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13話目
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しおりを挟む夏が終わった。
例年ならば凪音の手伝いを終えた寂しさの上に新学期の憂鬱さが乗っかるのだけれど、今年は違った。
夏休みの終わりが待ち遠しかった。
学校に行けばクラスは違うけれど大翔に会える。瀬凪の頭の中はそればかりだった。
夏休みの内に叔父夫婦に連絡先を聞いてメッセージでも電話でもしようかと考えはしたが、大翔がそうだったように瀬凪も直接顔を合わせて話がしたいと思っていたので大人しく休みが終わるのを待った。
「おはよー、瀬凪」
「おはよ、咲都……かなり焼けたな」
夏休み中に一度凪音で会った時と何ら変わらぬ笑顔で朝の挨拶をくれた咲都だったが、こんがりと日焼けした肌があまりに印象的でスルー出来ずに挨拶を返しがてら指摘すると彼は自分の腕を眺めながら「ああ」と頷いた。
「三日前に尊に誘われて海行ったんだよ。日焼け止め塗り忘れて行ったらこれ。その内元に戻る」
「へえ。夏休みめちゃくちゃ充実してたんだな」
「いやいや、遊びに行ったのなんて瀬凪のとこに顔出した時とじいちゃん家に行った時と最後に尊と海行ったくらいだよ。あとは休み明けのテスト対策のために勉強勉強勉強」
「あー……はは、俺も店の手伝い終わってから急いで課題したもん。勉強し出すと遊ぶ気失くすよな」
「それな。あ、てかさ、瀬凪体調大丈夫なん? 帆谷から聞いたよ、熱中症なったんだって?」
「え、ひろ、と、に会ったん?」
咲都から尊の話は良く聞いていたが、大翔の話を聞くのは珍しい。しかも新学期が始まる憂鬱さを大翔に会えるという想いが上回っている現在、突然の彼の話題に瀬凪は焦ってしまい思わず「ひろと」と下の名前で呼んでしまった。
だが、咲都はそんなことを気にして追求してくるような男ではなく、「うん、そうそう」と頷いている。
「尊と海行ったって言ったろ? そん時に帆谷も居たんよ。帆谷が夏休み全然遊びに行ってないっていうから尊が誘ったんだって。で、それなら瀬凪も呼ぼうぜーって尊と盛り上がったんだけど、帆谷に止められてさ。聞いたら熱中症なったからまだ炎天下はきついだろって話になって誘うのやめたんだよ」
そういうことか。納得しながらも、誘ってくれて良かったのに、と思わずにはいられなかった。
咲都からそんな夏休みの出来事を聞かされて、どんどんと大翔に会いたくなってくる。
けれどそういう思考に捉われている時ほど思い通りにはならない。
朝の内に会えるだろうと思っていたのに、廊下ですれ違うこともなく、咲都と一緒に居れば尊が近付いて来る(イコール大翔が居る)と考えていても尊一人で咲都に会いに来たりで全く大翔を見ない。
漸く姿を確認したのは体育館で行われる始業式の時で、まぁ当然別クラスであるし、向こうは女子に囲まれていて近付くどころか視線すら合わなかった。
初日から二人きりになるのは険しい道だと思い知らされると共に、あのバイト期間が天国であったということを改めて実感した。
それでも何とか接触せねば。
このままタイミングが訪れないようなら自分から大翔の居る三組に行ってみようと決意をした。
しかし、唐突にチャンスは訪れた。始業式後、教室に戻り清掃をしていると本日二度目の尊の咲都訪問があり、「さく~」と尊の声を耳にしただけで瀬凪は「今日も幼馴染は仲が良いなぁ」とどうでも良いことを考えて教室の外に目をやった。
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