ミステリーサークルって言ってもあのミステリーサークルじゃない 〜花明かり編〜

あたまんなか

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花明かり編

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「あのね、お花見いかない?」


そう彼女が言ったのは三日前のことだ


「はぁ? 花見?」


おれは突然の誘いよりも違う意味で戸惑った


「ははぁーん…さては、なんかあるな?」


おれが彼女からの誘いを断るわけはない
なぜならおれは彼女に惹かれてるから…
それをわかっての誘いだってのはいくらおれがお人好しだとしてもわかる
だが、しかし、なぜ、今この時期に花見なんだ!?


「そもそも桜も散って新芽が出てるこの時期になんで花見なんか?ってこと!!」


おれを花見に誘う彼女は 佐倉《さくら》神子《みこ》 同じ大学に通う2年生 

ちなみに神子《みこ》の少し後ろで腕を組んでこっちを睨みつけてるのが峯岸《みねぎし》美鈴《みすゞ》

二人は同じサークルに所属する仲で同級生

そういうおれは 生瀬《いくせ》衆《しゅう》
神子に惚れた弱みにつけこまれ いいように扱われてる哀れな男
ことあるごとに身体を張らされることが多々あった
それもこれも高校までやってたラグビーのおかげと生まれついてのガタイの良さからきていることは一目瞭然だった

「絶対になんかあるだろっ!? 花もないのに花見とか正気の沙汰じゃねぇし!!」

きっとおれは断れない…そうだとわかっていても少しはもったいつけておかないと、おれの値打ちが下がるってもんだ
実際、神子に頼られるのはまんざらでもなかったし

「さぁっすがぁ~、衆《しゅう》にしては鋭い~!! そんだけわかってりゃ充分じゃん!!」

くっ、その気もないくせに… おれがそういうかわいい仕草に、いや神子に弱いの知っての仕打ち…

「しゃあーねーなぁ、いつだよ?いつ!?」

やった!っと飛び跳ねる神子に思わず内心(かわいい)と思ってる自分が情けなかった…

「今度の土曜日はどうだ?」

甘えとか、可愛気とかとは無縁のクールな声
ここからは美鈴《みすゞ》が話すようだ
クールアンドビューティーと形容するに相応しい美貌をもってはいるのだけど、どうも近寄りがたい雰囲気も兼ね備えてしまっている

おれは特に予定もなかったが やはりここはもったいをつけるように考えるフリをする

「ちょっと待てよ…その日は…」

鞄からスケジュール帳を取り出しパラパラめくる
もちろんスケジュールを確認するふりをするためだ


「どうやら特に予定は無いようだな、じゃあ土曜日の夕方にでも… 追って時間は連絡する」

はぁ? まだおれの演技も終わってないのに美鈴のやつ勝手に決めんなよ??

「いや、だから待てって、おれの予定まだ話してないだろ??」

予定のないのを見透かされたような気がしてもう一度スケジュールを確かめるフリをする

「いまさら去年のスケジュール帳になんの意味がある? よく見てみろ」

え…!? おれはスケジュール帳の表紙を確認した
そこにはなんと去年の西暦が… くっ、不覚!!
相変わらずすげぇー観察力してやがる…
鼻で笑うかのような美鈴の表情に思わずスケジュール帳で顔を覆ってしまう

「じゃ、また時間は連絡するね!」

神子からの連絡は嬉しいんだけど、ホントにこんな時しか連絡はこない

「せめてどんな理由があるかだけでも教えてくれんの?」

いきなりの花見の誘い それも花なんて咲いてないこの時期に…気にならないなんてなかった

「それは土曜日会った時に話すね! んじゃ土曜日よろしくぅー!!」

結局なんにもわからずじまいでおれはまた力仕事要員?用心棒?だかなんだかわからんが駆り出されることになった…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんで土曜日

前の日に神子《みこ》からお昼に〇〇橋のバス停らへんで待ち合わせようとの連絡があった
ってことは〇〇川の川沿いに咲く桜並木でお花見ってことになるのか… 
あそこは桜の回廊とも呼ばれていて5~600本の桜並木があった
まぁそれも桜の季節に行けば、の話しだが…

