54 / 64
第四章 告白編
告白編 10
しおりを挟む
「だから……ごめんなさい……」
悠介がそう言うと、柊一郎は唇を噛みながら立ち上がった。
悠介は驚いたが、柊一郎はとうとう諦めて、呆れて出て行ってしまうのだろうと思った。悲しくて寂しい。柊一郎と過ごした日々が脳裏に浮かぶ。だが、これは自分が望んだ結果なのだ。悠介は視線を落として柊一郎の足元を見つめる。しかし。柊一郎は悠介が予想だにしない行動に出た。
悠介の手を握ったまま、悠介の正面まで移動するとそこへ膝をついて顔を上げた。悠介を見つめる瞳は潤んでいて、悠介の胸を締め付ける。
「無理です……」
「……え?」
「犬山さんを、諦めるなんて……無理です!」
柊一郎は、生まれてこのかた一度も必死に何かを訴えたことなどなかった。だから、この気持ちをどうやって伝えればいいのか分からない。それでも、このまま引き下がるわけにはいかない。自分の全てをさらけ出して見せることができたらいいのに、と思う。
「っ、そんな……こと……っ」
柊一郎の言動に困惑しながらも、手を振り払い出て行ってほしいなどと、言うことはできない。大好きな人に、そんなことできるわけがない。悠介は何も言えなくなってしまう。
「お願いです……俺を信じてください……っ」
「……っ」
「大切にします。絶対に、傷つけたりしませんっ」
手を握られて、涙の滲む瞳で見つめられ、心の奥底から吐き出すような切羽詰まった柊一郎の声に何か言わなければと思うが、口がパクパクとするだけで言葉が出てこない。
「今までの人と……同じにしないで、ください……っ、俺は……犬山さんの傍にいたい……っ」
柊一郎の瞳から零れ落ちそうなほど涙が溢れて、悠介の瞳にも涙が浮かぶ。こんなに想いをぶつけられたことなどない。悠介の中で、湧き上がる恐怖と今度こそ上手くいくのではないかという期待がない交ぜになる。それでも、前向きな返事は出てこない。
「好き、なんです……本当に、心の底から……っ」
柊一郎は、気持ちを見せることができないのなら伝え続けるしかないと必死になる。こんな気持ちは初めてで。好きな気持ちも、楽しい嬉しいという気持ちも、切ない気持ちも幸せな気持ちも全部、あなたが教えてくれたのだ、と伝えたい。分かってほしい。この気持ちが過去の恋人たちのように真逆に変わるなんて有り得ない。自分の気持ちは自分にしか分からないのだ。だから、伝えるしか術がない。
「犬山さんを笑顔にしたい……俺の手で、幸せにしたい……笑って、幸せだと……言ってほしい……っ」
片膝をついたまま悠介の手に顔を寄せる。そっと唇を押し付けて、すぐに離す。そしてまた悠介を見つめた。
「他の誰にも、犬山さんを渡したくない……犬山さんを好きだと思うだけで、涙が出るくらい……本当に、好きなんです……っ」
「しゅ、いちろう……さん……」
「離れるなんて……無理です……好きで好きで好きで……好きで……っ、好きでたまらないんですっ」
自分の中の悠介への気持ちを吐き出していく。まだまだ出し切っていない。これくらいで、出し切ってしまうほど軽い気持ちではない。
「お願いします……チャンスをくださいっ、悲しませないと、証明して見せますからっ」
柊一郎が涙ながらに訴える。
そして今まで大人しく聞いていたニャーが立ち上がった。
悠介がそう言うと、柊一郎は唇を噛みながら立ち上がった。
悠介は驚いたが、柊一郎はとうとう諦めて、呆れて出て行ってしまうのだろうと思った。悲しくて寂しい。柊一郎と過ごした日々が脳裏に浮かぶ。だが、これは自分が望んだ結果なのだ。悠介は視線を落として柊一郎の足元を見つめる。しかし。柊一郎は悠介が予想だにしない行動に出た。
悠介の手を握ったまま、悠介の正面まで移動するとそこへ膝をついて顔を上げた。悠介を見つめる瞳は潤んでいて、悠介の胸を締め付ける。
「無理です……」
「……え?」
「犬山さんを、諦めるなんて……無理です!」
柊一郎は、生まれてこのかた一度も必死に何かを訴えたことなどなかった。だから、この気持ちをどうやって伝えればいいのか分からない。それでも、このまま引き下がるわけにはいかない。自分の全てをさらけ出して見せることができたらいいのに、と思う。
「っ、そんな……こと……っ」
柊一郎の言動に困惑しながらも、手を振り払い出て行ってほしいなどと、言うことはできない。大好きな人に、そんなことできるわけがない。悠介は何も言えなくなってしまう。
「お願いです……俺を信じてください……っ」
「……っ」
「大切にします。絶対に、傷つけたりしませんっ」
手を握られて、涙の滲む瞳で見つめられ、心の奥底から吐き出すような切羽詰まった柊一郎の声に何か言わなければと思うが、口がパクパクとするだけで言葉が出てこない。
「今までの人と……同じにしないで、ください……っ、俺は……犬山さんの傍にいたい……っ」
柊一郎の瞳から零れ落ちそうなほど涙が溢れて、悠介の瞳にも涙が浮かぶ。こんなに想いをぶつけられたことなどない。悠介の中で、湧き上がる恐怖と今度こそ上手くいくのではないかという期待がない交ぜになる。それでも、前向きな返事は出てこない。
