続きは第一図書室で

蒼キるり

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19.浩也の優しさ

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 ポケットの中に入れておいた携帯が振動し、電話がかかってきた事を知らせた。


「……一応、図書室は携帯電話禁止だけど、二人しかいないし良いよ。出れば?」

「……悪い。すぐ終わる」

 クラスで番号を交換してる奴は居ないし、一番ありそうと言ったら美奈だけど、今は部活中だよなぁと思い直す。
 携帯を開くと驚く事に母で、こんな時間に何だろうかと慌てて耳に当てる。

『直斗。今、良い?ちょっと頼みたい事あるんだけど』

 良い?と疑問系の割にすぐ話に入ってしまう所なんかはいつも通りだけど、声が少し焦ってるように聞こえた。だから遮らずにうんとだけ応えて先を促す。

『美奈の学校から電話があったの。よく分かんないけど、軽い捻挫したみたいなんだよね。大した事は無いと思うんだけど。一人じゃ帰れないらしいから迎えに行ったげて』

「は?捻挫って、大丈夫なのか?」

『私まだ仕事抜けられないかららよろしくね。出来るだけ早く帰るけど。それじゃ』

 俺の質問には触れず、言いたい事だけ言ってプツリと切られる。

「……何かあった?大丈夫?」

 浩也に声を掛けられて曖昧に頷く。

「なんかよく分かんないけど、美奈……妹が怪我したらしいから、ちょっと行ってくる。本棚の整理、最後まで出来なくてごめんな」

 机に無造作に置いてあった鞄を手に取り、そう伝える。

「……佐武って北中だったよな。妹さんも同じ?」

「え?ああ、話したっけ?うん、同じ」

「後から行くから先行ってて」

 しれりと言われて最初は何を言われてるか分からなかった。

「……何してるの?妹さん待ってるんじゃないの?」

 動こうとしない俺に焦れたのか不意に近づいて来て手首を掴まれる。
 ぐっと手を引かれて引きずられる前に言う。

「なんで浩也が来るんだよ」

 尋ねたいだけだったのに、怒ってる風に聞こえたかもしれない。

「一人でどうやって連れて帰るの?中学生の妹さんを一人で背負って帰るの?」

「だからって浩也が……」

 来る必要ないとまで言ってしまうのは、あまりに冷たい気がして最後までは言えなかった。
 動揺していて、手首を掴んでくれた浩也に安心したのは本当だったから。

「……本棚の整理、良いのか?」

 それだけ言うと、何言ってるんだという表情で見られる。

「そんな顔の佐武を一人で放っておくよりずっと良い」

 そんな事も分かんない?と言われてしまう。
 手首を引っ張られて二人で廊下に出る。
 そういえば今まで二人で一緒に戸を潜った事がなかったな、と何故かふとそんなことを思った。
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