おれの用意するものはあるのか?との問いに大きなスコップがあればいいとのこと
いやいや、どのくらいの大きさか知らないが普通そんな大きなスコップなんて持ってないから

後は水筒にお茶でも入れてくれば?とのこと
食べ物は用意してくれるらしい もしかして神子の手作り弁当か!? 案外花見を楽しみにしてるおれがいた…

で、今おれは待ち合わせ場所のバス停にいる
約束の時間の20分も前に到着してしまったがおれは人を待たせるのが嫌いなタイプだからいつものことだ

小さなリュックにお茶とタオルと気を利かせてレジャーシートを小さく畳んで一枚、それとスコップ…
大きなって聞いてたけどとりあえず100均で園芸用のスコップでもあればいいだろと買ってきてた

「お待たせ! 早いね、衆《しゅう》!」

約束の時間より少し早くに着いた神子《みこ》と《美鈴《みすゞ》を見ておれは愕然とした…
二人とも工事現場や畑で使うような大きなスコップを肩からかけていた

「えっ…」 初夏のカラッとした暑さの中、おれはじんわり身体から汗が吹き出すのを感じていた…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「んじゃ行こっか!!」

神子《みこ》は3人揃ったのを確認すると早速出発だと声をあげる
川のせせらぎ、自然の匂い、ポカポカと陽気な天気! 神子は楽しそうにまるで遠足にでも行くかのようだ
とは言え、この神子はどこに行くにも毎度楽しそうにしてるのでこれもまたいつものことだった

それよりもおれが気になるのは…

「なぁ、理由《わけ》! なんで花見なのかの理由《わけ》教えてくれよー、あとスコップの理由も!!」

おれは手に持ってたスコップをリュックにしまい込んでいた こんなの見られたら何言われるかわかったもんじゃなかった

「そうだね、とりあえず順を追って話すね」

河原を歩きながら一つ一つ桜の木をスマホで写真を撮りながら神子《みこ》は話し始めた

「わたしと美鈴は、先々週だっけかな?、サークルの活動の一環でここらの伝承や民話なんかを調べてたんよ」

「あぁ、あのミステリーサークルのやつか」

神子《みこ》と美鈴《みすゞ》は大学でミステリーサークルを立ち上げた張本人だ
一体全体なにをやっているのかおれにはさっぱりなサークルだった

「そうそう でね、代々ここの土地に住んでるお年寄りの方々に話しを聞きに行く機会も多いわけ」

「でね、知ってるかな?田畑《たばた》さんておばあちゃん? その人のとこに話しを伺いに行ったんよ」

「田畑…? あぁあの呉服屋のばあさんか」

おれがよく利用するバス停の傍にその店があった
古びた外観からは歴史を感じさせる趣きすら発していた
店番に驚くほどの老婆が出ている時があったがきっとそれが田畑のばあさんなんだろう

「うん、そうそう! 田畑のおばあちゃん今年89歳でずっとこの土地で生まれ育ってきたから いろんな話しを聞かせてもらってる中でおもしろい思い出話しがあったの」

少しとっつきの悪そうな老婆に見えていたが神子は持ち前の人懐っこさでばあさんにも可愛がられていたんだろう

「へぇー、どんな?」

おれは神子の言う『おもしろい思い出話し』が今回の花見と関係があるだろうと感じた

「ここの桜の回廊についての話しなんだけど、この桜の回廊はね戦前から、なんなら大正時代くらいからあるみたいでね 田畑のおばあちゃんも親から聞いた話しらしいんだけど地元の人たちみんなで桜の苗木を持ち寄って植えたらしいのね」