「好き、なんです……本当に、心の底から……っ」
柊一郎は、気持ちを見せることができないのなら伝え続けるしかないと必死になる。こんな気持ちは初めてで。好きな気持ちも、楽しい嬉しいという気持ちも、切ない気持ちも幸せな気持ちも全部、あなたが教えてくれたのだ、と伝えたい。分かってほしい。この気持ちが過去の恋人たちのように真逆に変わるなんて有り得ない。自分の気持ちは自分にしか分からないのだ。だから、伝えるしか術がない。
「犬山さんを笑顔にしたい……俺の手で、幸せにしたい……笑って、幸せだと……言ってほしい……っ」
片膝をついたまま悠介の手に顔を寄せる。そっと唇を押し付けて、すぐに離す。そしてまた悠介を見つめた。
「他の誰にも、犬山さんを渡したくない……犬山さんを好きだと思うだけで、涙が出るくらい……本当に、好きなんです……っ」
「しゅ、いちろう……さん……」
「離れるなんて……無理です……好きで好きで好きで……好きで……っ、好きでたまらないんですっ」
自分の中の悠介への気持ちを吐き出していく。まだまだ出し切っていない。これくらいで、出し切ってしまうほど軽い気持ちではない。
「お願いします……チャンスをくださいっ、悲しませないと、証明して見せますからっ」
柊一郎が涙ながらに訴える。
そして今まで大人しく聞いていたニャーが立ち上がった。
20
あなたにおすすめの小説
隣の大学院生は、俺の癒しでした。
結衣可
BL
仕事に追われ、残業ばかりの日々を送るサラリーマン・斎藤悠真(32)。
感情を表に出すことも減り、「今日も誰ともしゃべらなかったな」と思いながら帰宅する毎日。
そんなある夜、隣の部屋から漂ってきたカレーの香りとともに、インターホンが鳴る。
「作りすぎちゃって……よかったらどうぞ」
そう微笑んで皿を差し出したのは、隣に住む大学院生・風間緒人(25)。
栄養学を学びながら料理好きの緒人は、気づけば週に一度は“おすそ分け”をするようになる。
最初は戸惑いながら受け取っていた悠真だったが、温かい食事と緒人のさりげない気遣いに、
長い間感じたことのなかった「人の温もり」に心が揺らいでいく。
雨の日に差し出されるタオルや、疲れた体に沁みる味噌汁。
やがて二人で食卓を囲む夜、体調を崩したときの看病……。
少しずつ距離が近づくたびに、悠真は自分でも驚くほど笑顔を見せ、心を許してしまう。
逃げ腰のサラリーマンと、世話焼きの年下院生。
すれ違いと優しさの間で揺れる二人の関係は、いつしか「癒し」から「恋」へと変わっていく――。
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
フードコートの天使
美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。
あれから5年。
大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。
そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。
それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。
・・・・・・・・・・・・
大濠純、食品会社勤務。
5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。
ずっと忘れない人。アキラさん。
左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。
まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。
・・・・・・・・・・・・
両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
天の求婚
紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。
主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた
そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた
即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
手紙
ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。
そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。
うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる