ポメ・ポメ・パニック!〜犬猿幼なじみとあま〜い主従関係!?〜

鶴機 亀輔

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第2章

犬猿幼なじみ3

「おーい、ホズミン。きみのかわいいワンコくんが、ここに隠れてるよー! 教室まで送ってかなくていいんかーい!」

 大声で隼人を呼んだ高坂さんが僕の手を握り、「ほら、こっち、こっち!」と引っ張る。

 ほかの生徒の視線が集まって恥ずかしさのあまり、顔がほてる。

 隼人が怒っているのが目に見えているから一刻も早く、この場を去りたい!

「梨香、やめろよ。俺と渉は、そんなんじゃない。ただの幼なじみだ」

 その言葉に目の奥が熱くなり、唇を強くみしめ、我慢した。

「もう素直じゃないな、ホズミンは。好きな子にそんな態度とるとかマジでない……って、犬伏くん。どしたの? 具合、悪い!?」

 てんしんらんまんで男女両方から人気の高い高坂さんに悪意なんて、これっぽっちもない。たまたま、ぼくが委員会で一緒になったときに、ぼくが隼人に片思いをしているのに気づいて、以来喧嘩ばかりしている僕らの仲を取り持とうとしてくれている。すごく親切な子だ。

 でも、今は――その親切心が少しだけ、つらい。

「ちょっとお腹の調子が……」

「うっそ、大丈夫? 保健室、ついてくよ!?」と高坂さんが慌てる。

「梨香、それは恋人である穂積に任せたほうがいいんじゃないか?」

 立ち上がった内村くんの言葉を「僕たち、そんなんじゃないよ」と否定したいのに、のどが詰まって声が出ない。

「あ、そっか、それもそうだよね」と高坂さんが手をたたく。

 隼人も隼人で「えっ、俺?」と戸惑いの声をあげる。

「当たり前だろ、おまえの恋人なんだから。それぐらい彼氏の務めだろ。ちゃんと大切にしろよ」

「圭祐!」

「ケースケの言う通りだよ。気が利かなくて、ごめんねえ! じゃあ、犬伏くん。私、犬伏くんのクラスの子たちに話しとくから。少しベットで休んできな」

「うん……ありがとう」

 グイと腕を引かれて耳元で、こっそりと高坂さんが耳打ちをする。

「今日、朝礼で保健室の先生も留守にするでしょ。保健室が貸切状態になるから恋人同士でチューできるってチアの先輩から昔、教わったんだ。スリル満点で盛り上がること、間違いなしだよ! よかったら今日、ホズミンと試してみてね」

「あ、あの……」

 ぼくらが恋人だと誤解している高坂さんは、「キャー、言っちゃった!」とはしゃいで、階段を駆け上っていった。

 ふたりとも誤解してるけど、ぼくらは超がつくほどの不仲で、顔を合わせるといつも言い合いになる犬猿の仲。隼人は、ぼくを友だちと見ているかどうかも怪しい。嫌われている可能性すらある。

 何が原因かわからないけど、いつの間にか、僕と隼人がカップルだという話が横行しているのだ。

 ぼくらが付き合っているという誤情報を知らない人間はいなくて先生たちも冷やかしてくる。後輩にもうわさをされたり、女の子たちから小声で「男同士で付き合っているんだって」と笑われたりする。

 大抵の人は肯定的な反応をとったり、興味津々といった感じで野次馬根性を発揮しているかのどちらかだ。

 彼に長年片思いしているぼくは、いつ隼人の口から「そんなわけないでしょ、何言ってるの? 俺、ゲイでも、バイでもないし、女の子が好きなんだけど。マジで迷惑」と死刑宣告をされるのかヒヤヒヤもんだ。

 隼人が異性愛者なのか、それとも同性愛者なのか、はたまた男女問わず恋愛対象として見たり、二次元のキャラや無機物を思ったりするのかわからない。彼と恋話なんて一度もしたことがないんだから。

 ずるいぼくは隼人が強く否定しないことをいいことに、付き合っているという“うそ”を内心喜んでいる。

 でも現実で隼人と手をつないでデートをしたり、ハグして、キスをすることなんて不可能だ。

 それに卒業したら隼人は埼玉じゃなくて東京の大学に通うから、向こうでひとり暮らしをする。

 ぼくは埼玉の大学に通いながら東京でオーディションを受けたり、仕事をする。

 川越から池袋まで片道一時間もかからないけど大学で勉強する内容も、カリキュラムも違うし、行動範囲も違う。大学で友だちができたら自然と疎遠になるだろう。

 今のように毎日会えなくなる。

 カウントダウンはすでに始まり、一年を切っていた。

「……犬伏、犬伏!」

「ひゃい!?」

 まさか内村くんに声をかけられると思っていなかったぼくは、裏返った声で返事をしてしまう。

「顔色、めちゃくちゃ悪いぞ。気持ち悪いのか? トイレ行ってくる?」

「う、ううん。大丈夫! このまま保健室でちょっと寝てくる」

「あんま無理するなよ。なんなら早退とかも考えたほうがいいぞ」

 さすが彼女持ちで野球部の後輩たちから好かれている主将!

 内村くんの思いやりある言動に胸がジンと熱くなった。ほとんど会話をしたことのないぼくにも、気配りをしてくれるんだから本当、性格がいい人だなと感動する。

 これが隼人だったら「何、変なものでも拾い食いしたの?」と塩対応で終わりだもんな、なんてアホなことを考えて、ますます気分が落ち込んだ。

 心臓がチクチクと痛みを発し、「あっ、これはまずいな」と直感する。

「穂積。おまえ、突っ立ってないでさ。具合の悪い恋人を少しは、いたわれよ。荷物でも持ってやれ」

「えっ? あ、えっと……」
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