「ここの川も昔はよく氾濫して その都度 村や畑に深刻な影響があって、大掛かりな治水工事を経て今の姿があるらしいんだけど、その際にたくさんの桜を植えたんだって」

それっぽい話しに少し驚きと感心があった
ちゃんと地域について学んでるんだと神子たちのサークル活動の実態を知ることができた

「ちゃんとサークル活動らしいことやってんだな」

「当たり前でしょー? なにそれ? いつも見てんじゃん!!」

「いや、見てるってか おれは巻き込まれてるだけだから!」

思わず突っ込まずにはいられなかった
神子《みこ》には興味があるがミステリーサークル自体におれは興味がなかったから

「でね、田畑のおばあちゃんが小さい頃に桜の樹の下に大切な宝物を埋めたんだって もう何を入れたのか覚えてないみたいなんだけど…、戦争があったりして宝物どころじゃなくなってたみたいで」

おれの突っ込みなんてなかったかのように話しを進める神子…

「戦争はホントに一瞬でなにもかもを奪ってしまう…生活も、命も、心でさえも…」

美鈴《みすゞ》がポツリと呟く…
サークルの活動の一環とは言え、土地にまつわる古い話しを拾っていれば戦争にまつわる話しもたくさん聞いてきたんだろう

「じゃあ今回はその田畑《たばた》のばあさんの宝探しが目的か? こんだけある桜全部調べんのか?」

神子《みこ》のやさしい気持ちはわかるが正直ゾッとした
桜の樹ってだけでも5~600本あるんだぞ…

「そこはそれ、わたしと美鈴には考えがあってのことだから! やみくもに桜の樹の根元を全部掘り返してくわけじゃなーい!!」

「だったらそれを教えろっての!!! 手伝ってって言う割にはなんにも教えてくんねーんだし!!」

「しょーがないなー、んとね、田畑のおばあちゃんの話しじゃ他の桜が咲いてないのにその桜だけは咲いてたことがあったんだって だからおばあちゃんはそれこそが目印だとその桜の樹の下に宝物を埋めたんだって」

「え? それって? そんなことあるのか? 狂い咲きとかだったとか?」

「それも考えた、気候のせいだとかで狂い咲きしたりとかね、だとしたら他の桜の樹も咲いてもおかしくなくない? だから狂い咲きは違うのかな?って思ったの」

「まぁ確かにそうかもな…じゃあ?」

だったらなんだ?っておれが思うか早いか美鈴《みすゞ》が答える

「10月桜…皆が持ち寄った苗の中にその桜の苗も混じってたんじゃないかってこと」

「10月桜!? なんだそれ?」

その聞き慣れない『桜』の名称に驚く

「年に二回咲く桜の品種 古くは江戸時代くらいからあるらしい…」

おれに説明してるのか独り言なのか美鈴《みすゞ》が解説していた

「つまり、その10月桜ってのを探してその根元を掘ればばあさんのお宝が見つかるかも?って算段か?」

「まぁ、衆《しゅう》にしては鋭い…かな?」

いたずらっぽく笑う神子
そんくらいおれにもわかるっての…

「に、してもだ、もう桜は散って葉っぱばっかでどれもこれも同じにしか見えん! こんなんでどうやって探すんだ? いっそ10月まで待てばいいんじゃないか?」

「それがね、もう10月桜は咲いてないの 花をつけなくなったんかもね… ここの桜の中にも何本かは栄養状態だったり、病気だったり、虫にやられて花を咲かせない樹もあるのね きっと10月桜もその中の一本になっちゃってるんじゃないかな」

「だったらお手上げだろ?! こんなどれも同じ樹のようにしか見えない中から素人のおれたちに探せるわけがない!」

「どうして衆はそう悲観的なの!? 田畑のおばあちゃんの喜ぶ顔が見たくないの?」

正直驚いても、あのばあさんが泣いても笑ってもそんなに表情に変化はないだろうな、とは思った

「じゃどーすんだよ!?」

「美鈴《みすゞ》っ!!!」

神子《みこ》は勢いよく美鈴に向かって右手で指さす!!

