全無生物を魔法化する力で異世界を蹂躙する

とりっぷましーん

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風変りな勇者召喚編

013 ひょうすけのかっこいいとこみてたよ

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 街の外壁の外――堀のようなものが掘られ跳ね橋がかけられているのを、チラと見てから歩へと顔を向ける。

「そういやさ、金の延べ棒出してって頼んだじゃん? けど、ゴールドバーみたいなのを描いたのは、重いの知ってたからなん?」

「ん、そうだよ。金って比重が大きいから凄く重いって見たことあったんだ」

 なるほどなー。確かにスゲー重かった。
 ゲームって金貨とか使ってるような気がしたけど……んーあれは混ぜ物でもされてんのかもな。
 それよりちょっと釘を刺しとかないといけないか。

「あんさ? 俺が頼んだんだけどさ、今後はお金とか金とかはなるべく出さないようにしろよ?」

 その言葉に歩は驚いたような顔をし、

「え? そんなの当たり前じゃん。消えないならまだしも消える物で人を釣ってたら、いつかしっぺ返しくらっちゃうよ」

 と言った言葉に、ああ、分かってんだなと頷いた。

 日本で偽札を作り出す人間はすべからく処罰される。
 それは異世界に来たからといって変わりはしない。
 なんでもやってしまえば、その人間は当然人として地に落ちる。バレなきゃ良いってものではないのだ。


――ウ〇ジマ君のとこに連れてっちまうぞ!


 我ながらキレが今いちだなと思いつつ、闇金の利用は計画的にしないとな……と、内心で心を震え上がらせる。

「ま、分かってんならいいんだよ。宝飾品とか金ってのは人を狂わせるからな」

「そーだね。金塊見た兵士の人、明らかに目の色が変わってた。正直、僕も生であんなの見たことなかったけど、凄いもんだね」

「確かになぁ。塊の金って物の破壊力は予想以上にでかい。……もしかして、さっきの物影の音は……見られてたか……?」

 金塊を放った時、カランカランとわりと大きな音が鳴った。その時は、人がいないと思っていたが、見られていた可能性は否定できない気がする。

「どうだろ? でも、それは気にしても仕方なくない?
 それよりさ、さっき兵輔って何やったの? 空中で石が破裂したように見えたけど」

「ん? その通りだよ。石を魔法化したら直線的に飛ばす魔法だったから、投擲ベクトルを調整してくっ付けた状態で空中で砕いてみたんだ。
 いや、石が砕けず弾く可能性もあったんだけどさ、まぁそれでも大きな音は鳴ってたはず……ってのが作戦だな」

「へぇ凄いねぇ……。いや、浅草寺さんの上段回し蹴りも凄まじいと思ったけど」

 と、歩が言ったところで俺は思い出す。頬をつねってやることにしたんだと!

「あふぁっ? な、なにふんのさ!」

「歩、お前莉緒のパンツ見ただろ! だから俺はつねってやると決めてたんだ!」

「ええ、いや、見てないし……。って、何? 兵輔はパンツ見てたわけ?」

――自爆したっ?

「い、いや、ちがくてさ! 歩が見たんじゃないかなーって……うん、あ! そうだ!」

「何?」

 ジト目の歩が怖い。莉緒にバラされたら俺の肝臓は……

――今度こそ命日を迎える!

「いや、兜がパカって割れただろ? あれ、持ってくればよかったなぁって……な?」

「持ってきても割れてるんだから使えないでしょ。あ、いや、そっか。兵輔なら魔法化出来ちゃうのか……。どんな魔法になるんだろうね」

 よっしゃ、話逸らせた!と内心でガッツポーズをかまし、

「うーん、汗臭い男の兜だろ? 悪臭を周囲にばらまいて攻撃する。とかなんじゃね?」

「いやいや、それ汗しか魔法になってないし。それより、兜がぱっくり割れた時思ったんだけど……」

 やばい!これブーメランのように戻ってくるパターンか?と思いつつ恐る恐る尋ねかける。

「思ったんだけど……?」

「あ、うん。いや、浅草寺さんが空手の中学チャンピオンってのは知ってるけどさ。それでも、兜は割れないでしょ、普通。
 だから、ステータス解放して強くなったんじゃないのかなって思ってね」

 ああ、確かに……ビンタが地球の時より強かったのはそういうことかな。
 でもガラス瓶を手刀で落とせるって言ってたし――って、いや待てよ。
 そういや、あの時の手刀打ち、気持ち悪いくらい速かったっけ……。あれも、そういうことなのかな。
 やっぱ莉緒はあんま怒らせないようにしないとだな……。

 そんな話をしてるうちに莉緒と会長の姿が目に映った。楽しく笑いながら話しているようで、ほんと仲良くなったもんだなと思う。

「兵輔ー、買ってきたわよー」

 手を大きく振りながら歩みを早めるのに心が揺れる。ほんと、女ってのはよく分からん!

「いや、ほんとすまないな。会長さんもありがとうございました」

「いえいえ、良いのですよー。それより、別に敬語じゃなくてもいいですよ。気楽に話しかけてください、もしよかったら怜奈と呼んでいただいても構いませんよ?」


――ほんとに女ってのはよく分からん!


「いや、流石にそれは……。まぁ、ほんとありがとうでした。なんか変わったこととかあったりしました?」

 俺の微妙な砕け言葉に二人は仲良く首を振った。
 さっきの物音は二人を追ったって訳でもなかったという事か。
 とするとやはり……。
 思ってると莉緒が収納庫から、カバンと剣と大き目の袋を取り出して渡してくる。

「変わったことはなかったし、お金も調べてきたよ。えっとね、怜奈、さっき話したので合ってるんだよね?」

「ええ、多分合ってると思いますよー。赤が一万、青が千、水色が百円くらいの価値っぽいですね。
 さらにお釣りとしてガラスみたいなコインも貰いましたが、こちらは十円ってところになりますかー」

 ということは、俺は11万1000円分をくそ兵士に渡してしまったという事。物価はよく分からんけど、俺の小遣いから考えると安くはない。畜生、泥棒め!

「これらはどうやら魔力の結晶のようなものらしいのですよ。モンスターを倒せば得られるとお店の方は言っていました」

 やはりモンスターいるのね……と思いつつ口を開く。

「ゲームのモンスターがお金を持ってるってのがおかしいと思ってましたけど、魔力の結晶がお金になるなら何となく納得できます」

「そうですね。単位はエネラって言うらしいです。あとは――地図はありませんでしたが、街道に沿って行けば良いようです」

 なるほどなぁ……と思いつつ南方面に目を向ける。見てもよく分からんけど。

「あ、そういや、お金。どうすればいい?」

 と、莉緒に向かって尋ねかけると莉緒は俺の目の前までやってきた。

「出してあげようかと思ったけど、やっぱり貸しにしとく。分かった? 貸したからね? 絶対返すんだよ?」

 俺の顔をじっと見つめるその双眸は、真剣さで溢れていて……、さっき考えた闇金の事が脳裏を過り、反射するように俺は大きく頷いた。
 莉緒の追い込みは、別の意味で死ぬほど危険だと思われるからな。

「ああ。勿論だよ。金は返すのが当たり前。いや、借りたものは返すのが人間としての常識だ!」

 チラリと、燃え盛る鉄板の上で、涙を流しながら土下座をしている債務者の姿が頭を過ったが、目の前の光景を見てすぐ消えていった。
 俺の言葉になぜか莉緒が――いや、歩と話していた会長も、肩を竦めて大きく首を横に振ったのだ。なんぞ?

「ちがくてさ……。まぁいいわ」

 と、大きく息をつきながら莉緒は髪留めを外しだす。と、同時にハーフアップにしていた髪が下りてきて、ふわりと良い香りが俺の鼻に届く。
 若干癖のついた黒髪ボブになってしまったけど、それが凄く可愛くて……、ってなんなんだろ?
 まだ返済期限過ぎてないからね……?
 莉緒は髪留めを指でつまんだまま腕を組み、ぶっきらぼうに口を開く。

「円環作って収納庫出してよ」

 頭に『?』を浮かべながら言われた通りにやってみる。
――と、莉緒は俺が両手で作ったエメラルドグリーンの泉の中に、薄黄色で天使の羽のようなモノを象どった髪留めを放り込んだ。
 俺の泉は放り込んでも金の髪留めには変わりませんよ……?

