復讐者

YGIN

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復讐者

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泥のように深く眠った後、そういえば、眠る前は、寝てしまえば何か気分が変わるかとも思っていたことを思い出したが、結論を言うと、何も変わりはしなかった。
 あいつへの憎悪と復讐心で、奇天烈に鳴りやまなくなった心臓の鼓動音も、偏頭痛も全部そのままだ。

 わかっている。わかっている。
 あいつを殺さないと俺はこのままでは壊れてしまうんだということは。

 テーブルにあった食パンに、無理やり手ですくった苺ジャムを塗りたくって、バシャバシャと噛み千切った。
 何にも美味しくない。甘ったるくて吐き気さえ催しそうだ。

 それでも、空腹感が少し解消された。それだけでいくらか良かった。
 だけれど、空腹感だろうが金銭欲だろうが性欲だろうが、これから先の人生、何が満たされようと、もう何の意味もない。何の潤いも得られそうにない。そう思う度に、胸が一杯になり、やりきれなくなり、涙が頬を自然と流れ続けた。

「殺すっ……!」

 もうそれだけが、唯一自分にできることだとわかっていた。余生など無価値だった。

復讐なんて何も生み出さないよ、起こった事実は変えられない
悲劇で悲劇を上塗りしても何も生まれないよ
あなたまで人殺しと同じことをしてしまったらあの人が悲しむわ
そんなことは◎★※▲△は望んでいないわ……
まだ人生には楽しいことがたくさん溢れている
やり直せる、君なら大丈夫
相談に乗ってあげるよ

 全部偽善者の戯言だった。
 抑えられるはずがあろうか、いや、ない。

 最愛の者を、あのような惨たらしい殺され方をして、許せるはずがあろうか。
 いや、許せるはずがない。

 全身が、復讐に満ち溢れている。
 もう、どうなっても良いんだ。

 全てだったのに。全てを、いとも簡単に。
 何も悪いことをしていないのに、俺達はただ、真面目にひっそりと生きてきたのに。

 たとえ神や仏がどう考えようと。容認できるはずもない。

 全身が、凶器になった。
 ただ、復讐のためだけの凶器になった。

 身体の痛み、精神の痛み、流れる涙は、ただの知らせだ。

 殺せ、わかった、殺そう。

 あいつを殺すまで俺はもう止まらない。
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