「じゃじゃーん グルグルレンズー!!」

ものまねだとしても圧倒的にクオリティが低かった
ノリでしてしまったことに後悔しているのか美鈴の顔は真っ赤になっていた

「そ! つまりグルグルレンズで葉を撮っていけば10月桜は見つかるってこと!!」

グルグルレンズってのは今話題の撮った被写体がなにかを検索できるカメラアプリだ!
なるほど、確かにそれなら少しの希望はあると思った
それでさっきから神子《みこ》はスマホで桜の樹を撮っていたんだ

「ふーん、それで、グルグルレンズで花見ってことですか…」

花見の謎は案外つまんないものだった

「なによー、つまんなそーだなー ちゃんとお弁当つくってきてんだよ? お花見気分もあれば楽しそうじゃん!!」

確かに、ここまできたらおれの楽しみは神子の手作り弁当しかなかった

「案外ね、わたしくじ運強いからそっこーで見つけたりしてー!!」

神子の根拠のない自信ほどかわいいものはなかった
おれもその場の勢いで『いけるかも?』なんて思えてた

最初の一本で見つかるかも?ってことは、最後の一本で見つかるかも?と対して変わらないってことに気づくのはもう少し時間が経ってからだった…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

各自グルグルレンズのアプリをダウンロードし、おれたちは桜の樹を一本一本撮影し調べていった
まぁまぁめんどうくさい上にキッチリ写真に葉や枝を収めようとすると手間がかかる
思ってた以上に時間がかかっていた

途中楽しみでもあった神子《みこ》のお弁当を食べたが大して進んでいない作業のことを考えるとゆっくり食事と言うわけにはいかなかった
てか、楽しみにしていた神子のお弁当?は、大っきなおにぎりのみだったが…
『ほんとは料理得意なんだけど』『今日は目的がちがうから』、とかなんとか言い訳してたのだけが印象に残っていた… まぁ、もし食レポするとしても ふつうのおにぎりだったと言うことしかできなかったろう
これに神子の愛情でも入っていたら例えインスタントであっても格別美味く感じるんだろうけど

10月桜探しもおそらく半分は過ぎたであろう頃には日も暮れかけていた 完全に日が落ちてしまったら撮影も困難になるかもしれない… 案外消費するバッテリー残量にも不安が募っていた

こんなんでホントに見つかるんだろうか?
仮にうまく検索できてなくて既に10月桜を通り過ごしてはいないだろうか? 焦る気持ちはおれを不安にさせていた

それでも神子《みこ》と美鈴《みすゞ》は あーでもないこーでもないと話しながら時おり桜の樹と一緒にお互いを撮り合いながら楽しんでるように見えた
その二人の仲睦まじい姿がおれの唯一の癒しだった

「おーい、ちゃんと撮ってんかー?」

ボーっと二人を眺めるおれに神子《みこ》は声をかける

「戦力なんだからお願いねー!」

「お、おう」

まるでおれの心の中を察するかのようなタイミング
いつも絶妙なタイミングで声をかけ、おれにハッパをかける その神子《みこ》の人心掌握術とも言えるかのような気の使い方におれは感心していた

『それにしても今日は無理かもな…』
日も暮れ始めると暗くなるまでが早いこの季節
どことなく諦めもチラホラ自分の中に出始めてたその時、おれの撮った桜の樹の写真に対する反応がいつもと違った

「えっ? これってもしかして…」

検索結果に映し出された「10月桜」の文字や画像
おれは何度もスマホの画面と桜の樹を見比べた

「あったぁーー!! あったあった!! これかもーー!!」

二人がおれの大きな声にビクッてなったのが見て取れた そこからの猛ダッシュは一瞬の出来事だった
二人は食い入るように画面を覗き込む!

