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第6章
家族や兄弟みたいな存在3
まさか隼人と恋バナをする日が来るなんて夢にも思わなかった。
それとも都合のいい夢なんだろうか? ふわふわとする頭で考えてみても答えは出ない。
嘘をつくよりも気持ち悪いと思われていいから言ってもいいかな……。
「恋人はいない。でも――好きな人ならいるよ」
すると隼人は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔をする。
「誰だよ、そいつ。憧れの声優さんとか先輩でもいるのかよ」
「違うよ。でもね、その人、男の人で異性愛者だからぼくなんか眼中にないんだ」
「はっ……?」
ほうけた声を出して、隼人は固まった。男なのに男が好きなんてキモイって思われてるのかな?
「なんだよ、それ。最初からかなわねえ恋じゃんか」
「うん、そうなんだ」
「『そうなんだ』って、おまえ、バカかよ。そんなの不毛なだけだろ!?」
「不毛だって言われても、どうしようもないよ。だって気づいたときには、もう好きだったんだよ? 自分でもその人のことが、いつから好きになってたのか、わからない。ふと瞬間に、『あっ、この人のことが、いつの間にか好きになってたんだ』って気づいたんだよ? かなわないってわかってるよ。でも、あまりにも思いが大きくなりすぎてて、すぐになくせたり、諦めるられるような思いじゃなくなってたんだ。その人に告白したら、きっとおれ、振られちゃう。いっぱい罵られて心臓がもとに戻れなくなるくらいに壊れて死んじゃうよ」
ズカズカとやってきた隼人がぼくの両肩を掴んだ。
「ほんっとに頭悪いな。なんで、そんな最低野郎を好きになったんだよ!」と怒ってくる。怒ってくる理由が理解できない。
やっぱり、いつも通りになっちゃうんだなって、ため息が漏れる。
「なんでだろうね、顔かね? それとも声とか、においかな? でも隼人が言うほど、その人、最低じゃないよ。ぼくに冷たいことは多いけど、たまにすごくやさしいんだ」
「渉……!」
険しい顔つきをした隼人の顔なんて見たくない。ほかの人たちや動物は隼人を心から笑わせてあげられる。
でも、ぼくはいつも間違えてばかり。
「ときどき過去の世界に行って、やり直したいなって思うことがあるんだ」
「はあ? どういう意味なわけ?」
「『その人を好きになっても一緒になれないよ』って昔のぼくに教えてあげたい。大事な人を手放さないためには、何も言わずに隣にいることが一番だって。そうすれば今みたいに苦しんだりしないし、その人の怒った顔を見ないし、ぼくをバカにする言葉を一生聞かなくて済むんだよ……って」
ああ、駄目だなって思った。
涙がボロボロこぼれて止まらない。
「お、おい、おまえ、マジで大丈夫か!? なんで泣いたりする?」と隼人が慌て始める。
好きな人が自分のことを心配してくれたら、うれしいと思うものだ。
でも、それはぼくみたいな卑怯者には、あってはならない。
「ごめんね、隼人。困らせて……やっぱ、ぼく、変みたい……。駄目だな、調子悪いと!」
はははと声だけ笑っみせても目から次々に生暖かい雫があふれてきて、笑顔は引きつるばかり。
「本当に……ごめん」
そうして彼の腕を振り切って家の中へ駆け込んだ。鍵を閉め、カーテンを引き、二階にある部屋まで猛ダッシュする。
ポン! と音がして、またぼくはポメラニアンになった。
涙が出ない代わりに、お父さんとお母さんが部屋に来てくれても、くーんと情けなくか細い声を出し続けて夜が明けたのだった。
それとも都合のいい夢なんだろうか? ふわふわとする頭で考えてみても答えは出ない。
嘘をつくよりも気持ち悪いと思われていいから言ってもいいかな……。
「恋人はいない。でも――好きな人ならいるよ」
すると隼人は眉間にしわを寄せて不機嫌そうな顔をする。
「誰だよ、そいつ。憧れの声優さんとか先輩でもいるのかよ」
「違うよ。でもね、その人、男の人で異性愛者だからぼくなんか眼中にないんだ」
「はっ……?」
ほうけた声を出して、隼人は固まった。男なのに男が好きなんてキモイって思われてるのかな?
「なんだよ、それ。最初からかなわねえ恋じゃんか」
「うん、そうなんだ」
「『そうなんだ』って、おまえ、バカかよ。そんなの不毛なだけだろ!?」
「不毛だって言われても、どうしようもないよ。だって気づいたときには、もう好きだったんだよ? 自分でもその人のことが、いつから好きになってたのか、わからない。ふと瞬間に、『あっ、この人のことが、いつの間にか好きになってたんだ』って気づいたんだよ? かなわないってわかってるよ。でも、あまりにも思いが大きくなりすぎてて、すぐになくせたり、諦めるられるような思いじゃなくなってたんだ。その人に告白したら、きっとおれ、振られちゃう。いっぱい罵られて心臓がもとに戻れなくなるくらいに壊れて死んじゃうよ」
ズカズカとやってきた隼人がぼくの両肩を掴んだ。
「ほんっとに頭悪いな。なんで、そんな最低野郎を好きになったんだよ!」と怒ってくる。怒ってくる理由が理解できない。
やっぱり、いつも通りになっちゃうんだなって、ため息が漏れる。
「なんでだろうね、顔かね? それとも声とか、においかな? でも隼人が言うほど、その人、最低じゃないよ。ぼくに冷たいことは多いけど、たまにすごくやさしいんだ」
「渉……!」
険しい顔つきをした隼人の顔なんて見たくない。ほかの人たちや動物は隼人を心から笑わせてあげられる。
でも、ぼくはいつも間違えてばかり。
「ときどき過去の世界に行って、やり直したいなって思うことがあるんだ」
「はあ? どういう意味なわけ?」
「『その人を好きになっても一緒になれないよ』って昔のぼくに教えてあげたい。大事な人を手放さないためには、何も言わずに隣にいることが一番だって。そうすれば今みたいに苦しんだりしないし、その人の怒った顔を見ないし、ぼくをバカにする言葉を一生聞かなくて済むんだよ……って」
ああ、駄目だなって思った。
涙がボロボロこぼれて止まらない。
「お、おい、おまえ、マジで大丈夫か!? なんで泣いたりする?」と隼人が慌て始める。
好きな人が自分のことを心配してくれたら、うれしいと思うものだ。
でも、それはぼくみたいな卑怯者には、あってはならない。
「ごめんね、隼人。困らせて……やっぱ、ぼく、変みたい……。駄目だな、調子悪いと!」
はははと声だけ笑っみせても目から次々に生暖かい雫があふれてきて、笑顔は引きつるばかり。
「本当に……ごめん」
そうして彼の腕を振り切って家の中へ駆け込んだ。鍵を閉め、カーテンを引き、二階にある部屋まで猛ダッシュする。
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