「これも貸しだからね? あっちから持ち込んだ貴重な物なんだから。もし、死んじゃったりしたら取り出せなくなるんだからね? 絶対返してね」

 そう言って離れていった。うん、よく分からんけど返すけどさ……。
 俺、死ぬと思われてんのかな……ちょいショック。

 それに、金を返させるために大切な物を預けるって――あれ、それ逆じゃね?
 死んだら両方なくなっちまうもんな。絶対生きて返しに来いってことかな?
 なんだかよく分からないが、死んでしまえばもう莉緒とは会えない。それだけは避けたいと思い口を開く。

「うん、俺頑張るからさ。莉緒……と、会長も頑張ってください。で、また必ず再会しましょう」

 莉緒に声を掛けた後、会長に顔を向けると会長が口の端を上げた。

「あらあら、なんだか私はついでみたいなのですよー。ま、いいです。兵輔君、歩君をお願いしますね」

「い、いや、そういうわけじゃ……。歩は大丈夫ですよ。俺より余程しっかりしてますから」

「ふふ、そうですか? じゃ、歩君、兵輔君をお願いするのですよー」

 と言いながら歩と話し出したので、俺は莉緒の前まで歩み寄り。髪の毛をくしゃっとしてやった。

「な、何するのよ! 髪留めしてないから乱れちゃうじゃない!」

「はは、いやな。俺頑張るからさ、莉緒も絶対死んだりとかすんなよな? 莉緒が死んだら俺も死ぬからな!――――なんてなっ」

 半分冗談。最後に一発くらい殴られてもいいかなと、思って言ったけれど……意外にも頬を染めていて、瞳を僅かに潤ませていて――

「ばっか! 私は大丈夫に決まってんじゃない! 兵輔はさっきだっ――いえ、まぁいいことにするわ。私兵輔が言ったこと覚えてるからね!」

 俺がさっきだ……っ? 殺気立つ? いや、そんな事実は微塵もないんだけど。それよりも……

「覚えてる……? 覚えとくじゃなくて……?」

「そうよ。あなた、私の旦那になるって言ったのよ? 忘れてるとでも思った?」

「へ……あれは冗……いや、そうだな。言った、確かに言った。ま、とにかく、次再会する時まで頑張ろうぜ?」

 言いながら手を差し出した。莉緒は顔を僅かに赤らめ、掌を服で拭ってから俺の手を握る。
 やはりというかその手は、女の子の物とは思えないごつごつした掌。
 けれど、その感触と力強さが俺に勇気と安心感を与えてくれて、この先の旅路に希望を見いだせるような気がした。

「ここで熱いヴェーゼでもしてくれたら、もっと頑張っちゃうんだけどな!」

「な、何言ってんのよ! 私達は……そんな関係じゃないでしょ! 馬鹿言ってないでさっさと行きなさいよ!」

 言いながら手を離し、俺を突き飛ばすように両手で肩を押し出してくる。
 そんなの前に何か言葉を言ったような気がしたが、聞き取ることは出来なかった。それより、失敗しちまったかな、トホホ。
 ドラマとかだと、ほっぺにチューくらいはありそうなもんなのに……。ドラマの嘘つき!
 そこで、俺達に向けて会長が微笑んでるのが目に入る。隣では歩がニヤニヤと笑っているのも目に入る。あいつめ……!

「さて、お別れは終わりましたか? 中々ドラマみたいで面白かったのですよー」

「そーですか! なんだかコメディみたいになっちゃいましたけどね! それより、会長も握手しときますか?」

 俺の提案に会長は首を横に振った。

「その発言は悪手なのですよー。はい、兵輔君もご一緒に!」


――握手だけにな!


「はっ?」

「ふふ、それではしばしの間お別れです。とはいえ、またすぐに連絡するので楽しみに待っててくださいね」

 それを最後に俺は歩と共に二人に背中を向けた。振り返れば手を振ってくれていて……、やっぱり女の子に見送られるのは嬉しいもの。
 しっかし会長はすげぇなと思う。俺が考えてること見透かされてんじゃないだろうか……。
 会長に対して若干おののき、八つ当たりのように雑草を踏みしめて、歩と何気ない話をしながら外壁を迂回していく。

 そうして南門から伸びる街道に辿りついた時、よく分からないが歩が首の後ろを擦った。

「ん、なんか首にピリって……来たような……。何もないけど」

「ピリ……? 会長が言ってたメッセージってやつなんじゃね?」

 俺の言葉に「ああ、そうかも! でも、どうすればいいんだろ」と言いながらステータスを開きだす。

「あ、見てよ。これだよね?」

 と、見せてきたステータスにはメッセージ有りとの文字。まるでメールのようだが……気にしたら負けなんだろう。
 歩がタップすると円環の中に現れる文字――って読み辛っ!


