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第3章
ひざひざひざひざひざひざひざひざひざひざ(前編)
「よし、最速を目指そう」
お屋敷の図書館で、モチコはひとりつぶやいた。
ミライアみたいなセリフだが、空を猛スピード飛ぼうという訳ではない。
仕事をできるだけ早く終わらせよう、という意気込みだ。
今日はお屋敷での仕事の日。
ロビーの掃除は、先ほど気合いを入れてすでに終わらせた。
あとはなるべく早く書庫の整理を終わらせて、余った時間で魔窟の探索をしようという作戦だった。
ちなみに一応ティールームも覗いてみたが、奥様はいらっしゃらなかった。
ここで奥様とお会いして以来、いつかまたドアを開けたら奥様が現れるんじゃないかとドキドキしてしまう。
もちろん、奥様に会いたくないという訳では決してない。
ただ、恐れ多くてとにかく緊張するのだ……。
モチコはドアを開けて書庫の中へと入る。
「うわ、こりゃすごい」
ここで、本日一番の難関が訪れた。
今日はいつにも増して本が散らばっている。
ここ数日、奥様が書庫の本を大量に読んだようだ。
ただ、本のジャンルは偏っていた。
いつもの奥様なら、様々なジャンルを横断して読むので、いろんな本棚を行ったり来たりして格納する必要がある。
でも、今日はほとんど同じ本棚だけで済みそうだ。
奥様がいま興味があるのは、エネルギー資源に関する本のようだった。
とにかくこのジャンルを読みまくっている。
何かを調べているのだろうか?
「おりゃー。どっこいしょー」
まずは書庫に散らばった本を1か所に集めることにした。
たくさんの本を抱えて運ぼうとすると、小柄なモチコの背丈より、重ねた本の方が高くなってしまう。
モチコの顔が見えないので、本がひとりでに歩いているみたいになっていた。
少し大変だが、気合いでうんうんと唸りながら本を運んでいく。
やはり、すべてエネルギーに関する本だった。
昔はたくさん使われていた、石炭や石油について書かれたもの。
現代の基幹エネルギーであるマナについて書かれたもの。
小中学校でも習うマナの歴史について、大人向けに詳しく研究したものなど。
「うーん、どれも面白そうだな……」
ぱらぱらと本の中身を確認しながらつぶやく。
油断すると、どの本も読み耽ってしまいそうだ。
今日は最速を目指しているので、強い気持ちで誘惑を振り切って、作業を進めていく。
そんなときに限って、問題にぶちあたる。
「うぐっ……!?」
作業を進めていたモチコの手が止まった。
本の山のいちばん下から出てきたものを前にして、しばらく悩む。
『禁書』と書かれた札が張られた本。
しかも、そのシールはすでに破られ、封が解かれている。
なんならその本を縛っていたと思われる紐も、切れた状態で傍らに落ちていた。
「こ、これはまた、なんてものを……」
おそらく魔窟に保管されていた本だろう。
奥様がこの禁書の封を破いて読んでいたのは間違いないわけだが、果たしてモチコが読んでもいいのだろうか?
