56 / 83
第3章
かしましガールズ買い出し紀行(後編)
「マルシャちゃん真剣だね! 誰か可愛い下着を見せたい人でもいたりして!」
チャンチャルが声をかけると、マルシャの動きが一瞬とまった。
お? もしかして恋バナか?
と、モチコは思ったりもしたが。
マルシャの返事は意外なものだった。
「誰かのために可愛くなんてしないわよ」
マルシャは不敵な笑みを見せながら続ける。
「可愛くするのはわたしのため。私はわたしとして、強く可愛くなるのよ」
「……わお! マルシャちゃん、カッコいい!」
チャンチャルの称賛に、モチコも同意だった。
そのあとのマルシャは、悩んだ末に赤い下着をチョイスした。
あとで聞いたところによると、あの下着はマルシャが推しているファッションモデルの人がデザインしたものらしい。
本来は王都に行かないと買えないのだが、数量限定でこの街にも入荷されたとかなんとか。
マルシャがやたら真剣に選んでいた理由が分かったのだった。
ちなみに、ミライアのことも尊敬する魔女として心から推しており、どちらがより好きか、などと比べるものではないそうだ。
店から出ると、ちょうどランチタイム。
お昼は、チャンチャルがおすすめするお店に行くことになっていた。
「モチコちゃん、マルシャちゃん! このお店だよ!」
案内されて入ったのは、温かみのあるカフェレストランといった感じのお店だった。
ラタン編みのイスやソファー、アンティークっぽいチークのテーブルが並んでいる。
お昼どきで混んでいたが、運よく空いていたソファー席に案内してもらえた。
チャンチャルのおすすめ情報も参考にしながら、それぞれ注文を選ぶ。
みんなの食事が届くと、いただきます、と食べ始めた。
「おお。中に野菜がいっぱいだ」
モチコが頼んだのは生春巻き。
野菜がぎっしりと詰まっていて、見た目より食べごたえがあった。
生ハム入り、ひき肉と春雨入り、アボカドとチーズ入りなんてのもあって、どれも美味しい。
「モチコちゃん! ちょっと交換しよ!」
チャンチャルが提案してきたので、生春巻きをいくつか取り皿に分けて渡してあげた。
代わりに、小鉢に分けられたカオソーイがモチコの前に置かれる。
さっそくひとくち食べてみた。
「うわー。これ、美味しい」
カオソーイは、ココナッツミルクの入ったカレースープに、麺を入れた料理だ。
ミルクカレー麺、とでも言えばいいだろうか。
口に入れると、ココナッツの甘い香りがしたあとで、じわりと辛いスパイスの旨さが追いかけてくる。
もちもちのたまご麺がとろけて、良い感じにスープと一体化していた。
うわー、と口に出てしまうほど美味しい。
麺の上に乗っかっている、揚げたパリパリ麺とパクチーも、辛味の中でいいアクセントだ。
スパイスが効いて身体が熱くなってきた。
「モチコちゃん! これと一緒に食べてもおいしいよ!」
チャンチャルがそう言って渡してきたのは、付け合わせの紫タマネギ。
刻んだ紫タマネギのシャキシャキが、甘さと辛さのあいだでちょうどいい清涼感になって、どんどん箸が進む。
甘さと辛さが交互に……というか同時に来て、脳が混乱する旨さだ。
「あとこれも! いっぱい入れるといいよ!」
チャンチャルがパクチーを手でわしづかみにして、モチコのカオソーイの上に盛りつけた。
よくみると、ちーちゃんの手元に、巨大な皿に乗った超山盛りパクチーがある。
なにそれ特注?
「マルシャちゃんも!」
チャンチャルはパクチーをつかむと、今度はマルシャのガパオライスの上へ投下しようとした。
するとマルシャが突然、勢いよく立ち上がる。
「ノーォォォォォ! パクチィィィィィイイイ!!!」
たいへんよく響く大きな声に、店中の人が振り返る。
マルシャはガパオライスのお皿を空中へ持ち上げ、パクチーを回避していた。
一瞬の静寂のあと、チャンチャルはパクチーを自分のお皿に戻す。
「ごめん! マルシャちゃん、パクチーは無し!」
「マルシャ、パクチー苦手なの? こんなにおいしいのに」
モチコは自分のお皿に投下されたパクチーを食べながら、マルシャに尋ねる。
「ノーパクチーね。私が好きなのはこっち」
マルシャはガパオライスの上に乗っている目玉焼きを丁寧に箸で割って、小さい口でぱく、と食べた。
黄身が半熟でとろけて、おいしそうだ。
「目玉焼きが好きなの?」
マルシャはしばし咀嚼したあと、飲み込んでから口を開く。
「卵料理なら全部好きね。煮ても焼いてもお菓子にしても美味しい。卵は最強よ」
「なるほど」
そのあとは3人で雑談をしながら、ランチを美味しく平らげた。
ランチサービスの温かいジャスミン茶も飲み終えてから、お店を出る。
午後からは、いよいよ今日いちばんの目的である、恋愛小説を買いに行く。
3人は午後の日差しを浴びながら、本屋へと向かって歩きだした。
チャンチャルが声をかけると、マルシャの動きが一瞬とまった。
お? もしかして恋バナか?
