恋の不思議・短編集

蒼キるり

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手を繋ぐということ

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 私の手は冷たいと昔からよく言われた。

 幼稚園の頃、私とは手を繋ぎたくないと言われて、とても傷ついたのを今でも覚えている。
 でも、そう言われても否定できないほど自分の手が冷たいことは分かっていた。
 だから手が冷たい私と手を繋いでくれる人なんて居ないのだと、諦めはついていた。

 それなのに、なんの奇跡か可愛げのない私に恋人ができた。
 高校生になったばかりの頃だった。
 私もなんとなくいいなと思っていた人で、向こうから告白してくれた。嬉しかった。
 嬉しくて嬉しくて、思わず頷いてしまった。そうして付き合うことになった。
 最初は嬉しいばかりだった。それでも途中から不安になった。

 だって、私の手は冷たいから。
 付き合っていれば、手を繋ぐ日も来るだろう。
 相手もまだ照れくさいみたいで触れてはこないけど、いつかきっとそんな日が来る。
 もう繋ぎたくないと思われるのが怖かった。

 冷たい自分の手が憎かった。


「手、繋いでもいいかな」


 とうとうこの時が来た、と私は身体を固まらせた。


「だ、だめ」


 思わず告げた言葉が相手を傷つけてしまったのが分かった。


「違うの。嫌とかそういうのじゃなくて」


 傷つけたいわけでも、手を繋ぐのが嫌なわけでもないのだと必死に首を振る。


「私、手が冷たくて」


 きょとんと不思議そうに相手の目が瞬いた。


「そんなに?」


 うん、と私が頷くと恐る恐るといった様子でそっと触れてきた。


「あったかい」


 私とは全く違うその体温に、私は思わずそう言ってしまった。


「そんなにあったかい?」


 ふっと微笑んでくれた。私の手はまだ離されない。


「そっか、全然知らなかった」


 優しく笑いながら、私の手を指先で撫でてくれる。


「確かに冷たい」


 その言葉に思わず俯いてしまう。
 それでも続いた言葉に思わず顔を上げた。


「でも、もし君の手が冷たくなかったら、自分の手があったかいことも知らなかったよ」


 だから、大丈夫だよ。
 そう言って繋がれた手は離されなかった。
 繋がれた手のぬくもりを私はずっと忘れないと思う。

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