厨二病の覇王が、「婚活」を始めたようです。

はむまる

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第六章

人生の主人公

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 覇王の目の前に、花火のときの浴衣姿のシズクが浮かんだ。すこしはにかんで、微笑んでいる。あの「希望」の象徴のような笑顔には、もう手が届かない。自分は、それに値する人間ではなかった。ただこのまま、敵になぶり殺しにされるだけだ。

 覇王はうつむいたまま、顔をあげることができなかった。どす黒い絶望が、心の中にジワジワと広がっていった。
手のひらに、ポツリとひとつ、雫が落ちた。

 「……かはっ……。う……うう……」

 「ああん? どうしたんや?」

 覇王はいまや、嗚咽していた。声にならなかった。自分が情けなくて、無力感でいっぱいだった。顔をくしゃくしゃにして、泣いていた。

 「……僕は……いつだって、主人公にはなれなかった……。」

 「オイオイ、どうしたんやおい! コイツ一人称が、突然『僕』になりよったで!」

 邪気眼の小杉が、おかしくてたまらないという風に、嘲笑した。

 「僕は……学校でも、社会でも主役になれず……せめてゲームの中だけでもと思って、課金もたくさんして、ゲームのプレイ時間も大量に費やして……。」

 覇王は今や、完全に「雁野栄作」の時の顔に戻っていた。廃課金で固めた奥底にある、弱い自分を隠すことができない。隠していた本音が、涙と一緒にポロポロこぼれた。

 「そうやって、今度こそは……大切な人がピンチに陥った時に、黙ってみ、見ているだけの男じゃなくて……しゅ、しゅ……。」

 言葉にならなかった。なんとか、声を絞り出した。

 「主人公に……なりたくて……。」

 「――あなたの人生の、主人公はあなたですよ。」

 不意に背後で、声がした。振り向くと、涙でにじんだ視界の中に、月明かりを背負ってぼんやりと人の輪郭が見えた。
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