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第25章
闇の力2*
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冷たい眼差しでエドワードさまは偽の神子を見下した。
まるで時間を遡る前の僕のように、偽の神子はエドワードさまに縋りついた。
「なんでぼくを呼んでくれないんだよ!? ルキウスとふたりきりでいるなんて、どうかしてるよ! どうして、ぼくのことを見てくれないの? ぼくを愛してよ!」
「うるさい、黙れ」
そうしてエドワードさまは偽の神子の手を、ぞんざいに払いのける。
前回や前々回の世界でエドワードさまは偽の神子のことを愛していた。それなのに、こんなに冷たくつれない態度をとるとは、どういうことだろうと困惑していれば偽の神子が、こちらに顔を向ける。真っ黒な瞳には憎しみの炎が静かに燃え盛っていた。
そうして彼は、また黒い球を作り出そうとする。
「ルキウス、おまえが過去をやり直したりするからぼくは、こんな目にあうことになったんだぞ。おまえが素直に殺されていれば、ぼくはこんな屈辱を受けることはなかった。エドの愛を一身に受けることができたんだ。全部おまえのせい――」
「黙れと言ってるだろう! しゃしゃり出るな!」
そうしてエドワードさまの拳が偽の神子の顔の中心に、めり込んだ。黒い球が消え、偽の神子は大量の鼻血を出し、膝を折った。
僕は、容赦なく偽の神子を殴りつけたエドワードさまの恐ろしい剣幕に、思わずたじろいでしまう。
「痛い、痛いよううう! ひどい……なんでぇ……エド……!」と子供のようにワーワー泣き喚いている。
「自業自得だ。俺は召喚師であるルキウスと玉座が欲しいと言っているのに、おまえは俺の望みを一向に叶えようとしないじゃないか! それどころか俺の前でわけのわからないことをギャンギャン喚き散らすばかり。金目のものが欲しいなら兄上たちや重臣たちにでも媚びろ。俺の手をいちいち煩わせるな」
「な――、なんでわかってくれないんだよ! ぼくはエドが好きなんだ。エドの伴侶となって悠々自適な暮らしをしたい。幸せなハッピーエンドを迎えたいんだ! そのために、おまえのためとなることをやった。……ぼくらの前途を阻むルキウスが全部悪いんだ。だからエドはぼくのものになってくれない。ぼくを愛してくれないんだ。……あいつさえ殺せば……!」
「くどいぞ、貴様」
目の前の信じられない光景に僕も、偽の神子も目を見開いた。
あんなに「ノエル、ノエル」と偽の神子の名前を呼び、とろけるような目つきをしていたエドワードさまが、レイピアで偽の神子の足の甲を刺したのだ。
偽の神子は痛みから泣き叫ぶ。悲鳴をあげながら「やめて、エド! やだ! ごめんなさい、いい子にするから……!」と許しを請う。
だがエドワードさまはレイピアを使って今度は偽の神子の手首を刺した。
偽の神子はヒイヒイ言いながら体を丸めてエドワードさまから逃げようとする。そんな彼の体にエドワードさまの蹴りが入る。
「このグズ、役立たずのクズが!」と偽の神子のことを彼は罵った。「俺を好きだと言うなら、少しは役に立ってみろ。俺の足ばかり引っ張りおって! 神子だというなら天上の神々を呼び、父上や兄上たちを亡き者として、俺を王につけるように服従させろと言っているが、わからないのか!」
「無理だよ。そんなのできない……! そんなことをしたらぼくが、あいつらに殺され……ぐふっ!」
「俺を愛しているなら命のひとつやふたつ、神々に捧げて死ね! なんのため神子などやっているのだ、ノエル? 王族の栄華を永遠に続かせるために神子は存在する。そんなこともできないなら今、この場で自害しろ!」
僕は恐怖から指一本動かせない状態になってしまう。
以前エドワードさまに別れを告げたとき、馬乗りになって殴られたことを思い出す。まるで幽霊にでもなったみたいに僕は、僕に馬乗りになり、僕を殴ってくるエドワードさまの姿を見ていた。次第にエドワードさまに殴られている僕の姿は、彼に蹴られている偽の神子の姿へと変化していった。
「邪魔者を始末しろと命令しても貴様は言うことを聞かず、ただルキウスの愚痴をこぼすばかり。俺を好きだというのなら、なぜルキウスを生け捕りにしなかった。俺の名前を使って暗殺部隊を送り込んだのを俺が知らないとでも思ったのか!?」
イワーク洞窟の一件をエドワードさまは言っているのだと、はっとする。
てっきり暗殺部隊を向かわせたのはエドワードさまだと思っていたけど、彼の名前を借りた偽の神子が独断でやったのかと真実を知る。だから戦場では暗殺部隊が僕を狙ってくることがなかったのだ。こんな状況ながら納得する。
偽の神子はエドワードさまの足首を必死に掴み、口から血を流しながら泣き叫んだ。
「だってエドはルキウスのことを邪魔だって言ってたじゃないか! だからぼくはエドのためにルキウスを殺そうと思ったんだ! そうすればエドぼくのことを褒めて、ぼくを伴侶にしてくれるって……」
「そんなことは知らん。何かの聞き間違いだろ」
「そんな……嘘をつかないでよ、エドワード!」
