42 / 83
第3章
体調はFeel?隊長はCool。(前編)
台風への攻撃を終えてタワーに帰還すると、いつものようにリサとシズゥが迎えてくれた。
「ふたりともお疲れさま。台風はシグナル2まで弱まったわ」
「今日はモチコが撃ったから、モチコの手柄だよ」
ミライアがそう伝えると、ふたりから歓声が上がる。
「モッチーやるじゃん~。おりゃ~」
シズゥは言いながら、手に持ったコロッケをモチコの口に詰め込む。
が、コロッケが詰め込まれる直前に、モチコは口を閉じてガードした。
毎度同じ手でやられはしないぜ。
私だって成長しているのだ。
口に詰め込まれなかった代わりに鼻先に衝突したコロッケから、おいしそうな匂いがする。
モチコはコロッケを手で受け取り、ひとくちかじってみた。
さくり、と衣の軽い歯ごたえのあとに、口の中で広がるひき肉とじゃがいもの甘み。
この味は間違いない。
いつもの銀河屋のコロッケだ。
「おいしいです」
「台風の日のコロッケは格別だよねえ~」
コロッケをおいしく頂いたあと、しばらくして台風が上陸した。
リサとシズゥは街の被害状況などを確認するのに忙しく動き回っている。
そのあいだモチコはやることがなく、中央展望室の隅にあるテーブルで本を読むことにした。
モチコがテーブルの上で本を開くと、ミライアが声をかける。
「モチコは、空き時間によく本を読んでるよね」
「あ、はい。すきあらば文字を読みたい人種です」
「この本は……。『独楽の物理学』?」
「独楽っていう、回転するおもちゃの仕組みを解説した本です」
「へえ。変わったのを読むね」
「最近、色んなジャンルの本を読んでみようと思いまして。意外なところから、発見があるかもしれないですし」
ほうほう、とミライアはうなずいたあと、テーブルの横の床に座って、ホウキの手入れを始めた。
モチコも読書を始めることにする。
台風の雨風が強くなり、ざあざあ、という音がタワーを包み込んだ。
やっぱりこの音は、本を読むのにちょうどいい。
モチコはしばらくのあいだ読書に集中した。
雨風の音がだいぶ弱まってきた頃、ホウキをいじっていたミライアが顔を上げる。
「お、そろそろ台風が通り過ぎたかな?」
「そうですね」
モチコは答えながら、ミライアの顔をジッと見つめた。
先輩はいつも通りの声。
いつも通りの口調。
いつも通りの動きだ。
「モチコ、どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
ただジッと見つめてくるモチコに、ミライアが不思議そうに尋ねた。
それでもモチコは、ミライアの顔を見つめ続ける。
少し首をかしげながら見返してくるミライアの顔。
この顔も、いつも通りの先輩の顔。
――じゃない!
モチコはミライアの眉がいつもより少しだけ険しく、わずかに眉間にしわが寄っていたのを見逃さなかった。
「先輩、仮眠室に行きましょう。さあ、はやく」
「え? どういうこと?」
モチコは答えず、ミライアの身体を背中からぐいぐいと押して、下の仮眠室へと連れて行った。
いまの先輩はおそらく頭痛かめまいがある。
魔力酔いの症状だ。
平気そうな顔をしていても、高速で飛ぶのにあれだけの魔力を使ったあとの魔力酔いは、結構しんどいはず。
先輩が隠していても、私が見逃しませんっ!
「ああそうか。心配してくれたんだね。モチコにはバレてたか」
「はい。隠してもダメです。私がチェックしてますから」
そう言ってモチコは、ミライアを仮眠室のベッドに押し込んだ。
「モチコ、ありがと」
「いえ」
これくらいは相方として当然の務め。
むしろ先輩のお役に立てて嬉しいくらいだ。
ミライアを無事にベッドで休ませ、これでよしと一息ついたのも束の間。
ぐい、とモチコの手が急に引っ張られた。
ベッドに横になったミライアが、脇に立っていたモチコの手を掴んだのだ。
「じゃあ、モチコも一緒に寝てくれるの?」
「ふえっ!?」
ニヤリと口元に笑みを浮かべて言うミライアに、モチコは慌てて答える。
「わ、私は寝ません!」
「この前は一緒に寝てくれたのに?」
「う……。このあいだのは……。たまたまです!」
モチコは仮眠室のカーテンをバシャッと勢いよく閉めた。
ミライアを置いて、逃げるように展望室へ戻る。
あんな冗談を言えるくらいなら、少し寝れば元気になるだろう。
乱れた呼吸を整えるため、モチコはふぅ、と息を吐いた。
(中編へ続く)
「ふたりともお疲れさま。台風はシグナル2まで弱まったわ」
「今日はモチコが撃ったから、モチコの手柄だよ」
ミライアがそう伝えると、ふたりから歓声が上がる。
「モッチーやるじゃん~。おりゃ~」
シズゥは言いながら、手に持ったコロッケをモチコの口に詰め込む。
が、コロッケが詰め込まれる直前に、モチコは口を閉じてガードした。
毎度同じ手でやられはしないぜ。
私だって成長しているのだ。
口に詰め込まれなかった代わりに鼻先に衝突したコロッケから、おいしそうな匂いがする。
モチコはコロッケを手で受け取り、ひとくちかじってみた。
さくり、と衣の軽い歯ごたえのあとに、口の中で広がるひき肉とじゃがいもの甘み。
この味は間違いない。
いつもの銀河屋のコロッケだ。
「おいしいです」
「台風の日のコロッケは格別だよねえ~」
コロッケをおいしく頂いたあと、しばらくして台風が上陸した。
リサとシズゥは街の被害状況などを確認するのに忙しく動き回っている。
そのあいだモチコはやることがなく、中央展望室の隅にあるテーブルで本を読むことにした。
モチコがテーブルの上で本を開くと、ミライアが声をかける。
「モチコは、空き時間によく本を読んでるよね」
「あ、はい。すきあらば文字を読みたい人種です」
「この本は……。『独楽の物理学』?」
「独楽っていう、回転するおもちゃの仕組みを解説した本です」
「へえ。変わったのを読むね」
「最近、色んなジャンルの本を読んでみようと思いまして。意外なところから、発見があるかもしれないですし」
ほうほう、とミライアはうなずいたあと、テーブルの横の床に座って、ホウキの手入れを始めた。
モチコも読書を始めることにする。
台風の雨風が強くなり、ざあざあ、という音がタワーを包み込んだ。
やっぱりこの音は、本を読むのにちょうどいい。
モチコはしばらくのあいだ読書に集中した。
雨風の音がだいぶ弱まってきた頃、ホウキをいじっていたミライアが顔を上げる。
「お、そろそろ台風が通り過ぎたかな?」
「そうですね」
モチコは答えながら、ミライアの顔をジッと見つめた。
先輩はいつも通りの声。
いつも通りの口調。
いつも通りの動きだ。
「モチコ、どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
ただジッと見つめてくるモチコに、ミライアが不思議そうに尋ねた。
それでもモチコは、ミライアの顔を見つめ続ける。
少し首をかしげながら見返してくるミライアの顔。
この顔も、いつも通りの先輩の顔。
――じゃない!
モチコはミライアの眉がいつもより少しだけ険しく、わずかに眉間にしわが寄っていたのを見逃さなかった。
「先輩、仮眠室に行きましょう。さあ、はやく」
「え? どういうこと?」
モチコは答えず、ミライアの身体を背中からぐいぐいと押して、下の仮眠室へと連れて行った。
いまの先輩はおそらく頭痛かめまいがある。
魔力酔いの症状だ。
平気そうな顔をしていても、高速で飛ぶのにあれだけの魔力を使ったあとの魔力酔いは、結構しんどいはず。
先輩が隠していても、私が見逃しませんっ!
「ああそうか。心配してくれたんだね。モチコにはバレてたか」
「はい。隠してもダメです。私がチェックしてますから」
そう言ってモチコは、ミライアを仮眠室のベッドに押し込んだ。
「モチコ、ありがと」
「いえ」
これくらいは相方として当然の務め。
むしろ先輩のお役に立てて嬉しいくらいだ。
ミライアを無事にベッドで休ませ、これでよしと一息ついたのも束の間。
ぐい、とモチコの手が急に引っ張られた。
ベッドに横になったミライアが、脇に立っていたモチコの手を掴んだのだ。
「じゃあ、モチコも一緒に寝てくれるの?」
「ふえっ!?」
ニヤリと口元に笑みを浮かべて言うミライアに、モチコは慌てて答える。
「わ、私は寝ません!」
「この前は一緒に寝てくれたのに?」
「う……。このあいだのは……。たまたまです!」
モチコは仮眠室のカーテンをバシャッと勢いよく閉めた。
ミライアを置いて、逃げるように展望室へ戻る。
あんな冗談を言えるくらいなら、少し寝れば元気になるだろう。
乱れた呼吸を整えるため、モチコはふぅ、と息を吐いた。
(中編へ続く)
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています