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第一章
第1話 転生したらドラゴンだった!?
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普通のサラリーマン、田中太郎は、毎日サラリーマンとしての戦いに疲れ果てていた。三流大学出の彼にとって大企業入社など夢のまた夢。何とか入社できた会社はとんでもなブラック企業。始発に乗って出社し終電で帰る。昨日と同じ日常が繰り返される毎日。
彼はいつものようにギリギリで乗り込んだ終電に揺られながら、ふと「こんな生活から抜け出したい」と願った。その願いが天に届いたのか、不意に地面がふわっと揺れる、激しい衝撃音、骨と内臓がバラバラになるほどの力を身体中に感じながら彼は意識を失った。
目が覚めると、太郎は見知らぬ森の中にいた。
先ほどとは違い周囲には見慣れぬ木々や草花が茂っている。
「ここはどこだ?俺、電車の中にいたはずなのに?」
周囲を見渡すが、電車も線路も、普段見慣れた景色の全てがそこには存在しない。
意識を失った後に一体何が起こったのだろう。
しかし、何かがおかしい。彼の身体が…赤い鱗に覆われ、背中には翼がある?手には鋭い鉤爪。そう、彼はドラゴンに転生してしまったのだ!
「これは……異世界転生というやつか。」
太郎は長い首をぐるぐる回し身体中を見渡した。ドラゴンは山のような大きな躯体だと想像していたが、太郎の体躯は人間の大人よりも若干大きいくらいであり、全体のフォルムも少しふっくらとしている。
「もしかして、このドラゴンって子供?なのかな?」
太郎は、そう推測してみた。
少しだけガッカリした。ドラゴンといえばRPGでも人気のキャラで世界最強の種族、頑強で、何よりカッコいい!
「それが、これじゃあ…」
太郎はぷっくりとしたお腹の脂肪を摘んでみた。
皮膚はかなりの強度を誇っているのであろうが、触ってみた感じ少し弾力と柔らかさを感じる。プニプニと気持ちいいが…まだ子どもだからだろう。とはいえ今後成長すれば理想の身体になるのだろうと思い直した。
「まぁ、あのままブラック企業に勤めて過労死するよりマシかな。」
彼は、これから始まる新たな冒険と、その世界で待ち受ける運命に胸を膨らませるのだった。
異世界転生をした太郎だったが、最初こそ「面白いことになった!」と喜んでいたものの、徐々に不安に駆られてきていた。
「異世界に来てみたはいいけど……俺、ドラゴンだから言葉話せないし」
ドラゴンに生まれ変わった太郎は、頑張って発声してみたが「ウォー」か「ガォー」という、うめき声しか出せない。
ドラゴンはその知能も非常に高いと聞いている。人語も理解し話すこともできたはずだ。その証拠にこうして思考も出来ている。もちろん太郎の知識はゲームやアニメのものであり、現実に正しいかどうかはわからないのだが…
「そもそもこの世界の言葉も知らないしなぁ。」
さらに言えば、この世界に人間がいるのかも分からないし、まだ出会ってもいない。
太郎はこの世界に独りっきりの存在なのかも知れないと孤独を感じた。
「せっかく異世界に転生したのに…これじゃあ、つまらないじゃないか!」
太郎は落胆しいい知れぬ恐怖に咆哮をあげた。
その瞬間、開かれた大きな口から空に向けて灼熱の赤い炎が吐き出され周囲の空間を激しく焼く。その高温の熱波は空気層を歪め、辺りの景色がユラユラと揺らぐ。
思わず太郎は両手で口を塞いだ。慌てて周囲を見渡す。
「やっべぇ~。危うく燃やしてしまうところだった。」
空に向かって吠えて良かった。そうじゃ無かったら、目の前の森を焼き尽くしてしまっただろう。
太郎の目の前には豊かな草花や木が生い茂る豊かな森が広がっていた。
方や彼の進んできた道はただの焼け野原が広がっており禿山と化していた。
太郎は転生してからドラゴンの身体を使って空を飛んだり炎を吐いたり、その腕力を試したりと、思いつくまま色々と試してみた。
どんな大木も太郎が鋭い鉤爪で軽く撫でるだけで簡単に薙ぎ倒され、岩は粉々に砕かれる。太郎はその力に酔ってしまった。進む道にあるもの全てに破壊衝動を向けた。太郎の進む先に道はなく、道は彼が進んだ後に出来たのだった。
ある時、調子に乗って吹き出した炎が延焼を起こしてしまう。
子供の様に口から火を放ち、「火炎放射~!!」とグルグル回りながら火を吐き続けてみたのだ。最初は「何やってんだ」とも思ったが、やっているうちに楽しくなってしまい。その結果…彼の想定以上の勢いの炎が木々を燃やした。
火は三日三晩燃え続け、山一つ分の森林を燃やし尽くしようやく鎮火したのだが、後には何も残らず豊かな森は見る影もなくなった…流石に太郎は反省した。
運が良かったのは、辺りに生命の存在を感じなかったことだ。不思議に感じるがこの森に生命体は存在しないことは間違いないと思えた。太郎のいた世界でいえば、森にはウサギや狐、猪や熊などもいるモノだが、この森にそんな存在を感じない。
元から存在しないのか?それともこの場所には存在しないのか?そんな疑問を感じていたが、太郎の炎の延焼を逃れた森に近づくにつれ生命の存在を感じるようになった。
「そこのドラゴンよ!」
その言葉に、太郎は我に返る。
振り返るとそこには、一人の女性が立っていた。
彼はいつものようにギリギリで乗り込んだ終電に揺られながら、ふと「こんな生活から抜け出したい」と願った。その願いが天に届いたのか、不意に地面がふわっと揺れる、激しい衝撃音、骨と内臓がバラバラになるほどの力を身体中に感じながら彼は意識を失った。
目が覚めると、太郎は見知らぬ森の中にいた。
先ほどとは違い周囲には見慣れぬ木々や草花が茂っている。
「ここはどこだ?俺、電車の中にいたはずなのに?」
周囲を見渡すが、電車も線路も、普段見慣れた景色の全てがそこには存在しない。
意識を失った後に一体何が起こったのだろう。
しかし、何かがおかしい。彼の身体が…赤い鱗に覆われ、背中には翼がある?手には鋭い鉤爪。そう、彼はドラゴンに転生してしまったのだ!
