台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた

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第2章

巻けば尊し白百合の花(中編)

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「ミライア様に相方ができたって本当ですかぁぁぁぁーっ!!」

 たいへんよく響く大きな声が、部屋の中を突き抜ける。
 あまりの大きさに、モチコは一瞬あたまがビリリと痺れた。

「お~。やっぱり来たねえ~」
「マルシャちゃん、今日も元気いっぱいね」

 マルシャと呼ばれた女の子は、ズンズンと足音を立てながらモチコに近づいてきた。
 え、なんか怒ってる?

 背はモチコと同じくらい小さい。
 赤い髪を耳の下でツインテールに結んでいるが、あまり長くない髪を無理やり結んでいるので、テールがものすごく短い。
 タマネギからちょっとだけ出た芽みたいだ。
 そのタマネギが付いた頭が、モチコの目の前にやってきた。
 
「あんたが……ミライア様の……。ふぅぅーーーん?」

 マルシャは赤色の瞳で、モチコのつま先から頭のてっぺんまでを、舐めるように見る。

「ミライア様の相方にしては、地味な女ねぇぇ」
「はい……なんか、すみません……」

 よくわからないが、とりあえず謝っておいた。
 地味なのは事実だし。

「マルシャちゃん、この子が今日から新しく入ったモチコちゃんよ」

 リサが紹介してくれたので、モチコはあらためて挨拶する。

「モチコです。よろしくお願いします」
「ふぅーん……。この白いおかっぱメガネがねぇぇ……」

 向こうから挨拶してくれる気はなさそうだ。
 なぜかいきなり嫌われているのだろうか。
 少なくとも、好意的な様子ではないように見える。
 困っていたモチコに、シズゥが耳打ちしてきた。

「マルシャはね~、ミライアファンクラブの熱心なメンバーなんだよ~」

 なるほど、そういうことか。
 どこの馬の骨かも分からない奴が突然ミライアの相方になったら、そりゃあ気に入らないこともあるだろう。
 なんかちょっと申し訳ない気もする……。

「おい! そこの白いおかっぱ!」
「あ……わ、私ですか?」

 名前では呼んでもらえないらしい。仕方ない。

「あんたはどんな魔法が得意なのよ?」
「えっ……えーと、あの……」
「あのミライア様の相方になれるんだから、さぞかしすんごぉい魔法が使えるんでしょうねぇぇ?」

 うわ。気まずい質問きた。
 でも嘘をつく訳にもいかないし……。
 どうにか上手く聞き逃してくれることを願って、モチコは徐々に小声になるように言った。

「魔法は、つかえ……な、ぃ……です」
「ぬぅわぁんですってぇぇぇぇーーっ!?」

 マルシャのたいへんよく響く大きな声があたりを揺らす。
 残念ながら、モチコの小声は聞き逃してもらえなかったらしい。仕方ない。

「どうして魔法を使えない女が、ミライア様の『アルビレオ』なのよぉぉぉーーっ!」
「あ、アルビ……?」
「どう考えてもおかしいでしょぉぉ! この白おかっぱぁぁぁぁぁーーっ!」

 マルシャは叫びながら、モチコの肩を両手で掴んで、ぐわんぐわんと揺らしてきた。
 聞いたことのない単語について尋ねようとしたが、それどころじゃない。
 力いっぱい揺らされて首がもげそうだった。これは仕方なくない。

「――やあみんな。なんだか賑やかだね」

 そのとき、凛とした声とともに、開いたままのドアからミライアが入ってきた。
 と同時に、モチコの肩が解放され、首に平和が戻ってくる。

「ミライア様ぁぁー! 今日も麗しいですぅー!」
「ありがと。マルシャも元気だね」
「はいっ! とっても元気ですぅー!」

 マルシャはミライアの近くへ駆け寄り、頭はペコペコ、お目目はキラキラ、お手手はガッチリと握ってミライアに祈りを捧げるポーズになっていた。
 これがミライアファンクラブの信仰心か……。

 ミライアはそんなマルシャに声をかけつつ、まっすぐモチコの前まで歩いてくる。

「モチコ、また会えてうれしい。今日からよろしく」

 ミライアは座っているモチコの頭に、ポンと手を乗せながらそう言った。

「あ、はい……。よろしくお願いします」

 また会えてうれしい――。
 モチコも同じ気持ちだったが、なんだか照れくさくて言葉にはできなかった。
 と、ミライアの背後で、マルシャがものすごい仏頂面をしているのが目に入る。

「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅ……。どうやら白おかっぱがミライア様のアルビレオなのは本当のようね……」
「あっ、あの。アルビレオって、なんでしょうか……?」

 モチコは今がチャンスだと思い聞いてみる。

(後編へ続く)
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