46 / 48
46
しおりを挟む
国家誓律法廷・円形主法廷。天蓋の光窓は黎明の白光を降ろし、護誓結界Ver.Ⅱが薄膜を張っている。三千の傍聴席には貴族議員、都市同盟代表、聖侍長老、平民評議員まで――帝国史上最大の公衆審問だ。正面の検察席に立つベルナールは黒法服の裾を整え、開廷槌を待った。
「本審問は魂拘束刑の正義と、その濫用の虚誓を裁く」
木槌が三度。厳粛な沈黙を切り裂くように弦楽の一小節が鳴り、証言台へカミラ=アドリエンヌが歩み出る。深紅の外套に翡翠の学苑徽章、指先には血判の跡。彼女が冥示の瞳を細めると、頭上の投影板へロベルタスの空席が映し出された。真紅の椅子、置き去りの宰相杖。議場に緊迫のざわめきが走る。
「被告不在。影を出席させましょう」
カミラが写本の大誓符を高く掲げる。頁が白炎を上げ、床石の中心へ影紋映写が収束――次の瞬間、石の継ぎ目が音もなく割れ、奈落の闇から黒鎖が噴き上がった。鎖は生き物のようにうねり、傍聴席の間を走り抜ける。恐怖の悲鳴が渦となり、白光の天蓋が揺れる。
ベルナールは驚愕で動けず、聖侍警邏が鎖を斬ろうとするが、刃は黒煙へ飲まれる。鎖の先端が宰相席へ向かい、空椅子を縛ると、深淵監の鼓動が床下で轟いた。カミラは鎖の一条を掴み、血で濡れた指を再び切り、呪符片を貼り付ける。
「――地獄の主を、ここへ」
呪句が落ちると鎖は激しく脈動し、カミラの身体を奈落へ引き込もうとする。彼女は自ら一歩踏み出し、暗孔へ落ちてゆく鎖の光を抱えた。傍聴席から悲鳴が上がる中、冥示の瞳は赤銀に燃え、最後の言葉が天蓋に刻まれた。
「虚誓を暴くには、闇の奥座へ灯を運ぶのみ――わたくしが案内しましょう」
厳粛は緊迫へ、緊迫は恐怖を孕み、恐怖の奥に挑戦の火が灯る。黒鎖は深淵へ垂れ、法廷と奈落を繋ぐ橋となった。鐘の音が途切れ、世界は息を潜める。虚誓審判、最終幕の扉が開いた。
「本審問は魂拘束刑の正義と、その濫用の虚誓を裁く」
木槌が三度。厳粛な沈黙を切り裂くように弦楽の一小節が鳴り、証言台へカミラ=アドリエンヌが歩み出る。深紅の外套に翡翠の学苑徽章、指先には血判の跡。彼女が冥示の瞳を細めると、頭上の投影板へロベルタスの空席が映し出された。真紅の椅子、置き去りの宰相杖。議場に緊迫のざわめきが走る。
「被告不在。影を出席させましょう」
カミラが写本の大誓符を高く掲げる。頁が白炎を上げ、床石の中心へ影紋映写が収束――次の瞬間、石の継ぎ目が音もなく割れ、奈落の闇から黒鎖が噴き上がった。鎖は生き物のようにうねり、傍聴席の間を走り抜ける。恐怖の悲鳴が渦となり、白光の天蓋が揺れる。
ベルナールは驚愕で動けず、聖侍警邏が鎖を斬ろうとするが、刃は黒煙へ飲まれる。鎖の先端が宰相席へ向かい、空椅子を縛ると、深淵監の鼓動が床下で轟いた。カミラは鎖の一条を掴み、血で濡れた指を再び切り、呪符片を貼り付ける。
「――地獄の主を、ここへ」
呪句が落ちると鎖は激しく脈動し、カミラの身体を奈落へ引き込もうとする。彼女は自ら一歩踏み出し、暗孔へ落ちてゆく鎖の光を抱えた。傍聴席から悲鳴が上がる中、冥示の瞳は赤銀に燃え、最後の言葉が天蓋に刻まれた。
「虚誓を暴くには、闇の奥座へ灯を運ぶのみ――わたくしが案内しましょう」
厳粛は緊迫へ、緊迫は恐怖を孕み、恐怖の奥に挑戦の火が灯る。黒鎖は深淵へ垂れ、法廷と奈落を繋ぐ橋となった。鐘の音が途切れ、世界は息を潜める。虚誓審判、最終幕の扉が開いた。
0
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた
桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、
婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が
部屋に閉じこもってしまう話からです。
自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。
※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。
追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!
ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。
陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!?
「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」
貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。
貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く!
そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――?
「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」
ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。
令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる