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第2章
犬猿幼なじみ1
「なんだ、また遅刻かよ? 渉」
聞き慣れた声にドキリとしながら振り返ると、黒っぽい大型バイクにまたがり、ぼくと同じ制服を着た男が黒いヘルメットを脱いだ。
「は、隼人!?」
赤ちゃんの頃からの幼なじみの登場にびっくりする。
隼人は、自分がつけているのとはべつのヘルメットを投げ渡し、なんとかぼくは白いヘルメットをキャッチした。
「寝坊したのか? 遅刻常習犯」
「失礼な……今日は寝坊してないよ! ちょっと家でトラブルがあったから出るのが遅くなっただけ」
「どうだかな? 声優の仕事が多少入ってくるようになったら、学生の本分である勉強も、まともにできなくなってるくせに」
相変わらず嫌味な物言いをしてきて、頭にカチンと来る。
「それは、きみが口出しすることじゃないだろ! そもそも、きみだってバイトしてるし、何よりバイクを乗り回してるじゃないか。どうせブンブン鳴らして警察に捕まったりしてるんだろ!?」
「なんだよ、ブンブンって。暴走族か? 俺はバイトやってても、いつも七割、八割のいい成績で行きたい大学も合格圏内。バイクも交通手段の一貫で、ちゃんと学校から許可もらってる。親父にちゃんとメンテしてもらってるし、改造車じゃありません。いつも安全運転なんで取得してから、ずーっとゴールド免許持ちです。はい、残念」
口で勝てなくて悔しい思いをしていれば、隼人がサイドスタンドを立てて、ぼくのところまでやってくる。
「で、乗ってかないの?」
「~っ、乗せて……」
「んー、よく聞こえないな? もっと大きい声で言って」と意地の悪い笑みを浮かべて顔をのぞき込んできた。
それだけで心臓が大きく跳ねる。
今日もかっこいい幼なじみの姿に顔が熱くなるのを感じながらヤケクソ気味に返事をする。
「乗せてください、お願いします!」
「オッケー。その言葉、待ってた」
するとすばやく手を取られ、エンジン音を立てているバイクのところまで連れて行かれる。
隼人に他意はないとわかっているのに、心臓が太鼓のようにドンドンと力強い音を立て、ときめいてしまう。
渡されたヘルメットをかぶり、手渡されたレザーグローブに手を通した。
その間に隼人が普通自動二輪車にまたがる。
後ろに乗り、彼が制服の上に羽織っているアースカラーのジャケットの上着のすそを握りしめた。
突然、グリンと急に首を後ろを振り返ったりするから、思わずぎょっとする。
「いきなり振り返らないでよ! ヘルメットがぶつかるじゃん!?」
「あのなあ、そんなんじゃ振り落とされるって何十回も言ってるだろ!? もっと、しっかり掴まれっつーの!」
そうして「こう!」と両手を取られて隼人の腰に抱きつく形にされてしまう。
それだけで、ぼくの顔は火がボッと吹き出そうなくらいに熱くなった。フルフェイスのヘルメットをかぶってなかったら、隼人にこの顔をからかわれていただろう。
「だって、きみに抱きつくのは、いやなんだもん。男ふたりでバイクに乗るなんて暑苦しいし、むさ苦しいでしょ! それにきみ、いろんなものつけてて、においがすごいし」
「つまり俺が、すっげえ臭いってこと?」
「そうじゃないよ! でも……」
「あっそ。後、おまえ、全国のバイカーに喧嘩売ってるからな。男同士でも普通に腰なんかに手ぇ置いたりしないと運転手がバランス取れないし、後ろに乗ってるやつは振り落とされるしで危ないんだよ。そんなこと言ってると置いてくぞ」
「あー、もう! ごめんね、わかった。学校までお願いします!」
彼の腰に両手を添える。ピッタリくっつけわけじゃないけど、距離が近いから隼人の使ってる整髪料とか柔軟剤、制汗剤なんかのさわやかなシトラスのにおいと、隼人自身のいい香りがして胸が高鳴る。
「それじゃあ、行くぞ」
スタンドを払い、ウインカーを右に出して、車が来てないのを確認してからバイクを発進させた。
バイクが駐輪場に着くとサイドスタンドを立て「降りな」と合図をされる。
バイクの左側へと降り、ヘルメットを外して両手に持つ。
隼人はエンジンを切ってヘルメットを脱ぎ、両手のグローブを外した。
「それで何があったわけ? おじさんと、おばさんが喧嘩でもしたの?」
借りたヘルメットを返しながら今朝の出来事を話す。
「お父さんが会社の仕事、うまくいかなくて、これからどうしようって三人で話してたんだ。それでバスに乗り遅れちゃった」
形のいい眉を器用に片方だけ上げて「なるほどね」とヘルメットを片づける。「おじさん、うちの親父と違って会社員だもんね。人間関係でつらくなる人、多いって聞くし。うつになったり、精神を病む人も増えてるって、うちのおふくろが言ってた」
「だからお母さんも『転職を考えて』って言ったんだ。お父さんは乗り気じゃないみたいだけど」
「当然じゃん。一家の大黒柱なんだから」
トゲのある言い方にムッとする。それでも玄関までの道は一本しかない。わざわざ裏口へ回って玄関まで歩いてくる時間はない。
「おばさんが百貨店で正社員として働いていても、デパート自体が生き残るのが難しくなってるし。戦略立てなきゃ縮小を余儀なくされるか潰れる業界だ。おじさんの転職先だって、すぐに見つかるとは限らないんだから悩むに決まってるだろ」
聞き慣れた声にドキリとしながら振り返ると、黒っぽい大型バイクにまたがり、ぼくと同じ制服を着た男が黒いヘルメットを脱いだ。
「は、隼人!?」
赤ちゃんの頃からの幼なじみの登場にびっくりする。
隼人は、自分がつけているのとはべつのヘルメットを投げ渡し、なんとかぼくは白いヘルメットをキャッチした。
「寝坊したのか? 遅刻常習犯」
「失礼な……今日は寝坊してないよ! ちょっと家でトラブルがあったから出るのが遅くなっただけ」
「どうだかな? 声優の仕事が多少入ってくるようになったら、学生の本分である勉強も、まともにできなくなってるくせに」
相変わらず嫌味な物言いをしてきて、頭にカチンと来る。
「それは、きみが口出しすることじゃないだろ! そもそも、きみだってバイトしてるし、何よりバイクを乗り回してるじゃないか。どうせブンブン鳴らして警察に捕まったりしてるんだろ!?」
「なんだよ、ブンブンって。暴走族か? 俺はバイトやってても、いつも七割、八割のいい成績で行きたい大学も合格圏内。バイクも交通手段の一貫で、ちゃんと学校から許可もらってる。親父にちゃんとメンテしてもらってるし、改造車じゃありません。いつも安全運転なんで取得してから、ずーっとゴールド免許持ちです。はい、残念」
口で勝てなくて悔しい思いをしていれば、隼人がサイドスタンドを立てて、ぼくのところまでやってくる。
「で、乗ってかないの?」
「~っ、乗せて……」
「んー、よく聞こえないな? もっと大きい声で言って」と意地の悪い笑みを浮かべて顔をのぞき込んできた。
それだけで心臓が大きく跳ねる。
今日もかっこいい幼なじみの姿に顔が熱くなるのを感じながらヤケクソ気味に返事をする。
「乗せてください、お願いします!」
「オッケー。その言葉、待ってた」
するとすばやく手を取られ、エンジン音を立てているバイクのところまで連れて行かれる。
隼人に他意はないとわかっているのに、心臓が太鼓のようにドンドンと力強い音を立て、ときめいてしまう。
渡されたヘルメットをかぶり、手渡されたレザーグローブに手を通した。
その間に隼人が普通自動二輪車にまたがる。
後ろに乗り、彼が制服の上に羽織っているアースカラーのジャケットの上着のすそを握りしめた。
突然、グリンと急に首を後ろを振り返ったりするから、思わずぎょっとする。
「いきなり振り返らないでよ! ヘルメットがぶつかるじゃん!?」
「あのなあ、そんなんじゃ振り落とされるって何十回も言ってるだろ!? もっと、しっかり掴まれっつーの!」
そうして「こう!」と両手を取られて隼人の腰に抱きつく形にされてしまう。
それだけで、ぼくの顔は火がボッと吹き出そうなくらいに熱くなった。フルフェイスのヘルメットをかぶってなかったら、隼人にこの顔をからかわれていただろう。
「だって、きみに抱きつくのは、いやなんだもん。男ふたりでバイクに乗るなんて暑苦しいし、むさ苦しいでしょ! それにきみ、いろんなものつけてて、においがすごいし」
「つまり俺が、すっげえ臭いってこと?」
「そうじゃないよ! でも……」
「あっそ。後、おまえ、全国のバイカーに喧嘩売ってるからな。男同士でも普通に腰なんかに手ぇ置いたりしないと運転手がバランス取れないし、後ろに乗ってるやつは振り落とされるしで危ないんだよ。そんなこと言ってると置いてくぞ」
「あー、もう! ごめんね、わかった。学校までお願いします!」
彼の腰に両手を添える。ピッタリくっつけわけじゃないけど、距離が近いから隼人の使ってる整髪料とか柔軟剤、制汗剤なんかのさわやかなシトラスのにおいと、隼人自身のいい香りがして胸が高鳴る。
「それじゃあ、行くぞ」
スタンドを払い、ウインカーを右に出して、車が来てないのを確認してからバイクを発進させた。
バイクが駐輪場に着くとサイドスタンドを立て「降りな」と合図をされる。
バイクの左側へと降り、ヘルメットを外して両手に持つ。
隼人はエンジンを切ってヘルメットを脱ぎ、両手のグローブを外した。
「それで何があったわけ? おじさんと、おばさんが喧嘩でもしたの?」
借りたヘルメットを返しながら今朝の出来事を話す。
「お父さんが会社の仕事、うまくいかなくて、これからどうしようって三人で話してたんだ。それでバスに乗り遅れちゃった」
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「だからお母さんも『転職を考えて』って言ったんだ。お父さんは乗り気じゃないみたいだけど」
「当然じゃん。一家の大黒柱なんだから」
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