エドワードさまの足が偽の神子の顎を蹴り上げ、偽の神子は仰向けのままの状態で静かに涙をこぼし、放心状態となっていた。
まるで時間を遡る前の僕のように、偽の神子はエドワードさまに縋りついた。
「なんでぼくを呼んでくれないんだよ!? ルキウスとふたりきりでいるなんて、どうかしてるよ! どうして、ぼくのことを見てくれないの? ぼくを愛してよ!」
「うるさい、黙れ」
そうしてエドワードさまは偽の神子の手を、ぞんざいに払いのける。
前回や前々回の世界でエドワードさまは偽の神子のことを愛していた。それなのに、こんなに冷たくつれない態度をとるとは、どういうことだろうと困惑していれば偽の神子が、こちらに顔を向ける。真っ黒な瞳には憎しみの炎が静かに燃え盛っていた。
そうして彼は、また黒い球を作り出そうとする。
「ルキウス、おまえが過去をやり直したりするからぼくは、こんな目にあうことになったんだぞ。おまえが素直に殺されていれば、ぼくはこんな屈辱を受けることはなかった。エドの愛を一身に受けることができたんだ。全部おまえのせい――」
「黙れと言ってるだろう! しゃしゃり出るな!」
そうしてエドワードさまの拳が偽の神子の顔の中心に、めり込んだ。黒い球が消え、偽の神子は大量の鼻血を出し、膝を折った。
僕は、容赦なく偽の神子を殴りつけたエドワードさまの恐ろしい剣幕に、思わずたじろいでしまう。
「痛い、痛いよううう! ひどい……なんでぇ……エド……!」と子供のようにワーワー泣き喚いている。
「自業自得だ。俺は召喚師であるルキウスと玉座が欲しいと言っているのに、おまえは俺の望みを一向に叶えようとしないじゃないか! それどころか俺の前でわけのわからないことをギャンギャン喚き散らすばかり。金目のものが欲しいなら兄上たちや重臣たちにでも媚びろ。俺の手をいちいち煩わせるな」
「な――、なんでわかってくれないんだよ! ぼくはエドが好きなんだ。エドの伴侶となって悠々自適な暮らしをしたい。幸せなハッピーエンドを迎えたいんだ! そのために、おまえのためとなることをやった。……ぼくらの前途を阻むルキウスが全部悪いんだ。だからエドはぼくのものになってくれない。ぼくを愛してくれないんだ。……あいつさえ殺せば……!」
「くどいぞ、貴様」
目の前の信じられない光景に僕も、偽の神子も目を見開いた。
あんなに「ノエル、ノエル」と偽の神子の名前を呼び、とろけるような目つきをしていたエドワードさまが、レイピアで偽の神子の足の甲を刺したのだ。
偽の神子は痛みから泣き叫ぶ。悲鳴をあげながら「やめて、エド! やだ! ごめんなさい、いい子にするから……!」と許しを請う。
だがエドワードさまはレイピアを使って今度は偽の神子の手首を刺した。
偽の神子はヒイヒイ言いながら体を丸めてエドワードさまから逃げようとする。そんな彼の体にエドワードさまの蹴りが入る。
「このグズ、役立たずのクズが!」と偽の神子のことを彼は罵った。「俺を好きだと言うなら、少しは役に立ってみろ。俺の足ばかり引っ張りおって! 神子だというなら天上の神々を呼び、父上や兄上たちを亡き者として、俺を王につけるように服従させろと言っているが、わからないのか!」
「無理だよ。そんなのできない……! そんなことをしたらぼくが、あいつらに殺され……ぐふっ!」
「俺を愛しているなら命のひとつやふたつ、神々に捧げて死ね! なんのため神子などやっているのだ、ノエル? 王族の栄華を永遠に続かせるために神子は存在する。そんなこともできないなら今、この場で自害しろ!」
僕は恐怖から指一本動かせない状態になってしまう。
以前エドワードさまに別れを告げたとき、馬乗りになって殴られたことを思い出す。まるで幽霊にでもなったみたいに僕は、僕に馬乗りになり、僕を殴ってくるエドワードさまの姿を見ていた。次第にエドワードさまに殴られている僕の姿は、彼に蹴られている偽の神子の姿へと変化していった。
「邪魔者を始末しろと命令しても貴様は言うことを聞かず、ただルキウスの愚痴をこぼすばかり。俺を好きだというのなら、なぜルキウスを生け捕りにしなかった。俺の名前を使って暗殺部隊を送り込んだのを俺が知らないとでも思ったのか!?」
イワーク洞窟の一件をエドワードさまは言っているのだと、はっとする。
てっきり暗殺部隊を向かわせたのはエドワードさまだと思っていたけど、彼の名前を借りた偽の神子が独断でやったのかと真実を知る。だから戦場では暗殺部隊が僕を狙ってくることがなかったのだ。こんな状況ながら納得する。
偽の神子はエドワードさまの足首を必死に掴み、口から血を流しながら泣き叫んだ。
「だってエドはルキウスのことを邪魔だって言ってたじゃないか! だからぼくはエドのためにルキウスを殺そうと思ったんだ! そうすればエドぼくのことを褒めて、ぼくを伴侶にしてくれるって……」
「そんなことは知らん。何かの聞き間違いだろ」
「そんな……嘘をつかないでよ、エドワード!」
エドワードさまの足が偽の神子の顎を蹴り上げ、偽の神子は仰向けのままの状態で静かに涙をこぼし、放心状態となっていた。
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