤みが増してきた。
鈴夏達と別れてから一〇分近く経っており、学校から集合場所の愛子の家までは、普通に歩けば二〇分程掛かる。薺は足を速めた。
しかし、
「あれ?」
『歩道の工事中の為、通行止めです。ご迷惑をお掛けしますが、迂回をお願いします』という立て看板に足を止められた。
「こんな看板、さっきは無かったのに。それに……」
看板の向こうを見ても、工事などをしている様子は無い。
明らかにおかしい。しかし、道行く人達は実際にその看板を見て、不思議がる事も無く進路を変えている。おまけに車道の方にも工事中の看板が有り、自動車も手前で曲がっていく。そちらも工事などしている様子は無いし、先刻三人でこの道を通った時も、学校に引き返している時にも、こんな物は無かった。
嫌な予感がする。この先に進めば何か取り返しのつかない事が───
薺は冷や汗をかきながら、おかしいと思いながらも進路を変えた。
だが、嫌な予感はそれで治まらなかった。
「どういう事?これ…」
一つ隣の路地を曲がろうとすると、そこにも『工事中』さらに隣にも『工事中』。結局元いた場所から一〇〇メートル程歩いて、ようやく家の方向に曲がる事が出来た。
こんな事、普通有り得る筈が無い。
曲がった後も幾度も目にする『工事中』、それはまるで、一部の区画を丸ごと封鎖している様だった。勿論、その内部から工事をしているような様子は伺えない。しかし、道行く人達は何も気にする様子も無く、その区画を避けて歩いている。また、封鎖されている街の向こう側に、人が居る様子も全く見られない。
やはり、おかしい。見た目は普通の街並みなのに、何か重苦しい空気が押し寄せて来ている様な、そんな感じがする。そう思いながら、閉ざされた空間を見つめていた薺の瞳は、ふと何かが動くのを捉えた。
「あ…! さっきの人…!」
随分遠くで小さくしか見えないが、先程すれ違った白い少年だ。
薺は両の眼を擦り、再び少年を見つめる。何やら少年は、建物と建物を人並み外れた速度で跳躍し、あちこち移動している様に見える。
あれ、軽く一〇メートル以上跳んでない?と、自身の眼を疑う薺だが、やはり見間違いではないようだ。更に、少年の周りには何か黒い影の様な物が無数に飛び交っている様にも見えるが、そちらの正体は捉えきれない。
この先には、絶対に進んではならない
そう直感した薺だが、逡巡し、遠くの少年をキッと見つめ、看板の向こうに一歩を強く踏み出した。
あの少年が、どうしても気になる。そして何より──
「こんなに遠回りしてたら、愛子の家に着く前に夜になっちゃうじゃない!」
この封鎖、遠回りにあの少年が関与しているのなら、一言文句を言わないと気が済まない、と。薺はやや苛立った様子で迷わず進んでいった。
鈴夏達と別れてから一〇分近く経っており、学校から集合場所の愛子の家までは、普通に歩けば二〇分程掛かる。薺は足を速めた。
しかし、
「あれ?」
『歩道の工事中の為、通行止めです。ご迷惑をお掛けしますが、迂回をお願いします』という立て看板に足を止められた。
「こんな看板、さっきは無かったのに。それに……」
看板の向こうを見ても、工事などをしている様子は無い。
明らかにおかしい。しかし、道行く人達は実際にその看板を見て、不思議がる事も無く進路を変えている。おまけに車道の方にも工事中の看板が有り、自動車も手前で曲がっていく。そちらも工事などしている様子は無いし、先刻三人でこの道を通った時も、学校に引き返している時にも、こんな物は無かった。
嫌な予感がする。この先に進めば何か取り返しのつかない事が───
薺は冷や汗をかきながら、おかしいと思いながらも進路を変えた。
だが、嫌な予感はそれで治まらなかった。
「どういう事?これ…」
一つ隣の路地を曲がろうとすると、そこにも『工事中』さらに隣にも『工事中』。結局元いた場所から一〇〇メートル程歩いて、ようやく家の方向に曲がる事が出来た。
こんな事、普通有り得る筈が無い。
曲がった後も幾度も目にする『工事中』、それはまるで、一部の区画を丸ごと封鎖している様だった。勿論、その内部から工事をしているような様子は伺えない。しかし、道行く人達は何も気にする様子も無く、その区画を避けて歩いている。また、封鎖されている街の向こう側に、人が居る様子も全く見られない。
やはり、おかしい。見た目は普通の街並みなのに、何か重苦しい空気が押し寄せて来ている様な、そんな感じがする。そう思いながら、閉ざされた空間を見つめていた薺の瞳は、ふと何かが動くのを捉えた。
「あ…! さっきの人…!」
随分遠くで小さくしか見えないが、先程すれ違った白い少年だ。
薺は両の眼を擦り、再び少年を見つめる。何やら少年は、建物と建物を人並み外れた速度で跳躍し、あちこち移動している様に見える。
あれ、軽く一〇メートル以上跳んでない?と、自身の眼を疑う薺だが、やはり見間違いではないようだ。更に、少年の周りには何か黒い影の様な物が無数に飛び交っている様にも見えるが、そちらの正体は捉えきれない。
この先には、絶対に進んではならない
そう直感した薺だが、逡巡し、遠くの少年をキッと見つめ、看板の向こうに一歩を強く踏み出した。
あの少年が、どうしても気になる。そして何より──
「こんなに遠回りしてたら、愛子の家に着く前に夜になっちゃうじゃない!」
この封鎖、遠回りにあの少年が関与しているのなら、一言文句を言わないと気が済まない、と。薺はやや苛立った様子で迷わず進んでいった。
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