ポメ・ポメ・パニック!〜犬猿幼なじみとあま〜い主従関係!?〜

鶴機 亀輔

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第8章

小さな友だちVS犬猿幼なじみ!?3

 二本目は主人公の幼稚園児が家族や友だちと一緒に摩訶不思議な敵と戦うギャグファンタジーだ。見終わった記念にパンフレットを買った。映画館の近くにあったカフェに入り、健太くんはクリームソーダ、僕はアフォガートを頼んだ。

「すみません、渉さん。子どもっぽいアニメ映画に付き合わせてしまって」

「ううん、先輩方の熟練の演技を聞けたし、何より小学生の頃を思い出して楽しかったよ。健太くんは楽しめた?」

「はい、とても。こうやって家族以外の人と出かけるのは本当に久々のことなのでテンションが上がってます」

 彼は、笑みを浮かべながら、シュワシュワ泡を出している黄緑色の炭酸飲料をストローで吸った。

 白いストローを口から出し、透明なグラスいっぱいに入れられた氷たちをかき混ぜながら、急にさみしげな目つきをして目線を下へやる。

「明日も、明後日も渉さんと一日中、一緒にいられたらいいのにな」

「えっ?」

「いえ、なんでもありません! クリームソーダ、すごく、おいしいです」

 取りつくろうように笑う彼の姿に胸がヒリヒリ痛んだ。

 同い年で同じ学校にいれば、平日も健太くんとたくさん話せたかもしれない。

 ストレスで犬になることはあっても、魔法も、超能力もない世界じゃ小学生の子どもに変身できないんだ。

 ぼくは声優として働いているヒューマントランスフォーマーの高校生で、彼は仮契約をしている小学生のマスター。その事実は変えられない。

 そして友だちの少ないぼくが健太くんにできることなんて、たかが知れている。

「じゃあさ、また、ここでお茶を飲んだり、映画を見に行ったりしようよ」

 提案すると健太くんはテーブルの上に置いた両手を、小刻みに震わせた。

「いいんですか?」

「もちろんだよ。持ってるお金少ないし、レッスンや舞台、声優の仕事が入ると遊びに行けないけど、それ以外のときは出かけよう。ウィンドウショッピングなんかもしたり、夏はプールへ行って、冬にはスキーなんかもありじゃない!?」

「ぜひ行きたいです! 父にも、いろいろ相談してみます」

 ひまわりの花のような笑顔が見れて、ほっと安心した。

「うん。三上さんに相談したり、あらかじめ言っておけば、きっといろんところへ行けるよ。まあ……お互い学生だから勉強とか宿題、テストなんかもあるけどね」

「ちょっと、その話は、なしですよ。せっかくのいい気分が台無しになっちゃいます!」

「ごめん、ごめん」

 謝りながら、熱々のコーヒーをかけて、とけたアイスクリームを口にする。

 新しいお客さんがやってきて、店員さんが出入り口へ向かい、人数を尋ねる。

「四人です」

 聞き覚えのある声に、ぼくは身体を固まらせた。

「四名様ですね。それでは、お席へご案内します」

 クラシック音楽がかかった店内は、日曜の午後だから人が多い。女の人たちや男女のカップルの話し声がしてザワザワしている。

 犬ならまだしも人間の状態じゃ、店員さんの靴音が、どこへ向かっているかを聞き分けられない。

「こちらの席でよろしいでしょうか?」

 出入り口で聞こえた女性店員さんの声が真後ろからして、「ありがとうございます!」と明るい女の子の声がする。

 いや、声質が似ているだけの人かもしれないし、意識し過ぎだよねと白いカップを木のお盆へ置いた。

「隼人、おまえマジで動物なら、なんでも好きなのな」

「ケースケの言う通りだよ。このまま一日、水族館で過ごすのかと思っちゃった」

「でも圭祐くんや梨花ちゃんと一緒にお魚さんやペンギンさんを見られて、わたしはうれしかったな。隼人くん、ありがとう」

「もう舞ったら、お人好しなんだから。ホズミン調子乗らないでよね」

「ったく圭佑も、梨花も、文句ばっか言いやがって。少しはざきを見習えっつーの」

 なんで、隼人たちと池袋のカフェで居合わせるの!? どんだけ運が悪いわけ? 

 ぼくは、窓の横に横に置かれているメニュー表を顔の前で立てた。

「渉さん、どうしたんですか?」

「いや、ちょっと小腹が空いたから、ほかに何か食べようかなー? って」

 小声でしゃべり、返事をする。

 何も知らない健太くんは「ちょっと早いですけど、お夕飯を食べてもいい時間帯ですもんね。よければ、うちで食べていきませんか? 父にも電話しておきますよ」と訊いてくる。

 一刻も早くここから出たいけど、いきなり健太くんのおうちでご飯をいただくのは気が引ける。

「ありがと。でも、それじゃあ急な話で三上さんにも、ご迷惑をかけちゃうよ」

「父は迷惑だなんて思いませんよ。渉さんのことを大切な後輩として見ていますから」

 笑顔を貼りつけ、これからのこと考えていたら、「渉? おまえ、こんなところで何してるんだ?」

 ぼくは壊れたロボットみたいに首をひねり、後ろを振り返った。

「……隼人」

 背もたれ越しに隼人が顔をのぞかせている。

 聞き間違いであってほしかったのに、ぼくの耳は正確に片思いしている相手の声を聞き分けたのだ。

「えっ、犬伏くん!?」

 高坂さんの驚きを隠せない声がして、彼女も立ち上がる。

「おっ、犬伏。こんなところで奇遇だな」

「こんにちは」

 内村くんと、彼の彼女さんである田崎さんに声をかけられ、頬を引きつらせながら「こんにちは」と挨拶を返したのだ。
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