俺の幼馴染はよく溶ける

蒼キるり

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9.またもや

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 結局、由那だけを教室に返して俺は保健室に行って痛い演技を繰り広げたのだが、熟練の先生だったせいでこりゃ疑われてるなと察したのでしずしずと教室に戻った。
 クラスメイトからは遠巻きにされるし先生には悩み事があるなら言えと言われるし由那は大丈夫かと聞かれているし散々な一日だった。
 まあなんとかバレなかったから水に流すが。

 今日は大変だったなぁ、と思いつつ由那と一緒に帰る。
 途中であの後どうなったのかも聞かれたからしっかり話しておいた。


「我ながら迫真の演技だったと思うんだけどな」

「いや、勝谷、割と下手だよ、演技」


 それは由那の見る目がないのでは?と言うと深妙な顔をされてしまった。なんでだよ、なんだ、その顔は。


「いやでも、いきなり叫び始めた時はびっくりしすぎて溶けそうになったよ!」

「その前から溶けそうになってただろうが」


 俺のせいにするんじゃない。俺が連れ出したからなんとかなったようなものだろ。


「ていうか、叫ぶだろ。バレたらどうしようってすげえ焦ったんだからな」

「……そんな自分のことみたいに~」

「ばか、自分よりお前の方が心配だろ」


 普段からどんだけ心配してると思ってんだ、と真剣に言うと、由那はしばらくカチンと固まってしまった。
 なんでだ、と思っていると突如としてデロリと溶け始めてしまう。またかよ!
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