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第7章
あなただけのストーリー2
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「大変お待たせいたしました、村山様。本日はご足労いただき、誠にありがとうございます。今後、村山様の担当をさせていただきます有島と申します。よろしくお願いいたします」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
「どうぞお掛けください」と有島さんに促され、再度椅子に腰掛けた。「早速ですが、村山様の現在の状況のご確認と、ご予約の際にメールでチェックしていただいたお悩み内容である“なかなかいい人と巡り会えない”ということについて、お話を伺わさせていただきます。現在、村山様は大学三年生で、お間違いありませんね」
「はい」
「来年度で大学を卒業されますね。このまま就活をなされるのですか、それとも大学院へご進学をお考えですか?」
「就職をするつもりです。勉強は嫌いじゃないけど、研究する方面には向いていないので」
「では、今のうちに将来のパートナーになる恋人を見つけたいとお考えから、ガニュメデスをご利用いただいたのでしょうか?」
「えっと……知人にガニュメデスのパンフレットを渡されて、勧められたんです」
「なるほど、承知いたしました。ところで話は変わりますが、村山様のバース性はベータでしたね。家族や兄弟のように親しくなれるご友人をお求めですか? それとも、パートナーとなるかどうかは置いておいてまずは交際のできるお相手をお求めでしょうか」
「えっ? あの……恋愛関係になることを前提としなくていいんですか?」
結婚相談所っていうんだから、みんな番や結婚相手、パートナーとなる相手を見つけたいと最初から考えている人ばかりが来ると思っていたから、面食らう。
「もちろんでございます。昨今は友情婚という形で結婚するお客様もいますから」
「友だち……」
有島さんの言葉を耳にして、ぼくの頭には航大の姿が思い浮かんだ。
「はい。家族や兄弟、友だち、仕事場の仲間を人として愛せるけど恋愛感情を抱くことができない、恋愛感情を抱いても一般的に人間の三大欲求と言われている性欲をお持ちでない方々もいます。『恋愛対象として人を見ることできない』『恋人はできても性的な問題で、すぐに別れてしまう』というお客様に、一番そばにいたいと思える価値観や性格の合った親友や同志となれる方々の出会いも提供しています。『とりあえず会ってみる』というラフなスタイルも、弊社では歓迎しております」
「――なぜですか? あなたたちは人と人が番や結婚することで、お給料をもらうのでしょう。それじゃ、あまりにも割に合わないのでは?」
「そうでうね。ですがアルファとオメガが番になったり、結婚、パートナーとなるということは人生の一大イベントになりえます。何しろ、お客様のライフスタイルが大きく変わるのですから。ですが番や結婚、パートナーを見つけることだけが目的となり、気持ちが急いては、本当にご縁がある方との出会いを逃し、ミスマッチが生じる恐れも大きくなります。そうなるとお客様が『婚活疲れ』を起こしてしまいます。『婚活疲れ』に陥り、本来出会えたはずの大切な方とのご縁が結ばれる機会がなくなってしまう。それは、とても悲しいことです。村山様もガニュメデスで『マッチングアプリ疲れ』を起こしている、または起こしかけている状態なのではございませんか? 登録してからまだ二ヵ月しか経っていませんが、デートをされている方がいますね。しかし二回目というお話は、いぜんとしてありません」
有島さんの言葉にぼくは、なんと返答していいかわからなくなる。
すると有島さんが口元にふっと爽やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ、思ったことは正直に言ってください。マッチングアプリ疲れ、婚活疲れを起こされる方は多いですから。弊社の代表である松岡は、その疲れに着眼してマッチングアプリと結婚相談所の併用を思いついたのです。話が脱線しました。村山様はパートナーとなる方を、ガニュメデスだけでなく、こちらでもお探ししたいということですよね」
「その……はい」
「話しにくいことは無理に答えなくて大丈夫ですよ。しかしながら、もしも気になることや、不安なこと、胸のつかえとなっていることが少しでもあるのなら、どうかお話しください。もちろん今日が初回です。私という人間が村山様のお相手を見つけられるのか、AIが出したからといって本当に適した相談員か、信用に値する人間かと疑問に思うことも多々あるでしょう。ゆっくりお話しできればいいなと思っています。素敵な方を見つけていきましょう」
――時間は限られている。やらなきゃいけないことは山のようにあって、日々目まぐるしく変化する社会だ。その変化に適応できるように対応を変えていくことを否応なく迫られる。
何より人間には寿命がある。代わり映えのない毎日といいながら、実際には未来なんか不明瞭で予測がつかない。次の瞬間に天災や人災で命を落とす可能性だってあるんだから。
