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第3章
私のスペシャル(中編)
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今日は台風もなく、穏やかなまま夜を迎えられそうだ。
夕方になると、台風の見回りをしていた赤組が戻ってきて、モチコたちと合流した。
4人のアルビレオとモチコが、ふたたび空の上で集まる。
そこでモチコは、みんなが飛ぶ姿を見せてもらった。
ひとくちにホウキで飛ぶといっても、色々な飛び方があることを知る。
ピコットはとにかく超馬力だ。
普通はホウキの後ろに人を乗せるとあまりうまく飛べない。
コントロールが鈍ったり、スピードが落ちたりする。
だが、ピコットは全く影響を感じさせなかった。
人や荷物をホウキで運ぶ必要があるときは、ピコットの出番らしい。
なぜかチャンチャルが自慢気に話すのを聞いたところによると、ピコットのホウキの積載量はかなりのものだ。
必要とあれば船の牽引とかもできるらしい。すごっ。
ちなみに、ミライアがホウキにモチコを乗せられるのは、あの並外れた超スピードがなせる業なので、それはまた別の意味で規格外だといえる。
チャンチャルは、先ほど見たとおりだ。
体幹の強さを活かしたアクロバティックな飛び方。
ついさっきなんて、片足でホウキの上に立っていた。
サーフィンで波に乗るように弧を描いて飛ぶ姿は、無邪気に飛び跳ねる子供のようにも見えてかわいい。
アリサ隊長は、正確無比なコントロールが際立っていた。
360度、狙った方向へ正確に飛ぶ。
かなりスピードが出た状態からでも、ピタリと急停止して静止できる。
重力や慣性の影響を全く受けないかのような不思議な飛び方で、無駄を感じさせない洗練された動きだった。
わずかな隙間を縫って正確に飛び、本気を出せば1センチ単位でコントロール出来るらしい。
最後のマルシャは、いわゆる優等生タイプだった。
他のメンバーのような突出した部分はないが、全てにおいてバランスよく平均以上の能力を発揮できる。
それだけ聞くと、個性がなく目立たないようにも感じるかもしれない。
だが、実際に飛ぶ姿を見れば、そんな考えは吹き飛ぶだろう。
バランスが良いということは、この上ない強みになるのだと思い知らされた。
その飛び方は、質実剛健。とにかく何をやらせてもバシッと決まる。
先日から「カッコいい姿を見せる」と意気込んでいたマルシャだが、本当にその言葉どおり、カッコ良かった。
気持ちよく空を飛ぶ姿をイメージしようとしたら、多くの人がマルシャのような飛び方を思い浮かべるのではないだろうか。
「うーん。それぞれ違った飛び方で、みなさん素晴らしいですね」
「だねっ。みんなスペシャルだよっ」
モチコが感想を漏らすと、ピコットがそう言った。
「みなさん本当にスペシャル過ぎて、魔法の使えない自分は役立たずです……」
モチコは半ばひとりごとのようにつぶやく。
無意識に、ため息まじりの言葉になった。
みんなのすごい飛び方を見て、ちょっと自信が無くなりかけていたせいだ。
そんなモチコの様子を見てか、ピコットが声をかける。
「たしかにっ。魔法が使えないのはモチコちゃんだけだねっ」
「うぐぅ……!」
フォローかと思いきや、少しもフォローになっていなかった。
モチコの心に残されていたわずかな自信が、きゅうっと音をたてて縮んでいく。
もともと無表情なモチコの顔が、より完璧な無になった。
そのとき、少し離れたところを飛んでいたチャンチャルが、ものすごい勢いですっ飛んできた。
ピコットの真横にくっつきそうなほど近づくと、何度もピコットに向けて必死にウインクする。
何の合図かは分からないが、ピコットには伝わったらしい。
直後、慌てた様子でピコットがモチコに声をかけた。
「モチコちゃんごめんっ。さっきのは違うくてっ」
「……え?」
「わたしが本当に言いたかったのは『君もスペシャル』だってことだよっ」
「……私も、スペシャル……?」
半信半疑でモチコがつぶやくと、チャンチャルが補足してくれた。
「えっとね、モチコちゃん! みんな得意なことを活かしているけど、それぞれ苦手なこともあるんだよって話!」
「苦手なこと?」
「私はホウキの細かいコントロールが出来ないし、ピコさんはスピードを出すのが苦手!」
「そうなんだ……」
「モチコちゃんは魔法を使うのが苦手かもしれないけど、そこは一旦置いといて、得意なことを活かすのはどうかな!」
その言葉にはっとする。
みんなの飛び方を思い返してみると、人それぞれ、たしかに得意不得意があることが分かる。
長所を活かして欠点をカバーしているのだ。
そういう個性の活かし方はできないだろうか。
魔法が使えないという最大の欠点があるけれども、長所でそれをカバーする方法があるかもしれない。
私もスペシャル、そういうことか。
「私も……、私のスペシャルを見つけたい……!」
意図せずに口から出たその言葉は、モチコの心の叫びだった。
突然、チャンチャルがピコットのホウキに飛び乗る。
そして、モチコをぎゅうと後ろから抱きしめた。
溢れた想いを言葉の代わりに伝えようとするような、熱い抱擁だった。
モチコはしばらくのあいだ、ホウキの上でピコットとチャンチャルにサンドイッチにされていた。
思いのほかチャンチャルが強く抱きしめるので、ほんのちょっとだけ痛かったけれど、それ以上にあたたかい。
後ろに2人乗せても、ピコットのホウキは全くものともせず、滑らかに飛び続けていた。
「うおぉぉぉーい! なんであんた達は、空の上で仲良し大会をやってんのよ!」
(後編に続く)
夕方になると、台風の見回りをしていた赤組が戻ってきて、モチコたちと合流した。
4人のアルビレオとモチコが、ふたたび空の上で集まる。
そこでモチコは、みんなが飛ぶ姿を見せてもらった。
ひとくちにホウキで飛ぶといっても、色々な飛び方があることを知る。
ピコットはとにかく超馬力だ。
普通はホウキの後ろに人を乗せるとあまりうまく飛べない。
コントロールが鈍ったり、スピードが落ちたりする。
だが、ピコットは全く影響を感じさせなかった。
人や荷物をホウキで運ぶ必要があるときは、ピコットの出番らしい。
なぜかチャンチャルが自慢気に話すのを聞いたところによると、ピコットのホウキの積載量はかなりのものだ。
必要とあれば船の牽引とかもできるらしい。すごっ。
ちなみに、ミライアがホウキにモチコを乗せられるのは、あの並外れた超スピードがなせる業なので、それはまた別の意味で規格外だといえる。
チャンチャルは、先ほど見たとおりだ。
体幹の強さを活かしたアクロバティックな飛び方。
ついさっきなんて、片足でホウキの上に立っていた。
サーフィンで波に乗るように弧を描いて飛ぶ姿は、無邪気に飛び跳ねる子供のようにも見えてかわいい。
アリサ隊長は、正確無比なコントロールが際立っていた。
360度、狙った方向へ正確に飛ぶ。
かなりスピードが出た状態からでも、ピタリと急停止して静止できる。
重力や慣性の影響を全く受けないかのような不思議な飛び方で、無駄を感じさせない洗練された動きだった。
わずかな隙間を縫って正確に飛び、本気を出せば1センチ単位でコントロール出来るらしい。
最後のマルシャは、いわゆる優等生タイプだった。
他のメンバーのような突出した部分はないが、全てにおいてバランスよく平均以上の能力を発揮できる。
それだけ聞くと、個性がなく目立たないようにも感じるかもしれない。
だが、実際に飛ぶ姿を見れば、そんな考えは吹き飛ぶだろう。
バランスが良いということは、この上ない強みになるのだと思い知らされた。
その飛び方は、質実剛健。とにかく何をやらせてもバシッと決まる。
先日から「カッコいい姿を見せる」と意気込んでいたマルシャだが、本当にその言葉どおり、カッコ良かった。
気持ちよく空を飛ぶ姿をイメージしようとしたら、多くの人がマルシャのような飛び方を思い浮かべるのではないだろうか。
「うーん。それぞれ違った飛び方で、みなさん素晴らしいですね」
「だねっ。みんなスペシャルだよっ」
モチコが感想を漏らすと、ピコットがそう言った。
「みなさん本当にスペシャル過ぎて、魔法の使えない自分は役立たずです……」
モチコは半ばひとりごとのようにつぶやく。
無意識に、ため息まじりの言葉になった。
みんなのすごい飛び方を見て、ちょっと自信が無くなりかけていたせいだ。
そんなモチコの様子を見てか、ピコットが声をかける。
「たしかにっ。魔法が使えないのはモチコちゃんだけだねっ」
「うぐぅ……!」
フォローかと思いきや、少しもフォローになっていなかった。
モチコの心に残されていたわずかな自信が、きゅうっと音をたてて縮んでいく。
もともと無表情なモチコの顔が、より完璧な無になった。
そのとき、少し離れたところを飛んでいたチャンチャルが、ものすごい勢いですっ飛んできた。
ピコットの真横にくっつきそうなほど近づくと、何度もピコットに向けて必死にウインクする。
何の合図かは分からないが、ピコットには伝わったらしい。
直後、慌てた様子でピコットがモチコに声をかけた。
「モチコちゃんごめんっ。さっきのは違うくてっ」
「……え?」
「わたしが本当に言いたかったのは『君もスペシャル』だってことだよっ」
「……私も、スペシャル……?」
半信半疑でモチコがつぶやくと、チャンチャルが補足してくれた。
「えっとね、モチコちゃん! みんな得意なことを活かしているけど、それぞれ苦手なこともあるんだよって話!」
「苦手なこと?」
「私はホウキの細かいコントロールが出来ないし、ピコさんはスピードを出すのが苦手!」
「そうなんだ……」
「モチコちゃんは魔法を使うのが苦手かもしれないけど、そこは一旦置いといて、得意なことを活かすのはどうかな!」
その言葉にはっとする。
みんなの飛び方を思い返してみると、人それぞれ、たしかに得意不得意があることが分かる。
長所を活かして欠点をカバーしているのだ。
そういう個性の活かし方はできないだろうか。
魔法が使えないという最大の欠点があるけれども、長所でそれをカバーする方法があるかもしれない。
私もスペシャル、そういうことか。
「私も……、私のスペシャルを見つけたい……!」
意図せずに口から出たその言葉は、モチコの心の叫びだった。
突然、チャンチャルがピコットのホウキに飛び乗る。
そして、モチコをぎゅうと後ろから抱きしめた。
溢れた想いを言葉の代わりに伝えようとするような、熱い抱擁だった。
モチコはしばらくのあいだ、ホウキの上でピコットとチャンチャルにサンドイッチにされていた。
思いのほかチャンチャルが強く抱きしめるので、ほんのちょっとだけ痛かったけれど、それ以上にあたたかい。
後ろに2人乗せても、ピコットのホウキは全くものともせず、滑らかに飛び続けていた。
「うおぉぉぉーい! なんであんた達は、空の上で仲良し大会をやってんのよ!」
(後編に続く)
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