17 / 41
第一幕 黄昏のエイレンヌ
第16話 奴隷令嬢の帰郷
しおりを挟む
ノルマンはエイレンヌの北西に位置する隣地である。
エイレンヌと同様海に面した港町ではあるが、この地には豊かな森林も多く林業の盛んな場所であった。
またノルマンの地は対大ブリタニア王国の最前線としてアルセイシア王国内では最重要拠点とみなされ、代々その領主は公族が務めていた。
そしてララの父親もまた、現国王の弟で公爵位を持つ上級貴族であった。
「しかし、ただ者じゃないとは思ってたけど、まさかララが公族だったなんて。驚いたよ」
隣境の峠を歩きながら,ふとミレーヌが感嘆交じりにもらす。
「ですが、今のわたくしはただの娘。身分や爵位などしょせん泡沫の夢にすぎませんわ」
ララはどこか冷めたような達観した口調で答える。
「まあ、たしかに今のアタシたちはただの貧しい旅人。人生なんて何が起こるかわかったもんじゃないね」
「ええ。まさか女将さんの工場が焼け落ちてしまうなんて……」
ララは申し訳なさそうな、どこか苦々しさの交じった口調でつぶやいた。
先の紫紺騎士団の襲撃は実に用意周到であった。
定期船に偽装した集団がまず港から侵入して町を襲撃し、そちらに防備を引きつけさせている隙に陸路から別動隊が急襲して一気に中枢を落とす。
中枢が落ちて指揮系統が麻痺すれば士気は喪失し、後は煮るなり焼くなりなすがままだ。
しかし、ララの提言で町に備えが築かれていたことによって彼らは思わぬ足止めを食らい、ようやく防護陣を突破できたのは半数だけであり、そのため町の損害は半分以下にまで抑えることができたのだ。
とは言え、その被害を受けた家屋の中にミレーヌの工場が含まれ、焼け落ちた家を前にして彼女はブリタニア人に向けて呪いの言葉を叫んでいたのだった。
「別にアンタが気に病むことじゃないさ。逆に家もお金もキレイサッパリ無くなってスッキリした気分さ。このまま工場を続けようかどうかずっと迷ってたしね」
ミレーヌらしい、実にサバサバとした言葉だ。
「そう……ですの……」
とは言え、ララにとっては自身が大きく変わるきっかけとなった場所であり、思い出もあり、エイレンヌは第二の故郷と思えるくらいに愛着を抱いていたのだった。
「今はこうしてララと二人で旅ができる。それだけで充分さ」
「そう……ですわね」
コクリとうなずくララ。
二人は出立前に町の人々から心ばかりの餞別を受け取っており、エイレンヌの思い出と温かな優しさを胸に刻み、歩んでゆくのだった。
寂寞たる丘陵を越えた後、平坦の道行きを徒歩で進むこと三日、二人はついにノルマン領へと足を踏み入れた。
ララにとっては約三ヶ月ぶりとなる故郷の町。しかし、そこにはかつての繁栄の面影などまったく無く、町を囲む壁もかつて十四年もの時を過ごした居城も無惨に破壊し尽くされ瓦礫の山となって散乱し、、家々は焼き尽くされて消し炭と化した見るも無惨な廃墟と化していた。
エイレンヌの町も侵略者によって破壊されたが、この荒廃ぶりはその比ではなかった。
「これが……ノルマン」
二人は呆然と立ち尽くす。
ここに辿り着くまでの過程で道ゆく人から聞いた話では、ノルマンを占領していたギヨーム率いる農民軍は、王都ルテティアから派遣された騎士団と死闘を繰り広げ互角以上の善戦をしていたが、リーダーであるギヨームが捕らえられ、その後はあっさりと蹂躙され敗北したらしい。
そしてそれは、つい三日前の出来事だと言う。
二人は沈んだ気持ちのままかつて広場だった場所へとおもむいた。
そこはララにとっては、農民たちによって強姦や処刑などの蛮行が行われた忌まわしの場所でもあった。