そんな不幸を食い物にする化け物のような人間もいて、本当に世の中が良くなっているのか、悪くなっているのかわからない。ただ閉塞感があって、息苦しい。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
「どうぞお掛けください」と有島さんに促され、再度椅子に腰掛けた。「早速ですが、村山様の現在の状況のご確認と、ご予約の際にメールでチェックしていただいたお悩み内容である“なかなかいい人と巡り会えない”ということについて、お話を伺わさせていただきます。現在、村山様は大学三年生で、お間違いありませんね」
「はい」
「来年度で大学を卒業されますね。このまま就活をなされるのですか、それとも大学院へご進学をお考えですか?」
「就職をするつもりです。勉強は嫌いじゃないけど、研究する方面には向いていないので」
「では、今のうちに将来のパートナーになる恋人を見つけたいとお考えから、ガニュメデスをご利用いただいたのでしょうか?」
「えっと……知人にガニュメデスのパンフレットを渡されて、勧められたんです」
「なるほど、承知いたしました。ところで話は変わりますが、村山様のバース性はベータでしたね。家族や兄弟のように親しくなれるご友人をお求めですか? それとも、パートナーとなるかどうかは置いておいてまずは交際のできるお相手をお求めでしょうか」
「えっ? あの……恋愛関係になることを前提としなくていいんですか?」
結婚相談所っていうんだから、みんな番や結婚相手、パートナーとなる相手を見つけたいと最初から考えている人ばかりが来ると思っていたから、面食らう。
「もちろんでございます。昨今は友情婚という形で結婚するお客様もいますから」
「友だち……」
有島さんの言葉を耳にして、ぼくの頭には航大の姿が思い浮かんだ。
「はい。家族や兄弟、友だち、仕事場の仲間を人として愛せるけど恋愛感情を抱くことができない、恋愛感情を抱いても一般的に人間の三大欲求と言われている性欲をお持ちでない方々もいます。『恋愛対象として人を見ることできない』『恋人はできても性的な問題で、すぐに別れてしまう』というお客様に、一番そばにいたいと思える価値観や性格の合った親友や同志となれる方々の出会いも提供しています。『とりあえず会ってみる』というラフなスタイルも、弊社では歓迎しております」
「――なぜですか? あなたたちは人と人が番や結婚することで、お給料をもらうのでしょう。それじゃ、あまりにも割に合わないのでは?」
「そうでうね。ですがアルファとオメガが番になったり、結婚、パートナーとなるということは人生の一大イベントになりえます。何しろ、お客様のライフスタイルが大きく変わるのですから。ですが番や結婚、パートナーを見つけることだけが目的となり、気持ちが急いては、本当にご縁がある方との出会いを逃し、ミスマッチが生じる恐れも大きくなります。そうなるとお客様が『婚活疲れ』を起こしてしまいます。『婚活疲れ』に陥り、本来出会えたはずの大切な方とのご縁が結ばれる機会がなくなってしまう。それは、とても悲しいことです。村山様もガニュメデスで『マッチングアプリ疲れ』を起こしている、または起こしかけている状態なのではございませんか? 登録してからまだ二ヵ月しか経っていませんが、デートをされている方がいますね。しかし二回目というお話は、いぜんとしてありません」
有島さんの言葉にぼくは、なんと返答していいかわからなくなる。
すると有島さんが口元にふっと爽やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ、思ったことは正直に言ってください。マッチングアプリ疲れ、婚活疲れを起こされる方は多いですから。弊社の代表である松岡は、その疲れに着眼してマッチングアプリと結婚相談所の併用を思いついたのです。話が脱線しました。村山様はパートナーとなる方を、ガニュメデスだけでなく、こちらでもお探ししたいということですよね」
「その……はい」
「話しにくいことは無理に答えなくて大丈夫ですよ。しかしながら、もしも気になることや、不安なこと、胸のつかえとなっていることが少しでもあるのなら、どうかお話しください。もちろん今日が初回です。私という人間が村山様のお相手を見つけられるのか、AIが出したからといって本当に適した相談員か、信用に値する人間かと疑問に思うことも多々あるでしょう。ゆっくりお話しできればいいなと思っています。素敵な方を見つけていきましょう」
――時間は限られている。やらなきゃいけないことは山のようにあって、日々目まぐるしく変化する社会だ。その変化に適応できるように対応を変えていくことを否応なく迫られる。
何より人間には寿命がある。代わり映えのない毎日といいながら、実際には未来なんか不明瞭で予測がつかない。次の瞬間に天災や人災で命を落とす可能性だってあるんだから。
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