ポメ・ポメ・パニック!〜犬猿幼なじみとあま〜い主従関係!?〜

鶴機 亀輔

文字の大きさ
5 / 42
第2章

犬猿幼なじみ1

「なんだ、また遅刻かよ? 渉」

 聞き慣れた声にドキリとしながら振り返ると、黒っぽい大型バイクにまたがり、ぼくと同じ制服を着た男が黒いヘルメットを脱いだ。

「は、隼人!?」

 赤ちゃんのころからの幼なじみの登場にびっくりする。

 隼人は、自分がつけているのとはべつのヘルメットを投げ渡し、なんとかぼくは白いヘルメットをキャッチした。

「寝坊したのか? 遅刻常習犯」

「失礼な……今日は寝坊してないよ! ちょっと家でトラブルがあったから出るのが遅くなっただけ」

「どうだかな? 声優の仕事が多少入ってくるようになったら、学生の本分である勉強も、まともにできなくなってるくせに」

 相変わらず嫌味な物言いをしてきて、頭にカチンと来る。

「それは、きみが口出しすることじゃないだろ! そもそも、きみだってバイトしてるし、何よりバイクを乗り回してるじゃないか。どうせブンブン鳴らして警察に捕まったりしてるんだろ!?」

「なんだよ、ブンブンって。暴走族か? おれはバイトやってても、いつも七割、八割のいい成績で行きたい大学も合格圏内。バイクも交通手段の一貫で、ちゃんと学校から許可もらってる。親父にちゃんとメンテしてもらってるし、改造車じゃありません。いつも安全運転なんで取得してから、ずーっとゴールド免許持ちです。はい、残念」

 口で勝てなくて悔しい思いをしていれば、隼人がサイドスタンドを立てて、ぼくのところまでやってくる。
 
「で、乗ってかないの?」

「~っ、乗せて……」

「んー、よく聞こえないな? もっと大きい声で言って」と意地の悪い笑みを浮かべて顔をのぞき込んできた。

 それだけで心臓が大きく跳ねる。

 今日もかっこいい幼なじみの姿に顔が熱くなるのを感じながらヤケクソ気味に返事をする。

「乗せてください、お願いします!」

「オッケー。その言葉、待ってた」

 するとすばやく手を取られ、エンジン音を立てているバイクのところまで連れて行かれる。

 隼人に他意はないとわかっているのに、心臓が太鼓のようにドンドンと力強い音を立て、ときめいてしまう。

 渡されたヘルメットをかぶり、手渡されたレザーグローブに手を通した。

 その間に隼人が普通自動二輪車にまたがる。

 後ろに乗り、彼が制服の上に羽織っているアースカラーのジャケットの上着のすそを握りしめた。

 突然、グリンと急に首を後ろを振り返ったりするから、思わずぎょっとする。

「いきなり振り返らないでよ! ヘルメットがぶつかるじゃん!?」

「あのなあ、そんなんじゃ振り落とされるって何十回も言ってるだろ!? もっと、しっかりつかまれっつーの!」

 そうして「こう!」と両手を取られて隼人の腰に抱きつく形にされてしまう。

 それだけで、ぼくの顔は火がボッと吹き出そうなくらいに熱くなった。フルフェイスのヘルメットをかぶってなかったら、隼人にこの顔をからかわれていただろう。

「だって、きみに抱きつくのは、いやなんだもん。男ふたりでバイクに乗るなんて暑苦しいし、むさ苦しいでしょ! それにきみ、いろんなものつけてて、においがすごいし」

「つまり俺が、すっげえ臭いってこと?」

「そうじゃないよ! でも……」

「あっそ。後、おまえ、全国のバイカーにけん売ってるからな。男同士でも普通に腰なんかに手ぇ置いたりしないと運転手がバランス取れないし、後ろに乗ってるやつは振り落とされるしで危ないんだよ。そんなこと言ってると置いてくぞ」

「あー、もう! ごめんね、わかった。学校までお願いします!」

 彼の腰に両手を添える。ピッタリくっつけわけじゃないけど、距離が近いから隼人の使ってる整髪料とか柔軟剤、制汗剤なんかのさわやかなシトラスのにおいと、隼人自身のいい香りがして胸が高鳴る。

「それじゃあ、行くぞ」

 スタンドを払い、ウインカーを右に出して、車が来てないのを確認してからバイクを発進させた。

 バイクが駐輪場に着くとサイドスタンドを立て「降りな」と合図をされる。

 バイクの左側へと降り、ヘルメットを外して両手に持つ。

 隼人はエンジンを切ってヘルメットを脱ぎ、両手のグローブを外した。

「それで何があったわけ? おじさんと、おばさんが喧嘩でもしたの?」

 借りたヘルメットを返しながら今朝の出来事を話す。

「お父さんが会社の仕事、うまくいかなくて、これからどうしようって三人で話してたんだ。それでバスに乗り遅れちゃった」

 形のいいまゆを器用に片方だけ上げて「なるほどね」とヘルメットを片づける。「おじさん、うちの親父と違って会社員だもんね。人間関係でつらくなる人、多いって聞くし。うつになったり、精神を病む人も増えてるって、うちのおふくろが言ってた」

「だからお母さんも『転職を考えて』って言ったんだ。お父さんは乗り気じゃないみたいだけど」

「当然じゃん。一家の大黒柱なんだから」

 トゲのある言い方にムッとする。それでも玄関までの道は一本しかない。わざわざ裏口へ回って玄関まで歩いてくる時間はない。

「おばさんが百貨店で正社員として働いていても、デパート自体が生き残るのが難しくなってるし。戦略立てなきゃ縮小を余儀なくされるかつぶれる業界だ。おじさんの転職先だって、すぐに見つかるとは限らないんだから悩むに決まってるだろ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

スウィート・リトル・バタフライ ──恋人のいる親友と唇を重ねる、秘密。

毬村 緋紗子
BL
エブリスタの〈学園BLコンテスト〉佳作受賞作品です。 【 恋人のいる親友と唇を重ねる、秘密── 】 生まれつき口元に、蝶の形の赤いあざのある幸成。 高2になって、クラスメイトになったバスケ部員の松下と親友になるが、いつしか唇を重ねる仲になってしまう。 けれど、松下には、彼女がいて──。 出口の見えない、トライアングル。 気付いた時には、ふたつのそれが絡まり合っていた……。 〈登場人物〉 ・遠野 幸成 (トオノ ユキナリ) 高2 人形めいた顔立ちの、大人しめ男子。 ・松下 涼佑 (マツシタ リョウスケ) 高2 茶色がかった髪の、存在も容貌も派手め男子。 勝ち気な負けず嫌い。 ・緒川 貴宏 (オガワ タカヒロ) 高2 バスケ部副キャプテン。 穏やかで、大人びた性格。 幸成を気にかけているうちに…。 ・中沢 梨絵奈 (ナカザワ リエナ) 高2 松下の彼女。 別クラス。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる(第12章終了しました)

ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。