そして今そこにあったものは、かつて叛乱軍として戦っていた農民と思われる者たちの死骸が焼かれた跡と、そして槍に突き刺されて掲げ上げられた主犯人物のさらし首だった。
ララは呼吸を整え、それを自らの目でたしかめる。
――ああ、知っていますわ……
無念の形相で虚空を見上げているそれは、ひとつはララの罪状を読み上げていたリーダーらしき男のもの。そしてもうひとつは、ララの頬を叩いたあのスキンヘッドの処刑執行人のものだった。
「大丈夫かい、ララ?」
「ええ……」
少女が直視するにはそれはあまりにも残酷な光景であり、ミレーヌも思わず自身の気がおかしくなるのではという不安を感じずにはいられなかった。
しかし、ララはそこに本来あるべき人物の首が無いことに気づき、不審に思った。
それは、リーダーであるギヨームの隣にいたあの獣面の者である。
その者は常にギヨームの側におり、ララの処遇に関してはギヨームが獣面の者にうかがいを立てていたくらいであるから、叛乱軍の重要人物であることに間違いはないはずだ。
しかし、ここにはその首が無いのだ。
――逃げた……? それとも……
ララはどうしても忘れられなかった。
その獣面の者が放つ異様さと、そこから感じたおぞましさを。
結局その者の消息はわからないが、少なくとも死んではいない、とララは何となく感じるのだった。
――ッ! 誰かが見ている……?
刹那、視線を感じたララが振り返ると、奥にある木の陰から二人の様子をうかがっている男の存在に気づく。
その男はララに気づかれたと知るや否や、すぐにその場から駆け出した。
「お待ちなさいッ!!」
ララはすぐさま駆け出し、木々の間を縫うようにして逃走するその男を追いかける。
「はぁはぁ……」
男が後ろを振り返ると、少女はまるで獣のごとく俊敏さで障害物を物ともせず猛然と疾走し、すぐそこまで迫って来ていた。
もう逃げきれない、と悟った男はその場で足を止めた。
「アナタ、わたくしたちを見てましたわね?」
追いついたララは男を詰問する。
「し、知らねぇよ」
「じゃあ、何で急に逃げ出したりしたのかしら?」
「べ、別に逃げたワケじゃねぇ!」
あくまでも惚けようとする男。
「はぁはぁ……。もう、早すぎるよ、ララ」
ここでようやくミレーヌが追いつき、肩で息をする。
「あら? アナタ、見覚えがありますわ」
ふと既視感を感じたララが記憶をたどると、
「たしか……そうですわ! あの時、叛乱軍の中にいた農夫ですわ!!」
シュプレヒコールを叫ぶ農民たちの中に彼の顔があったことを思い出す。
「たしか叛乱軍は王都から派遣された騎士団によって根絶やしにされたはずですが、アナタはなぜこんなところにいるのかしら?」
「そ、それは……」
男は目を泳がせながら、言いにくそうに口ごもる。
「さっさと話してくださいませんこと?」
ララは腰に帯びた剣を抜き、その刃先を男に向けて脅す。
「お、俺は叛乱軍を裏切ったんだよ! 騎士団の奴らに捕まった時、うまくギヨームを誘い出せば金をくれるっていうからよォ!!」
男は何度もかぶりを振りながら、まるでわめき散らすように言う。
「それで、アナタは再び仲間の元に何食わぬ顔で戻ると、言われた通りリーダーであるギヨームを騙して騎士団に捕らえさせた……。そういうことですわね?」
「し、死にたくなかったんだ! もともと参加するつもりもなかったのに、なし崩し的に叛乱軍の一員にされて……」
その言い訳じみた言説に辟易としながらも、
「アナタにおうかがいしたいことがありますの」
唯一の生き証人であるこの男に問う。
「あの時、わたくしが気を失った後、一体何があったのか。そのすべてを教えてくださいませんこと?」
そして、男は顔を曇らせながら静かに語り始めたのだった。
