ワームワームワーム

蒼キるり

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2.目には見えない奇跡

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「生命体?」


 いてもなんらおかしくはない。機械が反応しなかったのは不思議だが、今までにないケースの生命体なのだろうか?
 周りを確認してもやはり何もない。ただ広いだけだ。けれど目を凝らしていると何かが動いた気もする。空気が動いている?

 何もないはずの空間が歪んでいるように見える。見えない何かがそこにいるように。
 透明なビロードがそこにあって揺れているようだと思う。これが生き物なのだろうか。本当は明確にそこにいて、俺が見えないだけなら機械が認識するはずだ。そうでないのだから全く新しいタイプの生き物ということになる。

 とにかく俺は仕事をしなければいけない。機械でもほとんどの仕事ができる中で俺みたいな奴が送り込まれるのは新たな星に生命体がいた場合、こちらに敵意がないことを伝えるためなのだから。


「俺は罪人ワーム137。個別認識名はレルソー。この星が人間の居住地となれるかどうかを調べに来た。この星の生命体に害を与えるつもりはない。貴方が知的生命体であるなら尊重するし、もし無礼なことをしてしまったのなら謝る」


 言葉はもちろん通じない可能性の方が高いが声は届くかもしれない。それに発達した知的生命体の場合はこちらの言葉が言語に関係なく伝わるから、こうして丁寧に挨拶をすることは大切だ。と宇宙船に乗り込む前に最低限の知識として教わった。

 殺される可能性は少しでも減らした方がいいからだろう。まあ勝手に宇宙船で来て乗り込んでいる立場なので問答無用で殺されてもおかしくはない状況だ。使い捨てでも問題がないから俺がここに来ている。
 目の前にいるのであろう生命体は未だ姿を現さず、ゆらゆらと揺らぎ続けていた。


「意思疎通ができないのか?」


 それならそうと報告しなければならない。知的生命体ではない生き物の扱いはどうなるのだろう。やはり処分されるのだろうか。
 そんなことを考えていると、また空気がざわりと揺れた。

 わ、あ、む、と確かに音に聞こえるそれが耳に届く。気分が一気に高揚した。小さな笑い声が自分の口から溢れるのがわかった。
 喋っている。確かに喋っている。俺が初めて喋った言葉を真似している。ワームと口にしている。聞いたことがない声だ。頭に直接響くような。ああ、ああなんて奇跡だ。


「いや、お前、ワームっていうのは別に挨拶でも名前でもなくて、って聞こえてはいるんだよな」


 興奮して思わず一人でべらべらと話してしまった。依然として聞こえるのは「わあむ」という言葉だけだが関係ない。こちらの声は聞こえているだろう。
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