異世界でナース始めました。

るん。

文字の大きさ
5 / 66
第一章

5.出会い

しおりを挟む




国王様の後押しもあり、経鼻胃管栄養法を王女様に施せることになった。



私とマーシュ先生、ダヴィッドさんを含む王宮内の医師と家臣たちで、経鼻経管栄養法チームが立ち上げられた。

私はチームメンバーに必要物品と手技、リスク等を説明していく。

経鼻経管栄養法に必要な物品は経管チューブ(長さ80センチほど)、チューブ挿入時にチューブが入れやすいようにアシストする細い針金、チューブに接続可能な栄養剤を入れるためのパックとチューブ内を洗浄するための白湯を流すシリンジ、鼻から出たチューブを固定するテープ、王女様に注入する栄養剤だ。

栄養剤は今まで用意されていたスープをチューブが詰まらないようにサラサラに改良して貰えればいい。

チューブ、補助針金、シリンジ、パックは、私のメモを元にダヴィッドさんか街の職人さんたちに相談してみるそうだ。

テープは王宮内の医務室に使えそうなものがあったのでそちらを使用することにした。


また、手技やリスクは簡単に説明を行い、試作品が出来たらまた細かく説明していくことにする。


「……巫女様は本当に色々知ってらっしゃるお方ですね」

「前の世界での仕事に必要な知識なので、同じ職種の人間なら皆知っていることですよ。
あと、ダヴィッドさん。
私は魔法も使えないですし巫女ではありません。
スミレとお呼び下さい」

「例え魔法が使えなくても、王女様の為に色々な知識を提供してくださっている時点で私からしたらもう巫女様です。
しかしそう仰るならスミレ様とお呼びさせて頂きますね」

「はい、是非」

ダヴィッドさんは優しい。
王女様の魔術の先生をしていたと聞いたが、きっと仲が良かったのだろう。

聖女を召喚したり巫女を召喚したり……。
本当に王女様を救いたいのが伝わってくる。

いきなり召喚されたのには驚いたが、前の世界に未練のない私にはむしろ良かったのかもしれない。






「では皆さん。もう時間も遅い事ですし今日はこの辺りにしましょうか」

話し合いを十分に重ね、物品の確保の為の段取りは決まった。

後は物品を揃え、健康な大人の体を借りて何度か試してから王女様に行うだけだが、私が来てから3日しか経過していないのに王女様が日に日に衰弱していくのが目に見えて分かる。

マーシュ先生のいうように、治癒魔法では体力や枯渇した栄養素を補うことは出来ないことが明らかであった。

早く栄養を身体に入れてあげたい。










……少し疲れたな。

ただ看護師として保有している知識を説明しているだけだが、王女様だからという訳ではなく人の命を背負っているので行き違いや勘違いがないように、何度も慎重に説明をした。

マーシュ先生や宮廷医師も根拠を認めてくれているし、大丈夫だとは思うけどやはり不安はある。

自分のせいで王女様に何かあったら……と。

 

いやいや。
ここまで話が進んだらもう戻れないし、自分が言い出したことなんだ。きちんと責任を持たないと。




色々考えていると、王宮内の見知らぬ場所に出てしまった。

見知らぬ場所と言っても王宮内の廊下なのだが、魔法でライトアップしてある庭園が隣接しており、何だかとても幻想的で美しい。

部屋と王女様の寝室、お風呂の往復しかしていないからこんな場所があるなんて知らなかった。


少しリフレッシュの為に散歩をしてみることにした。






──夜の庭園は魔法によって淡い水色の光でライトアップされており、昼間とは全く違う顔を見せている。

花の名前は分からないが、元の世界のどこかで見たことある多種多様な花が植えてある。


「綺麗……」


思わず独り言が出た。
こんなに花に囲まれたことが、大人になってからあっただろうか。

今も疲れているが、違った疲れだ。
何を見ても綺麗とは思えず、無だった。
日本にいる時は本当に疲れていたと思う。




美しい庭園の花に魅せられ、暫く歩いていると、白いベンチを見つけた。

少し歩いたし座ろうか……と思った時、
足元に紫色のすみれの花を見つけた。

思わずしゃがみこんで花を見つめてしまう。




「紫のすみれの花言葉は誠実……」


顔も知らない親はなんて名前をつけてくれたんだろうか。

誠実。真面目に、誠実に患者さんと向き合ってきた私にとって呪いでしかない言葉だ。

嫌で向き合って来た訳ではなく、患者さんのためにと思い頑張ってきた。

モンスター新人も患者さんに何かあってはいけないと思い一生懸命指導をしたが響かなかった。

響かない指導、患者さんへの気持ちを同期に吐き出してみれば、『真面目すぎるんだよ』の一言で済まされてしまった。


誠実、真面目。
一件、聞こえのいい言葉のように聞こえるが私には皮肉にしか聞こえなかった。



「私は真面目すぎるからいけないんですよーだ……」



「──真面目なのは悪いことなのか?」





独り言に被せるように、
後ろから誰かに声をかけられた。

突然の出来事に頭が真っ白になる。

独り言を聞かれた?
というかこんな時間に誰?
不審者?いやでも王宮内だしな……


など、色々な考えが頭の中をグルグルと回っていたが、とりあえず誰か確認しようと思い、

後ろを振り返るとそこには、







とてもとても美しい青年が立っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど

睦月はむ
恋愛
 剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。  そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。  予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。  リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。 基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。 気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。 連載中のサイトは下記4か所です ・note(メンバー限定先読み他) ・アルファポリス ・カクヨム ・小説家になろう ※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。  https://note.com/mutsukihamu ※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...