『てすとです。れべるがひくいため、ひらがなでしかおくることができません』
『ぶじ、みなみもんまで、たどりつきましたか?』
『へんじは、このぶんしょうにゆびをふれると、へんしんがめんがひらきます』
『ゆびをあてて、あたまのなかでかんがえればかけるので、ためしてみてください』


 いつの時代のゲームだよってレベルだな……。

「なんて返事するんだ? つか、中々書き辛そうだな」

 親指と中指で円環を作り、人差し指で文字をなぞる。円環がぐにゃりと歪み凄まじく書き辛そうだ。

「え、うーん、どうしよ。てか、ほんと凄く書き辛い」

「んー円環の作り方が悪いんかな。例えば、右手は親指と小指にするとか……」

 言いながら自分で試してみると、若干ましになるような気はした。ま、やってみないとわからんけど。

「えー今更……。これ、円環崩すと多分消えちゃうよね……。ちょっと兵輔代わりに書いてよ」

 ほほう。俺に書いてと申しましたか! メールを他人に書かせることの怖さ、たっぷり教えてやらねばな!

「なんて書くんだ?」

 と、聞きながら俺の頭の中で文章を構築していく。よし。

――作戦は完璧だ!

 同時に歩が俺の顔を見ながら口を開く。

「そうだね。こんな感じで送ってよ」


『こちらもてすとです。ぶじに、みなみもんへとたどりつきました』
『ぼくたちはがんばっていこうとおもいます』
『かいちょうさんと、せんそうじさんもおからだにきをつけて、がんばってください』


 ふぅんと右耳から左耳へと抜けていく言葉を聞き流し、俺の文章を歩の手の中で作成する。
 文字は書かれた場所に触れると消えるという事を確認してから……。


『かいちょうの、からだつき、すてきです』
『どうか、わたしに、ひとなつのけいけんをさせてくださいよ』


 歩はこれを見た瞬間目を見開いて、大慌てで俺に手を付きつけてくる。

「ちょ、ちょっとまって! なにやってんの! ば、ばか! はやくけしてよ!」

「あーあーあー、ゆらすなよー。変になっちゃう――って、あー!」

 俺は文字を消しながら、おそらく送信ボタンであるだろうと思っていたボタンを押した。
 完璧、完璧だ!

「す、すまん……。冗談のつもりで全部消すつもりだったんだけど……」

「これ……絶対わざとでしょ? 兵輔のばか?」

 送られた内容はこうだ。


『かいちょう        す きです』
『  か わ          い         いよ』


――おっしゃ完璧、きたこれ!

という感情をおくびにも出さないように、申し訳ないという気持ちいっぱいの声色を奏でる――つもり。

「いや、わざとじゃないんだ。たまたまなんだよ」

「へぇ? じゃぁなんでそんな笑いをこらえたような顔してんのさ! もう! 嫌われちゃったらどうすんのさ!」

「いやいや、最初のだったら流石にやばかっただろう。けれど、二つ目のはどうだ? 可愛いって褒めてるんだぞ?
 相手に好きと伝えてから意識させる、という高等テクをやってやったんだよ!」

 俺の言葉に歩は口元を引き結び、びしっと裏拳を肩口にあててくる。ツッコミの要領だが普通に痛い。

「それって全て計算尽くってことじゃんか! 何が冗談でたまたまだよ。完全にわざとじゃん!」

 頬を膨らませる歩を見て、ちょっとやりすぎたかなと反省する。
 自分がされて嫌なことは人にしてはいけない。

――良い子は真似しないようにっ!

 なんて思ってる場合じゃない。どうするか……と、思ってると再度歩が首筋を触った。

「うわぁ、メッセージ来ちゃったよ! これ、こっちから送れないから今の時間、胃がきりきりした」

 言いながら、さっき俺が提案したように、小指を利用した円環を作りながら差し向けてくる。

「怖いから兵輔見てよ……。返信はしなくていいからね」

 どれどれ……、と思いながら目を向ける。


『だいすきってことばなら、わたしもかんがえましたー。けれど、あゆむくん』
『が、つかったことばは、ただのすきということば』
『これはいったいぜんたい、なんのじょうだんなのですかー?』
『とりあえず、いまは、そんなじょうきょうではありません。でも』
『わたしには、かれしもすきなひともいませんので、あゆむくんが、がんば』
『るなら、かんがえてあげるかもしれないのですよー』


