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2/9開催!〈文学フリマ広島7〉試し読み
第7作品「僕がここにいる理由」
しおりを挟む❁あらすじ
孤児院暮らしだった浩太は佐久間家に引き取られた。自分の思いを押し殺して過ごす毎日、精神も疲れていたがそんな時我が儘を口にした「お父さんと遊園地に行ってみたい」しかしそれは叶わず、金ちゃんと行くことになった。でも金ちゃんはずっと優しい。こんなに優しくされて浩太は少し戸惑っていた。そこで金ちゃんととあるゲームをすることになった。
家族の共通点は血が繋がっていない、そんなちょっと切ない話し。
❁登場人物
・佐久間浩太(さくまこうた)
・佐久間お父さん
・金太郎、通称金(きん)ちゃん
・美由紀(みゆき)
・コタ(犬)
・誠(ともだち)
❁試し読み 10ページ
僕の世界はとても冷たく氷みたいなところだ。
僕が全部悪い……。多分……。
よく分からない。でも一歩踏み出せば氷はバキバキと割れ僕は冷たい海に溺れてしまう。
だから僕は笑顔でいないといけないんだ。
九歳で佐久間さん宅に引き取られた。
女の人も男の人も優しく僕に接してくれた。きっともう大丈夫だ。
そう思いたかったのに一年後女の人は癌で亡くなってしまった。お父さんと僕はアパートで暮らしている。
きっと僕は孤児院に戻されるだろう。
そう思っていた。
お父さんは僕を悲しませないように夜も抱きついて寝てくれたけど僕よりもお父さんのほうが涙を流していた。
それはきっとお母さんがいなくなってしまったからだろうと思う。
僕がここにいてもいいのかな。そんな時金ちゃんが家にきた。
男の人でお父さんよりも背が高く声も大きい。そしてお父さんを元気にさせた人だ。
僕はきっともういらなくなってしまう。
また、ひとりぼっちになってしまう。
朝起きると居間にいたのは金ちゃんとお父さんだった。
「おはよう、浩太よく眠れたかな?」
「あ、はい……おはようございます」
「おー浩太挨拶できて偉いな」
この人に僕が孤児院から来ていることはきっと知られているだろう。それでもまだここにいられるのは僕は少し嬉しかった。
「で、金ちゃん今日仕事は何時から?」
「あーってやべぇーもう時間だ」
そう慌ただしくなる。
「浩太も早く食べて学校に行く準備しなさい」
「はい」
お父さんは初めからとても優しい。
だから心のどこかで大丈夫って思っているのかもしれない。
でもいつ捨てられてもいいようにしていないと……。
学校へは徒歩十五分くらいで平坦な道を歩く。
孤児院が近いせいか知り合いもいて状況を聞かれることもある。僕は素直に答えると「いいなぁ~」と返ってきた。僕たちに親はいない。
暴力を振るわれたり怖い思いをしたりしている子はとても多い。
だからこうして里親の存在は大きかった。
「俺も早く誰かに引き取られたいな、そんでそんで」と話している中で遊園地の話が出た。
「遊園地?」
「なんだ、浩太知らないのか?」
「うん」
「俺も絵本でしか読んだことないけどジェットコースターだったり大きな観覧車だったり面白いのが勢揃いしている場所なんだよ!」とはしゃいでいたので僕も遊園地が気になった。
「で、俺引き取られたら遊園地行きたい!! って言うつもりでいるんだ」
「そうなんだ、僕言えるかな」
「でも浩太はもう二年くらい経つだろ? 言ってみたらどうだ?」
「うん、そうだね、頑張ってみる」
その夜
金ちゃんはいなかった。
お父さんがキッチンに立っていたからお願いをしてみることにした。
「あのぉ……」
「ん? どうしたの?」
「えっと……ゆっ」
「ゆ?」
どうしてももじもじしてしまう。どこかに行きたいなんて言ったことがないもしダメって言われたらどうしよう。言葉を飲み込む。
でもここで勇気を出さなかったらいつ出すんだ。
「遊園地……はぁ……はぁ行きたいです」
言えた…だけど怖い……。
「遊園地か!! いいかもしれないね、金ちゃんと話してみるよ」
「あ、えっと……」できればお父さんとだけで行きたい、ダメかな。
