51 / 83
第3章
私のスペシャル(後編)
「うおぉぉぉーい! なんであんた達は空の上で仲良し大会をやってんのよ!」
マルシャが、3人乗りでぎゅうぎゅうになっているピコットのホウキを見て言った。
するとチャンチャルが、ホウキの上で立ち上がる。
「あ! マルシャちゃんも一緒にやりたかった?」
にしし、と笑ったチャンチャルは、マルシャのホウキに飛び移ろうとする。
「ちー! こっちには来なくていいからぁぁぁ!」
「えー! 遠慮しなくていいのに!」
マルシャが叫びながら離れていったので、チャンチャルは仕方なく後ろの空中に向かってバク転でジャンプした。
そのまま空中でくるりと回ったかと思うと、いつのまにか自分のホウキに乗って飛び始めた。
どうやらチャンチャルのホウキはピコットが預かっていたようで、バク転をしながら受け取ったらしい。
「うわお。ちーちゃん、本当にすごい運動神経だね」
モチコは感心しながらチャンチャルを見る。
ホウキの上に器用に立つその身体は細いけれど、しなやかな筋肉のついた手足だった。
体幹が強いらしく、綱わたりとかも余裕で出来るらしい。まるで猫のようだ。
そしてスカートが短いっ。
ちょっとホウキを傾けて飛んだら、見えちゃいそうだけど。
中にショートパンツでも履いているのかな。
そんなことを考えながら、チャンチャルの太ももを眺める。
スカートから生えたすらりとした脚は、薄く日焼けしていた。
「ちーちゃんは日焼けしてるけど、マルシャは肌が白いね。朝番はみんな日焼けしそうなのに」
「モチコちゃん! 朝番が使う風避けのスクロールには、日焼け防止の魔法も入ってるんだよ!」
「あ、そうなんだ」
マルシャがふたたび近づいて来て言う。
「フライト中は日焼けなんてしないわよ。私は休日でも自分でスキンケアしてるだけ」
「なるほど」
「ちーが日焼けしているのは、休みの日にずっと外にいるからでしょ」
「そのとおり! バレたか!」
わいわいと話していると、アリサ隊長から任務終了の声がかかる。
気づけばもう太陽が落ち沈みかけていた。
各自、ホウキをタワーの方角へ向けて帰り始める。
そこで、モチコはチャンチャルに聞こうと思っていたことを思い出した。
「そういえば、ちーちゃんに聞きたいことがあるんだけど……」
「なになに! なんでも聞いて!」
「ちーちゃんって、恋愛小説が好きなんだよね?」
「恋愛小説……? あー、うん! 好き好き!」
チャンチャルはこくこく、とうなづきながら答えた。
「私も読んでみたいんだけど、何かおすすめの本はないかな?」
「うーん! 色々あるけど、どんなのがいいかな? 純愛ものとか、略奪愛とか……! あ、憧れの先輩シチュもあるけど!」
なんでそこで先輩が出てくるねん!
と思ったが、まあそれは置いておく。
「恋愛小説って全然読んだことないから、定番みたいな感じのやつがいいかな」
「ふむふむ! 定番、定番……っと」
チャンチャルは少し考えたあと、何かをひらめいたように顔を上げる。
「そうだ! そしたら今度マルシャちゃんも入れて3人でお出かけしよっか!」
「え?」
「本屋さんで一緒に見ながら決めるのがいいと思う!」
「なるほど、いい案だね。そうしよう」
「……って、うおぉぉぉいぃ! なんで勝手に私も付き合わされてんのよぉぉ!」
マルシャがたいへん良く響く大きな声でツッコミを入れた。
まあ当然の抗議だけども。
「みんなで一緒にお出かけしたいじゃん! マルシャちゃんと一緒に行きたいなー!」
「えぇぇ……」
チャンチャルが屈託のない笑顔で言うので、マルシャは戸惑っている。
そこで、モチコも加勢することにした。
「一緒にお買い物しようよおー。私もマルシャと一緒に行きたいなあー」
モチコ渾身の演技でおねだりしてみる。
だが顔は無表情なので、マルシャに効いたかは分からない。
なんか棒読みっぽくなったけど、一緒に行きたい気持ちは本当だ。
「……ったく、しょうがないわねぇぇ。ちーと白おかっぱだけじゃ心配だし、ついてってあげるわよ」
「やったー!」「やったー」
おねだり成功。私の演技力もなかなかだな。
そんなこんなで、わいのわいのと盛り上がる3人。
そんな後輩たちを、アリサとピコットは微笑ましく見守っていた。
ホウキの進む先にタワーが見えてきた。
これで今日の見学会も終了だ。
少し名残惜しい気持ちでいると、マルシャが真面目な顔で尋ねてきた。
「白おかっぱ、今日は何か収穫はあったの?」
「うん。みんなの飛び方を見て、すごくヒントが得られた」
「そう。じゃあ今後を楽しみにしておくわ。ほんのちょっとだけど」
「ふふ。マルシャの飛び方もカッコ良かったよ」
そう伝えると、マルシャはぷいっと顔を逸らして――。
「……まあ、そんなの当然よ」
それだけ答えて、向こうに飛んで行ってしまった。
照れ隠しをするマルシャが可愛くて、モチコは思わずチャンチャルと目を合わせる。
可笑しそうに笑うチャンチャル。
それを見て、モチコも一緒に心のなかで笑いながら、タワーへの帰路を進むのだった。
マルシャが、3人乗りでぎゅうぎゅうになっているピコットのホウキを見て言った。
するとチャンチャルが、ホウキの上で立ち上がる。
「あ! マルシャちゃんも一緒にやりたかった?」
にしし、と笑ったチャンチャルは、マルシャのホウキに飛び移ろうとする。
「ちー! こっちには来なくていいからぁぁぁ!」
「えー! 遠慮しなくていいのに!」
マルシャが叫びながら離れていったので、チャンチャルは仕方なく後ろの空中に向かってバク転でジャンプした。
そのまま空中でくるりと回ったかと思うと、いつのまにか自分のホウキに乗って飛び始めた。
どうやらチャンチャルのホウキはピコットが預かっていたようで、バク転をしながら受け取ったらしい。
「うわお。ちーちゃん、本当にすごい運動神経だね」
モチコは感心しながらチャンチャルを見る。
ホウキの上に器用に立つその身体は細いけれど、しなやかな筋肉のついた手足だった。
体幹が強いらしく、綱わたりとかも余裕で出来るらしい。まるで猫のようだ。
そしてスカートが短いっ。
ちょっとホウキを傾けて飛んだら、見えちゃいそうだけど。
中にショートパンツでも履いているのかな。
そんなことを考えながら、チャンチャルの太ももを眺める。
スカートから生えたすらりとした脚は、薄く日焼けしていた。
「ちーちゃんは日焼けしてるけど、マルシャは肌が白いね。朝番はみんな日焼けしそうなのに」
「モチコちゃん! 朝番が使う風避けのスクロールには、日焼け防止の魔法も入ってるんだよ!」
「あ、そうなんだ」
マルシャがふたたび近づいて来て言う。
「フライト中は日焼けなんてしないわよ。私は休日でも自分でスキンケアしてるだけ」
「なるほど」
「ちーが日焼けしているのは、休みの日にずっと外にいるからでしょ」
「そのとおり! バレたか!」
わいわいと話していると、アリサ隊長から任務終了の声がかかる。
気づけばもう太陽が落ち沈みかけていた。
各自、ホウキをタワーの方角へ向けて帰り始める。
そこで、モチコはチャンチャルに聞こうと思っていたことを思い出した。
「そういえば、ちーちゃんに聞きたいことがあるんだけど……」
「なになに! なんでも聞いて!」
「ちーちゃんって、恋愛小説が好きなんだよね?」
「恋愛小説……? あー、うん! 好き好き!」
チャンチャルはこくこく、とうなづきながら答えた。
「私も読んでみたいんだけど、何かおすすめの本はないかな?」
「うーん! 色々あるけど、どんなのがいいかな? 純愛ものとか、略奪愛とか……! あ、憧れの先輩シチュもあるけど!」
なんでそこで先輩が出てくるねん!
と思ったが、まあそれは置いておく。
「恋愛小説って全然読んだことないから、定番みたいな感じのやつがいいかな」
「ふむふむ! 定番、定番……っと」
チャンチャルは少し考えたあと、何かをひらめいたように顔を上げる。
「そうだ! そしたら今度マルシャちゃんも入れて3人でお出かけしよっか!」
「え?」
「本屋さんで一緒に見ながら決めるのがいいと思う!」
「なるほど、いい案だね。そうしよう」
「……って、うおぉぉぉいぃ! なんで勝手に私も付き合わされてんのよぉぉ!」
マルシャがたいへん良く響く大きな声でツッコミを入れた。
まあ当然の抗議だけども。
「みんなで一緒にお出かけしたいじゃん! マルシャちゃんと一緒に行きたいなー!」
「えぇぇ……」
チャンチャルが屈託のない笑顔で言うので、マルシャは戸惑っている。
そこで、モチコも加勢することにした。
「一緒にお買い物しようよおー。私もマルシャと一緒に行きたいなあー」
モチコ渾身の演技でおねだりしてみる。
だが顔は無表情なので、マルシャに効いたかは分からない。
なんか棒読みっぽくなったけど、一緒に行きたい気持ちは本当だ。
「……ったく、しょうがないわねぇぇ。ちーと白おかっぱだけじゃ心配だし、ついてってあげるわよ」
「やったー!」「やったー」
おねだり成功。私の演技力もなかなかだな。
そんなこんなで、わいのわいのと盛り上がる3人。
そんな後輩たちを、アリサとピコットは微笑ましく見守っていた。
ホウキの進む先にタワーが見えてきた。
これで今日の見学会も終了だ。
少し名残惜しい気持ちでいると、マルシャが真面目な顔で尋ねてきた。
「白おかっぱ、今日は何か収穫はあったの?」
「うん。みんなの飛び方を見て、すごくヒントが得られた」
「そう。じゃあ今後を楽しみにしておくわ。ほんのちょっとだけど」
「ふふ。マルシャの飛び方もカッコ良かったよ」
そう伝えると、マルシャはぷいっと顔を逸らして――。
「……まあ、そんなの当然よ」
それだけ答えて、向こうに飛んで行ってしまった。
照れ隠しをするマルシャが可愛くて、モチコは思わずチャンチャルと目を合わせる。
可笑しそうに笑うチャンチャル。
それを見て、モチコも一緒に心のなかで笑いながら、タワーへの帰路を進むのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。