「これって どの木!?」

神子《みこ》が興奮気味に聞いてくる

「神子《みこ》鼻の穴 鼻の穴」

美鈴《みすゞ》が冷静につっこむ
神子は興奮すると鼻の穴が広がるクセがあった

「これ、この樹だ!」

おれは今撮った樹を指さす

「ちょっと待って」

神子はスマホを取り出しなにやら調べてるようだった

「幹のまわりにどこかコブのようなものが二つあるかな? 田畑のおばあちゃんが憶えてた特徴なんよ」

神子の指示が出る前から樹を調べてた美鈴が、

「ある、ここに二つコブが並んでる」

おれと神子は桜の樹に駆け寄る
確かにそこにコブが二つ並んであった

「これだぁ… 後はおばあちゃんの宝物が出てくるかだな」

安堵の表情とはまさにこのことだと言わんがばかりの神子の表情におれも内心ほっとする

空はぼんやり白んできていた

「じゃあ掘ろっ! おばあちゃん子どもだったんだしそんなに深くはないはずだと思う」

神子《みこ》たちは少し手前の樹に立てかけてたスコップを取りに戻る
おれはリュックから100均のスコップを取り出しコブの真下辺りから掘り始めた
ただ、思ったより土が硬くおれのスコップでは役に立たなかった

「どうりで…スコップ持ってないわけだ…」

後ろから浴びせられる冷ややかな声
見つかりたくなかったけどこうなっては仕方なかった

「これっ!!」

グイッとおれにつきだされるスコップ
美鈴《みすゞ》が貸してやると言わんがばかりに

「壊さないよう優しくな どんな宝物かわかんないんだし 衆《しゅう》はなんでも力任せにやりそうだ」

ほんとに人使いが荒い美鈴… 優しい言葉かけてくれてもよさそうなもんだ…、そうは思ってもここまできたらおれにも興味が湧いてきていた
神子と二人して桜の樹の根元を少しずつ掘り返していく

《カチンッ》…

案外それはあっけなく見つかった… 小さな瓶のようだ
瓶の中にはなにやら封筒のようなものが入っており、ご丁寧に『田畑里子』なる名前が書かれているのが見えた

「開けてみないのか?」

「だめっ 名前書いてんだしおばあちゃんのってわかったんだからこのまま渡すの」

神子《みこ》らしいと思った どれだけ自分が大変な思いをしていても ばあさんの想いを最優先にする
おれなら開けて封筒の中身がなんなのかすぐにでも確認したかったろう それくらい許されるくらいの苦労はしてきたんだから

美鈴《みすゞ》は神子《みこ》から瓶を受け取ると綺麗に布で拭いて巾着の中へ丁寧にしまった

「それじゃ後はできるだけの現状復帰です がんばってください」

そういうとまたおれにスコップを渡す
おれと神子が大きなスコップで返した土を美鈴はおれの小さなスコップで丁寧にならす
三人で初めての共同作業って感じだった

「田畑《たばた》のおばあちゃん喜ぶかな?」

ウキウキしながら神子が話す

「それが一番の目的だ 喜んでもらわなきゃ困る」

美鈴の冷静さとの対比はいつ見てもおもしろい

「あの封筒なんだろね」

笑顔で大きなスコップをふるう神子、封筒の中身もばあさんの喜ぶ顔も楽しみなんだろう

「さあな」

クールさを装っていても満足そうな笑みを浮かべる美鈴《みすゞ》

「あー、お腹減った… 帰りにみんなでなんか食べない?」

「それはいい提案だ」

「あのー、おれも行っていいの?」

「もちろんでしょ? わたしみんなって言ったよ?」

「確かにそう聞こえた みんなだったら衆《しゅう》も入ってるだろ」

「だ、だよな」

キャッキャッと笑う神子と美鈴、こうして見ると普通の女の子だ
すっかり暗くなった辺りは月明かりにぼんやり照らされていた 

「今日って満月だったんだ」

そう言って空を見上げる二人の顔には満月がその白く柔らかい月明かりを照らしていた
自信と満足気な表情がおれにはまるで二人の顔が輝きを放ってるかのように見えた
それはまるで青々とした新芽たちを照らす『花あかり』のように…

「ほら、なにやってんの! 行くよー衆《しゅう》!!」


   ー ー ー ー ー ー ー ー


後日知ったことだが その瓶の中身は田畑のばあさんの未来の自分に宛てた手紙だったらしい
一寸先のことまでどうなるかわからなかった戦時中らしいエピソードだと思った…
どこまでいっても心温まるいい話だった


      おれの扱いをのぞけば…







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