見たところ、魔導書という訳ではなさそうだ。
ごくり、とつばを飲み込んだモチコは、意を決してその本を開いた。
だって中身を見ないと分類できないし! (っていうか見たい)
中身をざっと見たところ、やはりこれもエネルギーに関する本のようだった。
石炭、石油、風力、水力、マナ……。
他の本でも見たような文字が並ぶ。
禁書といっても期待はずれか、と思ったそのとき。
モチコの目に見慣れない文字が飛び込んできた。
「e?」
それは、なんらかの記号として書かれていたと思う。
文脈から判断すると、未知のエネルギーを示す言葉のようだ。
マナとは違い、人間の身体を介さずに利用できる便利なものらしい。
2度の世界大戦のあと、北の王都が遷都してから半世紀以上が過ぎた。
そのあいだにこの国の魔導エネルギー技術は飛躍的な発展を遂げたが、こんなものは全く聞いたことがない。
なぜだろう、と考えかけて、はっとして思考を止める。
きっと、これ以上は知ってはいけないことだ。
少なくとも、今はやめておこう。
この本はそっと魔窟の本棚に戻しておくことにした。
「さて、これで整理も終わったし……。魔窟へ行くとしますか」
(中編へ続く)
お屋敷の図書館で、モチコはひとりつぶやいた。
ミライアみたいなセリフだが、空を猛スピード飛ぼうという訳ではない。
仕事をできるだけ早く終わらせよう、という意気込みだ。
今日はお屋敷での仕事の日。
ロビーの掃除は、先ほど気合いを入れてすでに終わらせた。
あとはなるべく早く書庫の整理を終わらせて、余った時間で魔窟の探索をしようという作戦だった。
ちなみに一応ティールームも覗いてみたが、奥様はいらっしゃらなかった。
ここで奥様とお会いして以来、いつかまたドアを開けたら奥様が現れるんじゃないかとドキドキしてしまう。
もちろん、奥様に会いたくないという訳では決してない。
ただ、恐れ多くてとにかく緊張するのだ……。
モチコはドアを開けて書庫の中へと入る。
「うわ、こりゃすごい」
ここで、本日一番の難関が訪れた。
今日はいつにも増して本が散らばっている。
ここ数日、奥様が書庫の本を大量に読んだようだ。
ただ、本のジャンルは偏っていた。
いつもの奥様なら、様々なジャンルを横断して読むので、いろんな本棚を行ったり来たりして格納する必要がある。
でも、今日はほとんど同じ本棚だけで済みそうだ。
奥様がいま興味があるのは、エネルギー資源に関する本のようだった。
とにかくこのジャンルを読みまくっている。
何かを調べているのだろうか?
「おりゃー。どっこいしょー」
まずは書庫に散らばった本を1か所に集めることにした。
たくさんの本を抱えて運ぼうとすると、小柄なモチコの背丈より、重ねた本の方が高くなってしまう。
モチコの顔が見えないので、本がひとりでに歩いているみたいになっていた。
少し大変だが、気合いでうんうんと唸りながら本を運んでいく。
やはり、すべてエネルギーに関する本だった。
昔はたくさん使われていた、石炭や石油について書かれたもの。
現代の基幹エネルギーであるマナについて書かれたもの。
小中学校でも習うマナの歴史について、大人向けに詳しく研究したものなど。
「うーん、どれも面白そうだな……」
ぱらぱらと本の中身を確認しながらつぶやく。
油断すると、どの本も読み耽ってしまいそうだ。
今日は最速を目指しているので、強い気持ちで誘惑を振り切って、作業を進めていく。
そんなときに限って、問題にぶちあたる。
「うぐっ……!?」
作業を進めていたモチコの手が止まった。
本の山のいちばん下から出てきたものを前にして、しばらく悩む。
『禁書』と書かれた札が張られた本。
しかも、そのシールはすでに破られ、封が解かれている。
なんならその本を縛っていたと思われる紐も、切れた状態で傍らに落ちていた。
「こ、これはまた、なんてものを……」
おそらく魔窟に保管されていた本だろう。
奥様がこの禁書の封を破いて読んでいたのは間違いないわけだが、果たしてモチコが読んでもいいのだろうか?
見たところ、魔導書という訳ではなさそうだ。
ごくり、とつばを飲み込んだモチコは、意を決してその本を開いた。
だって中身を見ないと分類できないし! (っていうか見たい)
中身をざっと見たところ、やはりこれもエネルギーに関する本のようだった。
石炭、石油、風力、水力、マナ……。
他の本でも見たような文字が並ぶ。
禁書といっても期待はずれか、と思ったそのとき。
モチコの目に見慣れない文字が飛び込んできた。
「e?」
それは、なんらかの記号として書かれていたと思う。
文脈から判断すると、未知のエネルギーを示す言葉のようだ。
マナとは違い、人間の身体を介さずに利用できる便利なものらしい。
2度の世界大戦のあと、北の王都が遷都してから半世紀以上が過ぎた。
そのあいだにこの国の魔導エネルギー技術は飛躍的な発展を遂げたが、こんなものは全く聞いたことがない。
なぜだろう、と考えかけて、はっとして思考を止める。
きっと、これ以上は知ってはいけないことだ。
少なくとも、今はやめておこう。
この本はそっと魔窟の本棚に戻しておくことにした。
「さて、これで整理も終わったし……。魔窟へ行くとしますか」
(中編へ続く)
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