エイレンヌと同様海に面した港町ではあるが、この地には豊かな森林も多く林業の盛んな場所であった。
またノルマンの地は対大ブリタニア王国の最前線としてアルセイシア王国内では最重要拠点とみなされ、代々その領主は公族が務めていた。
そしてララの父親もまた、現国王の弟で公爵位を持つ上級貴族であった。
「しかし、ただ者じゃないとは思ってたけど、まさかララが公族だったなんて。驚いたよ」
隣境の峠を歩きながら,ふとミレーヌが感嘆交じりにもらす。
「ですが、今のわたくしはただの娘。身分や爵位などしょせん泡沫の夢にすぎませんわ」
ララはどこか冷めたような達観した口調で答える。
「まあ、たしかに今のアタシたちはただの貧しい旅人。人生なんて何が起こるかわかったもんじゃないね」
「ええ。まさか女将さんの工場が焼け落ちてしまうなんて……」
ララは申し訳なさそうな、どこか苦々しさの交じった口調でつぶやいた。
先の紫紺騎士団の襲撃は実に用意周到であった。
定期船に偽装した集団がまず港から侵入して町を襲撃し、そちらに防備を引きつけさせている隙に陸路から別動隊が急襲して一気に中枢を落とす。
中枢が落ちて指揮系統が麻痺すれば士気は喪失し、後は煮るなり焼くなりなすがままだ。
しかし、ララの提言で町に備えが築かれていたことによって彼らは思わぬ足止めを食らい、ようやく防護陣を突破できたのは半数だけであり、そのため町の損害は半分以下にまで抑えることができたのだ。
とは言え、その被害を受けた家屋の中にミレーヌの工場が含まれ、焼け落ちた家を前にして彼女はブリタニア人に向けて呪いの言葉を叫んでいたのだった。
「別にアンタが気に病むことじゃないさ。逆に家もお金もキレイサッパリ無くなってスッキリした気分さ。このまま工場を続けようかどうかずっと迷ってたしね」
ミレーヌらしい、実にサバサバとした言葉だ。
「そう……ですの……」
とは言え、ララにとっては自身が大きく変わるきっかけとなった場所であり、思い出もあり、エイレンヌは第二の故郷と思えるくらいに愛着を抱いていたのだった。
「今はこうしてララと二人で旅ができる。それだけで充分さ」
「そう……ですわね」
コクリとうなずくララ。
二人は出立前に町の人々から心ばかりの餞別を受け取っており、エイレンヌの思い出と温かな優しさを胸に刻み、歩んでゆくのだった。
寂寞たる丘陵を越えた後、平坦の道行きを徒歩で進むこと三日、二人はついにノルマン領へと足を踏み入れた。
ララにとっては約三ヶ月ぶりとなる故郷の町。しかし、そこにはかつての繁栄の面影などまったく無く、町を囲む壁もかつて十四年もの時を過ごした居城も無惨に破壊し尽くされ瓦礫の山となって散乱し、、家々は焼き尽くされて消し炭と化した見るも無惨な廃墟と化していた。
エイレンヌの町も侵略者によって破壊されたが、この荒廃ぶりはその比ではなかった。
「これが……ノルマン」
二人は呆然と立ち尽くす。
ここに辿り着くまでの過程で道ゆく人から聞いた話では、ノルマンを占領していたギヨーム率いる農民軍は、王都ルテティアから派遣された騎士団と死闘を繰り広げ互角以上の善戦をしていたが、リーダーであるギヨームが捕らえられ、その後はあっさりと蹂躙され敗北したらしい。
そしてそれは、つい三日前の出来事だと言う。
二人は沈んだ気持ちのままかつて広場だった場所へとおもむいた。
そこはララにとっては、農民たちによって強姦や処刑などの蛮行が行われた忌まわしの場所でもあった。
そして今そこにあったものは、かつて叛乱軍として戦っていた農民と思われる者たちの死骸が焼かれた跡と、そして槍に突き刺されて掲げ上げられた主犯人物のさらし首だった。
