私の親友

蒼キるり

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3.私は知っている

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 神崎歩が好きなんだよね、と瑠衣が私に打ち明けたのはそんなに前のことじゃない。
 確か二年生になったばかりの頃だったと記憶している。実際、半年も経っていない。
 学校からの帰り道。学校から大分離れていて、でも家まではまだ距離があって、周りに人が誰もいない時だった。
 まるで世間話でもするかのようにさらりと告げられたから驚いた。

 小学生の頃からの付き合いの瑠衣が恋のことを話すのは初めてで、私は馬鹿みたいにぽかんとしてしまったのをよく覚えている。
 聞きたいことは色々あった。人への興味がほとんどないみたいに見える瑠衣の恋なんて気にならないわけがない。
 でも瑠衣の顔は強張っていて、私に何を言われるか身構えているかのようだったから、私はなんにも尋ねずにただそうなんだと頷いた。
 そのことに安心したみたいに瑠衣が笑ってくれたから、その時の対応は間違っていなかったんだと思う。

 その時はそれで終わって、いつから好きなのかとか、ずっとそうなのかとか、告白するつもりはあるのかとか、そういったことは全部少しずつ少しずつジグソーパズルをはめ込むみたいにゆっくり尋ねていった。
 応援するよ、と言ったのはいつだっただろう。叶いっこないと瑠衣が自虐気味に笑ったのはいつだっただろう。
 私は瑠衣のことが大好きだけど、その笑い方は好きじゃない。もっと楽しそうに笑ってくれればいいのになぁって思う。
 瑠衣がそうやって笑いたいなら私は何も言わないけど、本当は瑠衣もそんな風に笑いたくないのだということを私は知っている。
 私だけは知っているから、私は瑠衣に笑っていてほしい。



 そんなことをぼんやりと考えていたから、午後一番の体育は散々な結果だった。
 やる気がないのか、なんて言われても無いのだから仕方ない。そんなこと言ったら余計怒られるから言わないけど。
 もうすぐ球技大会があるのだから、もっと気を引き締めるようにという先生からのありがた迷惑なお言葉は右から左に流すことにした。

 体育で疲れた体のままでもう一時間授業を受けると、私はもうくたくたに疲れ切ってしまった。
 私ほどは疲れていないけど、まあまあ疲れている瑠衣と一緒に学校を後にした。
 暑いから帰り道にコンビニに寄らないかと誘って、アスファルトから昇る暑すぎる空気を浴びながら私たちは冷え切った店内に滑り込んだ。


「アイス買おうよ、アイス」


 私が弾んだ声で言って、瑠衣も暑さには参っていたのか即座に頷いてくれた。
 瑠衣はすぐにソーダ味のアイスを選んで、私はいつも瑠衣に呆れられるほど悩む。
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