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7話
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サクラコはオートマチックに所定の動作を実行した。
まず、自分のカバンを取りに教室へ戻った。
すると、既に登校していた智美が話しかけてきた。
「大丈夫、サクラコ? 顔青いよ」
心配そうな表情でサクラコを見つめる智美。
「ええ、ちょっと体調が優れないわ。今から保健室へ行ってくる。もしかしたら早退するかもしれないから、ホームルームのとき、担任の先生に伝えておいてくれないかしら?」
「うん、わかった。あ……、サクラコ! 無理しちゃ駄目だからね」
既に返事も聞かないうちに動き出していたサクラコへ、智美は大きな声を出した。
これでも小学生の頃からの仲である。
サクラコが今何かを抱えていて、そして現段階ではそれを誰にも知られたくないということを、智美は察していた。
教室を後にしたサクラコは、予定通り保健室へ向かった。
検温して熱は無かったが、非常に血色が悪い顔、そして虚ろな目をしているサクラコを見て、保健の先生はすぐさま「今日は家に帰ってゆっくり休みなさい」と結論を下した。
早退の手配は保健の先生がやっておいてくれるそうなので、サクラコは彼女に付き添ってもらい、下駄箱まで向かった。
「それじゃあ、お大事にね」
「はい、ありがとうございます」
保健の先生との挨拶を済ませ、上履きを学校指定の白い運動靴に履き替えると、サクラコは校門を出た。
当然、ここから真っ先に家へ帰る、それが早退者としての義務だとサクラコは感じ取っていたが、しかしサクラコが本能的に向かった先は、あの、昨日訪れたあまり人気のない汚れの目立つ公園だった。
「……」
無言のままサクラコは、昨日腰掛けたベンチ、それも同じ位置に座った。
そしてそのまま暫く、ぼーっとした表情で虚空を眺めた。
少しして、多少頭が回転したサクラコはあまり良くないことをしていると思った。
平日の朝から、地域内でも優秀な学校と知られる学生服を着た女子生徒が、公園をたむろしているところを見られるのは好ましいことではなかった。それどころか、もし学校や警察に通報されでもしたら、「早退する」ということになっているサクラコが、なぜそのような所に居たのかと、色々問題になる可能性もあった。これでも優秀で模範的な生徒として認知されているサクラコは、自分が不良の様な輩だと思われることには強い抵抗感があった。
立ち上がらなければならない。サクラコはそう自分を戒めた。
しかし、自分の足だというのに全く思う通りには動いてくれず、まるで鉄球を括りつけられているかのようにその足取りは最悪の遅さだった。それでも十数分、公園内を行ったり来たりした後、取り敢えずはと自販機でスポーツドリンクを購入して、それを飲んで一息つけたあと、ようやく彼女は家へと向かうのだった。
まず、自分のカバンを取りに教室へ戻った。
すると、既に登校していた智美が話しかけてきた。
「大丈夫、サクラコ? 顔青いよ」
心配そうな表情でサクラコを見つめる智美。
「ええ、ちょっと体調が優れないわ。今から保健室へ行ってくる。もしかしたら早退するかもしれないから、ホームルームのとき、担任の先生に伝えておいてくれないかしら?」
「うん、わかった。あ……、サクラコ! 無理しちゃ駄目だからね」
既に返事も聞かないうちに動き出していたサクラコへ、智美は大きな声を出した。
これでも小学生の頃からの仲である。
サクラコが今何かを抱えていて、そして現段階ではそれを誰にも知られたくないということを、智美は察していた。
教室を後にしたサクラコは、予定通り保健室へ向かった。
検温して熱は無かったが、非常に血色が悪い顔、そして虚ろな目をしているサクラコを見て、保健の先生はすぐさま「今日は家に帰ってゆっくり休みなさい」と結論を下した。
早退の手配は保健の先生がやっておいてくれるそうなので、サクラコは彼女に付き添ってもらい、下駄箱まで向かった。
「それじゃあ、お大事にね」
「はい、ありがとうございます」
保健の先生との挨拶を済ませ、上履きを学校指定の白い運動靴に履き替えると、サクラコは校門を出た。
当然、ここから真っ先に家へ帰る、それが早退者としての義務だとサクラコは感じ取っていたが、しかしサクラコが本能的に向かった先は、あの、昨日訪れたあまり人気のない汚れの目立つ公園だった。
「……」
無言のままサクラコは、昨日腰掛けたベンチ、それも同じ位置に座った。
そしてそのまま暫く、ぼーっとした表情で虚空を眺めた。
少しして、多少頭が回転したサクラコはあまり良くないことをしていると思った。
平日の朝から、地域内でも優秀な学校と知られる学生服を着た女子生徒が、公園をたむろしているところを見られるのは好ましいことではなかった。それどころか、もし学校や警察に通報されでもしたら、「早退する」ということになっているサクラコが、なぜそのような所に居たのかと、色々問題になる可能性もあった。これでも優秀で模範的な生徒として認知されているサクラコは、自分が不良の様な輩だと思われることには強い抵抗感があった。
立ち上がらなければならない。サクラコはそう自分を戒めた。
しかし、自分の足だというのに全く思う通りには動いてくれず、まるで鉄球を括りつけられているかのようにその足取りは最悪の遅さだった。それでも十数分、公園内を行ったり来たりした後、取り敢えずはと自販機でスポーツドリンクを購入して、それを飲んで一息つけたあと、ようやく彼女は家へと向かうのだった。
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