「あの、お父さんと二人で行きたいです」
「ああ、そっか、分かったじゃぁ来週の土曜日に行こうね」
「あ、ありがとうございます」
僕はその日気分がよく、眠るのに少し手こずってしまった。
ふと夜中に目が覚めると声が聞こえた。
「うん、そう本当は金ちゃんも行けるといいんだけど、僕が指名されちゃったから土曜日は浩太と行ってくるね」
「おう、了解俺は休みだから家でゴロゴロしてるわ」
「うん、で、今日も抱いてくれる?」
「ああ、いいぜ、お前は俺のだからな」
襖から見える居間は明るく、二人は顔を合わせていた。二人の姿はどこかおかしいし、たまに変な音も聞こえた。肌がぶつかって痛い音が聞こえた。
その度に僕は耳を手で覆っていた。
金曜日の夜になった。
明日お父さんと遊園地に行く、少し気分が上がっていた。
着替えとリュックを用意して僕は布団に入った。
明日が楽しみだ。
土曜日の朝、それは急に決まったことのようにお父さんは忙しそうにしていた。
「あ、浩太起きた。ごめんね、お父さん急に仕事呼び出し決まっちゃって悪いんだけど金ちゃんと一緒に行ってくれる?」
分かってたことだ、大丈夫。早く答えないと。
「はい、大丈夫です」
そう言うと金ちゃんもお父さんも驚いた顔をしていたが僕はその驚き顔すら見られないでいた。二人の顔を見たくなかったからだ。
「金ちゃん今日はよろしくお願いします」にこにこした顔で彼を見るがまだ変な顔をしていた。
「お前……」と言われても分からなかった。
「じゃぁ、ごめん金ちゃん後よろしく」
「おう、んじゃぁ遊園地行くか」
「はい」
家を出て近場の駐車所に向かった。
「これに乗るぞ!!」
「うわぁーかっこいい、これ金ちゃんの車?」
「おう、ポルシェだ、かっこいいだろ」
「うん、めちゃくちゃかっこいい」思わず興奮してしまう。
「お前、意外とこういうの好きなのか?」
「え? あっはい」
ごくりと唾を飲み込んだ。
はしゃいだからなのかな。
「ああ、違うぞ、えっとまぁ男の子だしな、今度俺のショールーム見に来るか? 車がいっぱいあるぞ」
「うん、行ってみたい!!」
「ふん、お前そっちのほうがいいぞ、子どもっぽくて」
「?」疑問がわいた。だって僕は子どもだ。
車は轟音と共に走り出し遊園地に向かった。
窓口でチケットを購入するようで急いで貯めたお金を出そうとするも
「浩太、ここは大人の俺が買ってやるぞ」そう言われチケットが渡された。
「よし! 浩太全制覇目指して頑張るぞ!!」
金ちゃんはなにを言ってるのか分からず思わず見上げてしまうと
「あ、なんだ、もしかして遊園地初めてか?」
「はい」
「よし、あれだな、まずは身長制限とかないとこ行こうな」
「はい」
金ちゃんに連れられ僕は園内を歩く、たくさんの人がいて賑わっていた。
それに僕と似た身長の子は手を繋いでいた。思わず金ちゃんの手を見てしまった。
でも僕なんかがそれをしてもいいのか。
この手はお父さんのためにあるものではないのかと思ってしまった。
夜中に見たお父さんと金ちゃんが手を絡めていた姿を僕は見ていたから。
「浩太、浩太!」
「はっ」どこか遠くに僕はいたのか呼ばれる声に気がつかなかった。
「大丈夫か?」
「はい」
「浩太、あのジェットコースターは身長制限大丈夫みたいだからあれに乗らないか?」
「はい」
列に並び、僕は目の前の人達を見る、やっぱり手を繋いでいた。
また金ちゃんの手を見てしまった。
「なんだ、手繋ぐか? それとも抱っこするか?」
そう言われたが僕は首をぶんぶん振ってしまった。
それはお父さんのだから僕がとってはいけない。
それにお母さんが死んでお父さんを元気づけたのは金ちゃんだ。
僕じゃない。僕はお父さんを悲しい思いのままにしてしまった。役ただずだ。
「お、もうすぐ乗れるぞ」
電車のようなものに人がいっぱい乗っていてレールを走っているようだ。
轟音と地響き……この前習った……。が僕の心臓も揺らしていた。
「浩太、乗るぞ、一人で乗れそうか?」
「あ、はい」
❁他
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