と、モチコは思ったりもしたが。
マルシャの返事は意外なものだった。
「誰かのために可愛くなんてしないわよ」
マルシャは不敵な笑みを見せながら続ける。
「可愛くするのはわたしのため。私はわたしとして、強く可愛くなるのよ」
「……わお! マルシャちゃん、カッコいい!」
チャンチャルの称賛に、モチコも同意だった。
そのあとのマルシャは、悩んだ末に赤い下着をチョイスした。
あとで聞いたところによると、あの下着はマルシャが推しているファッションモデルの人がデザインしたものらしい。
本来は王都に行かないと買えないのだが、数量限定でこの街にも入荷されたとかなんとか。
マルシャがやたら真剣に選んでいた理由が分かったのだった。
ちなみに、ミライアのことも尊敬する魔女として心から推しており、どちらがより好きか、などと比べるものではないそうだ。
店から出ると、ちょうどランチタイム。
お昼は、チャンチャルがおすすめするお店に行くことになっていた。
「モチコちゃん、マルシャちゃん! このお店だよ!」
案内されて入ったのは、温かみのあるカフェレストランといった感じのお店だった。
ラタン編みのイスやソファー、アンティークっぽいチークのテーブルが並んでいる。
お昼どきで混んでいたが、運よく空いていたソファー席に案内してもらえた。
チャンチャルのおすすめ情報も参考にしながら、それぞれ注文を選ぶ。
みんなの食事が届くと、いただきます、と食べ始めた。
「おお。中に野菜がいっぱいだ」
モチコが頼んだのは生春巻き。
野菜がぎっしりと詰まっていて、見た目より食べごたえがあった。
生ハム入り、ひき肉と春雨入り、アボカドとチーズ入りなんてのもあって、どれも美味しい。
「モチコちゃん! ちょっと交換しよ!」
チャンチャルが提案してきたので、生春巻きをいくつか取り皿に分けて渡してあげた。
代わりに、小鉢に分けられたカオソーイがモチコの前に置かれる。
さっそくひとくち食べてみた。
「うわー。これ、美味しい」
カオソーイは、ココナッツミルクの入ったカレースープに、麺を入れた料理だ。
ミルクカレー麺、とでも言えばいいだろうか。
口に入れると、ココナッツの甘い香りがしたあとで、じわりと辛いスパイスの旨さが追いかけてくる。
もちもちのたまご麺がとろけて、良い感じにスープと一体化していた。
うわー、と口に出てしまうほど美味しい。
麺の上に乗っかっている、揚げたパリパリ麺とパクチーも、辛味の中でいいアクセントだ。
スパイスが効いて身体が熱くなってきた。
「モチコちゃん! これと一緒に食べてもおいしいよ!」
チャンチャルがそう言って渡してきたのは、付け合わせの紫タマネギ。
刻んだ紫タマネギのシャキシャキが、甘さと辛さのあいだでちょうどいい清涼感になって、どんどん箸が進む。
甘さと辛さが交互に……というか同時に来て、脳が混乱する旨さだ。
「あとこれも! いっぱい入れるといいよ!」
チャンチャルがパクチーを手でわしづかみにして、モチコのカオソーイの上に盛りつけた。
よくみると、ちーちゃんの手元に、巨大な皿に乗った超山盛りパクチーがある。
なにそれ特注?
「マルシャちゃんも!」
チャンチャルはパクチーをつかむと、今度はマルシャのガパオライスの上へ投下しようとした。
するとマルシャが突然、勢いよく立ち上がる。
「ノーォォォォォ! パクチィィィィィイイイ!!!」
たいへんよく響く大きな声に、店中の人が振り返る。
マルシャはガパオライスのお皿を空中へ持ち上げ、パクチーを回避していた。
一瞬の静寂のあと、チャンチャルはパクチーを自分のお皿に戻す。
「ごめん! マルシャちゃん、パクチーは無し!」
「マルシャ、パクチー苦手なの? こんなにおいしいのに」
モチコは自分のお皿に投下されたパクチーを食べながら、マルシャに尋ねる。
「ノーパクチーね。私が好きなのはこっち」
マルシャはガパオライスの上に乗っている目玉焼きを丁寧に箸で割って、小さい口でぱく、と食べた。
黄身が半熟でとろけて、おいしそうだ。
「目玉焼きが好きなの?」
マルシャはしばし咀嚼したあと、飲み込んでから口を開く。
「卵料理なら全部好きね。煮ても焼いてもお菓子にしても美味しい。卵は最強よ」
「なるほど」
そのあとは3人で雑談をしながら、ランチを美味しく平らげた。
ランチサービスの温かいジャスミン茶も飲み終えてから、お店を出る。
午後からは、いよいよ今日いちばんの目的である、恋愛小説を買いに行く。
3人は午後の日差しを浴びながら、本屋へと向かって歩きだした。
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。