「これは……異世界転生というやつか。」
太郎は長い首をぐるぐる回し身体中を見渡した。ドラゴンは山のような大きな躯体だと想像していたが、太郎の体躯は人間の大人よりも若干大きいくらいであり、全体のフォルムも少しふっくらとしている。
「もしかして、このドラゴンって子供?なのかな?」
太郎は、そう推測してみた。
少しだけガッカリした。ドラゴンといえばRPGでも人気のキャラで世界最強の種族、頑強で、何よりカッコいい!
「それが、これじゃあ…」
太郎はぷっくりとしたお腹の脂肪を摘んでみた。
皮膚はかなりの強度を誇っているのであろうが、触ってみた感じ少し弾力と柔らかさを感じる。プニプニと気持ちいいが…まだ子どもだからだろう。とはいえ今後成長すれば理想の身体になるのだろうと思い直した。
「まぁ、あのままブラック企業に勤めて過労死するよりマシかな。」
彼は、これから始まる新たな冒険と、その世界で待ち受ける運命に胸を膨らませるのだった。
異世界転生をした太郎だったが、最初こそ「面白いことになった!」と喜んでいたものの、徐々に不安に駆られてきていた。
「異世界に来てみたはいいけど……俺、ドラゴンだから言葉話せないし」
ドラゴンに生まれ変わった太郎は、頑張って発声してみたが「ウォー」か「ガォー」という、うめき声しか出せない。
ドラゴンはその知能も非常に高いと聞いている。人語も理解し話すこともできたはずだ。その証拠にこうして思考も出来ている。もちろん太郎の知識はゲームやアニメのものであり、現実に正しいかどうかはわからないのだが…
「そもそもこの世界の言葉も知らないしなぁ。」
さらに言えば、この世界に人間がいるのかも分からないし、まだ出会ってもいない。
太郎はこの世界に独りっきりの存在なのかも知れないと孤独を感じた。
「せっかく異世界に転生したのに…これじゃあ、つまらないじゃないか!」
太郎は落胆しいい知れぬ恐怖に咆哮をあげた。
その瞬間、開かれた大きな口から空に向けて灼熱の赤い炎が吐き出され周囲の空間を激しく焼く。その高温の熱波は空気層を歪め、辺りの景色がユラユラと揺らぐ。
思わず太郎は両手で口を塞いだ。慌てて周囲を見渡す。
「やっべぇ~。危うく燃やしてしまうところだった。」
空に向かって吠えて良かった。そうじゃ無かったら、目の前の森を焼き尽くしてしまっただろう。
太郎の目の前には豊かな草花や木が生い茂る豊かな森が広がっていた。
方や彼の進んできた道はただの焼け野原が広がっており禿山と化していた。
太郎は転生してからドラゴンの身体を使って空を飛んだり炎を吐いたり、その腕力を試したりと、思いつくまま色々と試してみた。
どんな大木も太郎が鋭い鉤爪で軽く撫でるだけで簡単に薙ぎ倒され、岩は粉々に砕かれる。太郎はその力に酔ってしまった。進む道にあるもの全てに破壊衝動を向けた。太郎の進む先に道はなく、道は彼が進んだ後に出来たのだった。
ある時、調子に乗って吹き出した炎が延焼を起こしてしまう。
子供の様に口から火を放ち、「火炎放射~!!」とグルグル回りながら火を吐き続けてみたのだ。最初は「何やってんだ」とも思ったが、やっているうちに楽しくなってしまい。その結果…彼の想定以上の勢いの炎が木々を燃やした。
火は三日三晩燃え続け、山一つ分の森林を燃やし尽くしようやく鎮火したのだが、後には何も残らず豊かな森は見る影もなくなった…流石に太郎は反省した。
運が良かったのは、辺りに生命の存在を感じなかったことだ。不思議に感じるがこの森に生命体は存在しないことは間違いないと思えた。太郎のいた世界でいえば、森にはウサギや狐、猪や熊などもいるモノだが、この森にそんな存在を感じない。
元から存在しないのか?それともこの場所には存在しないのか?そんな疑問を感じていたが、太郎の炎の延焼を逃れた森に近づくにつれ生命の存在を感じるようになった。
「そこのドラゴンよ!」
その言葉に、太郎は我に返る。
振り返るとそこには、一人の女性が立っていた。
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