ララは呼吸を整え、それを自らの目でたしかめる。
――ああ、知っていますわ……
無念の形相で虚空を見上げているそれは、ひとつはララの罪状を読み上げていたリーダーらしき男のもの。そしてもうひとつは、ララの頬を叩いたあのスキンヘッドの処刑執行人のものだった。
「大丈夫かい、ララ?」
「ええ……」
少女が直視するにはそれはあまりにも残酷な光景であり、ミレーヌも思わず自身の気がおかしくなるのではという不安を感じずにはいられなかった。
しかし、ララはそこに本来あるべき人物の首が無いことに気づき、不審に思った。
それは、リーダーであるギヨームの隣にいたあの獣面の者である。
その者は常にギヨームの側におり、ララの処遇に関してはギヨームが獣面の者にうかがいを立てていたくらいであるから、叛乱軍の重要人物であることに間違いはないはずだ。
しかし、ここにはその首が無いのだ。
――逃げた……? それとも……
ララはどうしても忘れられなかった。
その獣面の者が放つ異様さと、そこから感じたおぞましさを。
結局その者の消息はわからないが、少なくとも死んではいない、とララは何となく感じるのだった。
――ッ! 誰かが見ている……?
刹那、視線を感じたララが振り返ると、奥にある木の陰から二人の様子をうかがっている男の存在に気づく。
その男はララに気づかれたと知るや否や、すぐにその場から駆け出した。
「お待ちなさいッ!!」
ララはすぐさま駆け出し、木々の間を縫うようにして逃走するその男を追いかける。
「はぁはぁ……」
男が後ろを振り返ると、少女はまるで獣のごとく俊敏さで障害物を物ともせず猛然と疾走し、すぐそこまで迫って来ていた。
もう逃げきれない、と悟った男はその場で足を止めた。
「アナタ、わたくしたちを見てましたわね?」
追いついたララは男を詰問する。
「し、知らねぇよ」
「じゃあ、何で急に逃げ出したりしたのかしら?」
「べ、別に逃げたワケじゃねぇ!」
あくまでも惚けようとする男。
「はぁはぁ……。もう、早すぎるよ、ララ」
ここでようやくミレーヌが追いつき、肩で息をする。
「あら? アナタ、見覚えがありますわ」
ふと既視感を感じたララが記憶をたどると、
「たしか……そうですわ! あの時、叛乱軍の中にいた農夫ですわ!!」
シュプレヒコールを叫ぶ農民たちの中に彼の顔があったことを思い出す。
「たしか叛乱軍は王都から派遣された騎士団によって根絶やしにされたはずですが、アナタはなぜこんなところにいるのかしら?」
「そ、それは……」
男は目を泳がせながら、言いにくそうに口ごもる。
「さっさと話してくださいませんこと?」
ララは腰に帯びた剣を抜き、その刃先を男に向けて脅す。
「お、俺は叛乱軍を裏切ったんだよ! 騎士団の奴らに捕まった時、うまくギヨームを誘い出せば金をくれるっていうからよォ!!」
男は何度もかぶりを振りながら、まるでわめき散らすように言う。
「それで、アナタは再び仲間の元に何食わぬ顔で戻ると、言われた通りリーダーであるギヨームを騙して騎士団に捕らえさせた……。そういうことですわね?」
「し、死にたくなかったんだ! もともと参加するつもりもなかったのに、なし崩し的に叛乱軍の一員にされて……」
その言い訳じみた言説に辟易としながらも、
「アナタにおうかがいしたいことがありますの」
唯一の生き証人であるこの男に問う。
「あの時、わたくしが気を失った後、一体何があったのか。そのすべてを教えてくださいませんこと?」
そして、男は顔を曇らせながら静かに語り始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる