台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた

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第3章

私のスペシャル(後編)

「うおぉぉぉーい! なんであんた達は空の上で仲良し大会をやってんのよ!」

 マルシャが、3人乗りでぎゅうぎゅうになっているピコットのホウキを見て言った。
 するとチャンチャルが、ホウキの上で立ち上がる。

「あ! マルシャちゃんも一緒にやりたかった?」

 にしし、と笑ったチャンチャルは、マルシャのホウキに飛び移ろうとする。

「ちー! こっちには来なくていいからぁぁぁ!」
「えー! 遠慮しなくていいのに!」

 マルシャが叫びながら離れていったので、チャンチャルは仕方なく後ろの空中に向かってバク転でジャンプした。
 そのまま空中でくるりと回ったかと思うと、いつのまにか自分のホウキに乗って飛び始めた。

 どうやらチャンチャルのホウキはピコットが預かっていたようで、バク転をしながら受け取ったらしい。

「うわお。ちーちゃん、本当にすごい運動神経だね」

 モチコは感心しながらチャンチャルを見る。
 ホウキの上に器用に立つその身体は細いけれど、しなやかな筋肉のついた手足だった。
 体幹が強いらしく、綱わたりとかも余裕で出来るらしい。まるで猫のようだ。

 そしてスカートが短いっ。
 ちょっとホウキを傾けて飛んだら、見えちゃいそうだけど。
 中にショートパンツでも履いているのかな。

 そんなことを考えながら、チャンチャルの太ももを眺める。
 スカートから生えたすらりとした脚は、薄く日焼けしていた。

「ちーちゃんは日焼けしてるけど、マルシャは肌が白いね。朝番はみんな日焼けしそうなのに」
「モチコちゃん! 朝番が使う風避けのスクロールには、日焼け防止の魔法も入ってるんだよ!」
「あ、そうなんだ」

 マルシャがふたたび近づいて来て言う。

「フライト中は日焼けなんてしないわよ。私は休日でも自分でスキンケアしてるだけ」
「なるほど」
「ちーが日焼けしているのは、休みの日にずっと外にいるからでしょ」
「そのとおり! バレたか!」

 わいわいと話していると、アリサ隊長から任務終了の声がかかる。
 気づけばもう太陽が落ち沈みかけていた。

 各自、ホウキをタワーの方角へ向けて帰り始める。
 そこで、モチコはチャンチャルに聞こうと思っていたことを思い出した。

「そういえば、ちーちゃんに聞きたいことがあるんだけど……」
「なになに! なんでも聞いて!」
「ちーちゃんって、恋愛小説が好きなんだよね?」
「恋愛小説……? あー、うん! 好き好き!」

 チャンチャルはこくこく、とうなづきながら答えた。

「私も読んでみたいんだけど、何かおすすめの本はないかな?」
「うーん! 色々あるけど、どんなのがいいかな? 純愛ものとか、略奪愛とか……! あ、憧れの先輩シチュもあるけど!」

 なんでそこで先輩が出てくるねん!
 と思ったが、まあそれは置いておく。

「恋愛小説って全然読んだことないから、定番みたいな感じのやつがいいかな」
「ふむふむ! 定番、定番……っと」

 チャンチャルは少し考えたあと、何かをひらめいたように顔を上げる。

「そうだ! そしたら今度マルシャちゃんも入れて3人でお出かけしよっか!」
「え?」
「本屋さんで一緒に見ながら決めるのがいいと思う!」
「なるほど、いい案だね。そうしよう」
「……って、うおぉぉぉいぃ! なんで勝手に私も付き合わされてんのよぉぉ!」

 マルシャがたいへん良く響く大きな声でツッコミを入れた。
 まあ当然の抗議だけども。

「みんなで一緒にお出かけしたいじゃん! マルシャちゃんと一緒に行きたいなー!」
「えぇぇ……」

 チャンチャルが屈託のない笑顔で言うので、マルシャは戸惑っている。
 そこで、モチコも加勢することにした。

「一緒にお買い物しようよおー。私もマルシャと一緒に行きたいなあー」

 モチコ渾身の演技でおねだりしてみる。
 だが顔は無表情なので、マルシャに効いたかは分からない。
 なんか棒読みっぽくなったけど、一緒に行きたい気持ちは本当だ。

「……ったく、しょうがないわねぇぇ。ちーと白おかっぱだけじゃ心配だし、ついてってあげるわよ」
「やったー!」「やったー」

 おねだり成功。私の演技力もなかなかだな。
 
 そんなこんなで、わいのわいのと盛り上がる3人。
 そんな後輩たちを、アリサとピコットは微笑ましく見守っていた。


 ホウキの進む先にタワーが見えてきた。
 これで今日の見学会も終了だ。

 少し名残惜しい気持ちでいると、マルシャが真面目な顔で尋ねてきた。

「白おかっぱ、今日は何か収穫はあったの?」
「うん。みんなの飛び方を見て、すごくヒントが得られた」
「そう。じゃあ今後を楽しみにしておくわ。ほんのちょっとだけど」
「ふふ。マルシャの飛び方もカッコ良かったよ」

 そう伝えると、マルシャはぷいっと顔を逸らして――。

「……まあ、そんなの当然よ」

 それだけ答えて、向こうに飛んで行ってしまった。
 照れ隠しをするマルシャが可愛くて、モチコは思わずチャンチャルと目を合わせる。

 可笑しそうに笑うチャンチャル。
 それを見て、モチコも一緒に心のなかで笑いながら、タワーへの帰路を進むのだった。
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