人形の涙

れい

文字の大きさ
上 下
1 / 1

人形の涙

しおりを挟む
 ある小さなおもちゃやさんに、きいろくながい髪をしたお人形がならべてありました。
お日様みたいなきいろい髪と青い目はまるでお姫様のようでした。
白いドレスをきて、だれかがかってくれるのを待っています。
 そんなとき、小さな女の子がお母さんにつれられ、おもちゃをかいにきました。
 そして、お人形をみつけました。
「ママ、このお人形ほしい。」
女の子はお人形をきにいりました。
「わかったわ。それにしましょう。」
お人形はうれしくてたまりませんでした。
 女の子はお人形を大切にしました。
毎日髪をとかしたり、お人形とあそびました。
 そんなある日、女の子のいえにあたらしいおもちゃがきました。
その日から、女の子はお人形であそばなくなりました。
 やがて、よごれてきたお人形をみて、女の子はいえのちかくのこうえんにお人形をすててしまいました。
 かなしくて、なみだをながしました。
だれもよごれたお人形をみることはありませんでした。
 あるひ、男の子がお人形をみつけました。
おとこのこはよごれたお人形をみて、かわいそうにおもいました。
おとこのこはお人形をつれてかえりました。
 男の子はお人形をあらって、もとのきれいなお人形にもどしました。
 男の子の部屋にはたくさんのおもちゃがありました。けれど、男の子はお人形であそびました。
 いつしかお人形は男の子に恋をしました。
そして、人間になりたいとおもうようになりました。
 そんなある夜、きせきはおこりました。
 まぶしいひかりがお人形の体をつつんだかとおもうとお人形のからだは人間になりました。
 朝になり、男の子がめをさますと、かわいい女の子がとなりでねむっていました。
男の子はあのお人形だとすぐわかりました。
人間になったお人形はめをさましました。
「おはよう。きみはあの人形だよね?」
お人形はこたえました。
「ええ、そうよ。ずっと人間になりたかったわ。ゆめみたいよ。」
うれしそうなお人形をみて、男の子もよろこびました。
お人形は男の子にローズという名前をつけられました。
 それからのローズのせいかつは毎日しあわせでした。
男の子とおさんぽにいって、ごはんをたべて、おふろにはいって。
なにもかもがゆめのようでした。
だけどローズはわかっていました。自分がいつかお人形にもどらなくてはいけないことを。
 男の子がねむるよる、その日はやってきました。
ローズはねむっているおとこのこにそっといいました。
「ありがとう。さようなら。」
ローズはなみだをこぼしてお人形にもどりました。
 お人形にもどったローズをみて、男の子はかなしみましたが、それから男の子はローズを今までより大切にしました。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...