リスタート―三度目の正直―

鶴機 亀輔

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番外編

空に太陽4

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「ルキウス、こいつは異世界から来た人間だからって、おごり高ぶってるんだよ。それで……」

「だとしても相手はつい最近まで子どもで大人になったばかりの子ですよ。この国の人間でもないんですから手加減してあげてください」

「甘やかすだけじゃ教育にならないぞ、ルキウス。ときには厳しく接することも大事だ」

「まったく父様みたいないことを言わないでくださいよ」

 ゲンナリした表情のままルキウスは回復魔法をイチロウにかけてやり、ポシェットの中からルパカーのつばが入った小瓶を取り出す。小瓶の栓を抜き、小瓶をイチロウの鼻の下にやると……「臭っ!」

 ギャッと悲鳴をあげてイチロウが飛び起きた。

「あれ、ルキウス。買い物は終わったのか?」

「うん、ついさっきね。荷物も辻馬車に乗せたよ」

「ふーん、なるほどな。それで、この後の予定は?」

「特になし。今年は家で新年のお祝いをするから家に帰って母様やメイド長たちの手伝いをするつもり」

「へえ、なるほどな……」

 あやしげな笑みを浮かべたイチロウはマックスのマントをわし掴みにする。

 首の絞まったマックスがカエルの潰れたような声を出して白目を剥いた。

 そうしてイチロウは、言うことを聞かない気性の荒馬を連れて歩く馬飼いのようにマックスのことを引っ張って、走った。

「イチロウ、どこへ行くの!?」

「ちょっと寄るところがあるんだ。ぼくは夕方までには帰るから! 先に帰ってて」

「ええっ……」

 呆然としたルキウスは行場のない手を中途半端に上げたまま、イチロウとマックスが走っていった方向を凝視している。

 そんなルキウスの様子に戸惑いつつ、キャロルがおずおずと長方形の紙袋をルキウスへ渡した。

「あのルキウスさま……こんなタイミングで申し訳ありませんが、これはうちの両親が作ったキイチゴのお酒です。ピーターさんの件について、ありがとうございました。少し早いですが、お誕生日おめでとうございます」

「えっ、ああ、うん。ありがとう、キャロル。大切に飲ませてもらうね」

「じゃあ悪いけどルキウス。ボクとキャロルも仕事に戻らないとだから……」

「わかってる。ありがとう、ピーター。お仕事、がんばって」

「ああ、じゃあまた来年な」

「ルキウスさま、来年もよろしくお願いします」

「うん、よいお年を」

 そうしてルキウスは待たせていた辻馬車に乗り、家の近くへ向かってもらうことにした。



「おい、オレのマントを引っ張るな。生地がダメになるだろ!」

 マックスはイチロウの手を叩き、自身のマントの布地を取り去った。

「いったいな! 何するんだよ!?」

「おまえ、なんのつもりでオレをここまで連れてきた? 目的を言え」

 悪役さながらな笑みを浮かべてイチロウが腕組をする。

「ぼくはルキウスの誕生日に羊皮紙のノートを渡すつもりでいる」

「なんだと……」

「ルキウスは自分では認めないが大の酒好きだ。茶菓子も好む。ほかに興味のあるものといったら、せいぜい文字を書いたり、手紙用の文房具くらいと来た。つまり――大方あいつが好きこのむものは、あいつの家族や友だちがプレゼントする。だから気をつけないとプレゼントがかぶって後で恥ずかしい思いをすることになるんだ」

「何!?」

 思わず大声で叫んだマックスが顔を強張らせる。

「恋人からまともにプレゼントを贈ってもらったことがないルキウスだぞ。恋人思いのおまえのことだ。あいつが望むものを与えてビックリさせてやろう……なんて考えてるんだろ? 残念だったな! あいつは、ぼくや女たちと違って高級化粧品や宝飾品、シルクの服をほしがらないし、おまけにここは二十一世紀の令和と違って、あれこれそろってない。プレゼントもすぐにかぶる。ルキウスが喜ぶプレゼントは何か頭を悩ませてろ、バーカ!」

 目の下を人差し指で伸ばし、べえっと舌を出したイチロウは猛スピードで人混みの中を走り抜ける。

「おい、このクソガキ。待てって! すまない……ちょっと、どいてくれ!」

 フェアリーランドの中でもガタイがよく身長の高いマックスは人混みの中で詰まってしまった。

「なんだよ!」「キャア!」と道行く人々が非難の声をあげた。

 東の国の果てにあるオーシャン国の人のように体が薄くて背の低いイチロウは、子どものようにすいすいと先へ進み、姿が見えなくなる。

 舌打ちをしてマックスは、ひとりで城下町をおとなしく歩くことにした。

 皆、年末年始ということで活気づいており、店の人間たちは大忙しだ。買い物客もせわしない様子で、あっちへこっちへと花から花へ移るミツバチのようである。

 学院や学校が休みとなって帰省している子どもたちが元気よく追いかけっこをしている。はしゃぐ子どもたちにぶつからないように、うまくよけながらマックスは店を観察していた。

「インクや羽ペンはもう奥様たちが用意してそうだよな。紙はオレの給料じゃ高すぎて手に入らない。花――はエドワード王子とかぶるから、なんかいやだ。旦那様に見つかったら大目玉を食らうだろうし。茶菓子は料理長やアンナさまが準備してそうだな。それにキャロルの家は酒屋だ。いったいなんだったら、あいつを喜ばせられるんだ……?」
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