 ええっと……、どう考えればいいんだろ。
 冗談と見透かされているのか、脈ありなのか、遠回しに断っているのか。

「う~ん。自分で見てみろよ? 絶望的なほど拒絶されてるってわけじゃねーと思うぞ」

「な、何その言い方……。 分かった、見てみるよ」

 そう言って歩は円環の中を熟読。短い文章だが、真剣な顔をして何度も読み返している様子だ。
 しっかし、今の文章さっきとは違って作りが変だったよな……。へんなとこで文節が切れてたし。
 と、考えると俺の脳裏に嫌な予感が走る。
 まさか……たてよ……

「なぁ、もっかい今の見せてくんね?」

「え、うん……。いいよ? 確かに最後の二行見ちゃうと希望あるのかなって思っちゃうな」

 俺は再度円環の中を覗いてみる。


だ が こ と わ る


――言えないっ!

 こんな残酷な言葉が隠されているだなんて、歩にはとても言えない!
 そう思いながら俺はおもむろにエメラルドグリーンの表面に触れ、強制的に返信画面に切り替えた。

「ああっ! なにすんの!」

「い、いや、うん。早く返信しないと会長も待ってるかなと思ってさ。女を待たす男にはなっちゃいけないぞ、うん」

 歩は「ええ~! でも確かにそうだね」と言いつつ、文章を作成しだす――と、ここで俺の首筋にピリリと電気が走ったような感覚。
 首筋を擦りながら、これがさっき歩の言ってたやつか……?と考え、恐る恐るステータスを開き確認してみる。


『りおです。れいなにたのんで、おくらせてもらっています』
『さっき、あゆむくんからきたのって、ひょうすけがやったんでしょ?』
『あんなことしちゃだめだよ。かわいそうじゃない!』
『でも、れいなはあゆむくん、けっこうかわいいっていってて』
『ほんとうにがんばるなら、ほんとうにかんがえるかもっていってました』
『つたえるのもつたえないのも、ひょうすけがきめればいいけど』
『あゆむくんがおちこむようなら、つたえてあげてください』
『                          』
『あとね、わたし』


 ここまで読んで、俺の首筋に再度ピリリとした感覚が走り、思わず円環を崩してしまう。

「あああ! やっちまった!」

「ど、どうしたの? 突然大きな声を上げて?」

「い、いや、なんでもない。すまんな、驚かせて。会長に返信してあげてくれ」

 訝しむように眉根を寄せつつも、大切に円環を守る歩に、流石だな……と、思いながら俺は自分の失態を悔いる。
 最後、なんて書かれてたのか気になる! すごく気になる! いや、それとも何も書かれてなかったのかもしれない。
 けど、そうすると文章が変なところで終わってしまう。

 葛藤し身悶えしそうになっていると、この状況を何が作り出したかという事に到達する。
 それは、ピリリとした感覚。
 つまり――別のメッセージ様の来訪。

 俺はステータス画面を開き、確認するとメッセージ有りとの文字。
 だが、それは新しいものだけであって、やはりスマホのように過去の文章を見ることは出来ない。
 溜息をつきたい気持ちを押し殺し、文章を開いてみる。


『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』


 どういうことだ……?
 何が何だか……、と思いながら頭を回す。
 まさか? さっきの兵士との戦いを見てたってことなのか……?
 確かにあれは上手くいきすぎるほど上手くいった。我ながらかっこよかったとも思う。
 それを莉緒に見せれなくて、残念だと思ってた気持ちも正直ある。


――それを莉緒が見ていた……?


 動悸が高速反復横跳びのように跳ね上がり、体が浮遊感に包まれ、体が自然と震えてしまう。
 けれど、その感覚全てが心地よい。手放したくない。
 別に告白が成功したわけでもない。告白されたわけでもない。
 ただ、ひらがなで書かれた文章が俺に届いただけ。そう思いながら再度目を向ける。


『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』


 うはぁ! まじか!
 ということは、さっきの文章はあれで終わっていたという事かな……?
 いやいや、間に何が書かれていたとしてもどうでもいい。
 俺の分身さんが反応するのも、心臓さんが心不全起こしそうになるのも、気にせず再度目を向ける。


『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』



――うはぁ!
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