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鋭い親たち Kenshin
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作戦はなんとか誰にもバレず、決行日の夜になった。
夜になるとお泊り会に行っているはずの花音がウチに来た。両親とも知り合いなので、軽く挨拶をしてから学校へと向かう。
「しかし息子だけでなく、花音ちゃんとも夜の学校へ行くなんてな」
学校へと向かう最中、オヤジが独り言のように言う。
「そうですね。夜の学校なんて、なんだかワクワクしますよね」
本当は怖がりなんだが、美織さんを知っているせいか、それとも開き直って演じ切ることに決めているのか、花音は明るく振舞っていた。
「それにしても、花音ちゃんの親御さんはどうして来ないの?」
母さんに言われて、俺たち犯人ズは仲良くドキっとする。
「そ、それはですねえ……。ほら、アレですよ。わたしの両親、お化けとか全然ダメで」
「そうなの。まあ、私もどっちかって言うとそっち側なんだけどね。さすがにこれだけいれば大丈夫かなって」
「わ、わたしんちの親はですねえ、人数がいてもダメみたいでして……。そそそそれでもわたしは参加したかったんで、剣心君にお願いしたら引き受けてくれて……そんな感じです」
だいぶしどろもどろになっている気がしないでもないが、アドリブとしてはファインプレーだ。花音、君はたしかに成長した。
そんなことを思っていると、間もなく学校に到着した。知り合いの誰にも会わなくて良かった。
「ん、俺たち以外の家族はいないのか?」
オヤジが周囲を見渡しながら言う。そりゃそうだよ。この肝試し自体がでっち上げなんだから。そんなことは言えるはずがないけど。
いくらか訝し気な顔をしだしたオヤジに花音がフォローを入れる。
「実は、希望者が剣心君のご家族だけだったんです」
「マジか」
「なんだか、皆さん仕事が忙しいって断ったみたいです。だから剣心君に連れて行ってって頼んだんですけど」
「理由は分かったけど、俺も別にヒマじゃないんだけどな」
オヤジはいくらか納得がいかなそうに言った。
「まあいいじゃない。お化け役の人は校舎の中で待っているんでしょう?」
「そうか。それもそうだな。さっさと終わらせて、その人たちも早く帰れるようにしてあげよう」
母さんのフォローにオヤジが勝手に納得して話が進んだ。過程はどうあれ、俺にとっては都合の良い展開なのでそのまま先へと進んで行く。
一応「順路」と書いた矢印がところどころに貼ってあり、鍵のかからない扉には「ここから入れ」とおどろおどろしい文字で書いてある。
これは花音がウチに来る前に用意していたものだった。さすがに何も仕掛けが無い中で裏口から入ろうとしたら止められるだろうという考えからだった。もしかしたら誰かに見られるかもしれないが、今日さえ耐えてくれれば後はバレたっていい。
オヤジが「ここから入れ」の張り紙を見て呟く。
「裏口から入るのか。ここに鍵がかからない話って俺の代から有名だったよな」
「そ、そうなの? オヤジの代から」
「そうだよ。泥棒が入るから直せって言ったんだけどな。開き直って肝試しの入り口かよ。鍵を付けるぐらい、大した予算はいらないと思うんだけどな」
そう言いながらオヤジは裏口の扉を開いて入る。まさか自分が今、不法侵入をしているなんて夢にも思っていないだろう。
「なんか、悪いことでもしている気分になるわね」
母さんがオヤジの背中を見送りながら言う。ああそうだよ。俺たちは家族ぐるみで夜の学校に忍び込むという、立派な犯罪を犯している真っ最中だよ。なんでみんな無駄に鋭いんだ。さっきからバレそうでこっちはヒヤヒヤしてるんだよ。いや、俺たちの立てた計画が穴だらけってだけの話か。そりゃあ学校で家族参加型の肝試しなんてあり得ないよな。ウチの親は引っかかったけどさ。
いずれにしても、もう後に引くことは出来ない。
チャンスはきっと一度きり。今日ですべてを終わらせる。
夜になるとお泊り会に行っているはずの花音がウチに来た。両親とも知り合いなので、軽く挨拶をしてから学校へと向かう。
「しかし息子だけでなく、花音ちゃんとも夜の学校へ行くなんてな」
学校へと向かう最中、オヤジが独り言のように言う。
「そうですね。夜の学校なんて、なんだかワクワクしますよね」
本当は怖がりなんだが、美織さんを知っているせいか、それとも開き直って演じ切ることに決めているのか、花音は明るく振舞っていた。
「それにしても、花音ちゃんの親御さんはどうして来ないの?」
母さんに言われて、俺たち犯人ズは仲良くドキっとする。
「そ、それはですねえ……。ほら、アレですよ。わたしの両親、お化けとか全然ダメで」
「そうなの。まあ、私もどっちかって言うとそっち側なんだけどね。さすがにこれだけいれば大丈夫かなって」
「わ、わたしんちの親はですねえ、人数がいてもダメみたいでして……。そそそそれでもわたしは参加したかったんで、剣心君にお願いしたら引き受けてくれて……そんな感じです」
だいぶしどろもどろになっている気がしないでもないが、アドリブとしてはファインプレーだ。花音、君はたしかに成長した。
そんなことを思っていると、間もなく学校に到着した。知り合いの誰にも会わなくて良かった。
「ん、俺たち以外の家族はいないのか?」
オヤジが周囲を見渡しながら言う。そりゃそうだよ。この肝試し自体がでっち上げなんだから。そんなことは言えるはずがないけど。
いくらか訝し気な顔をしだしたオヤジに花音がフォローを入れる。
「実は、希望者が剣心君のご家族だけだったんです」
「マジか」
「なんだか、皆さん仕事が忙しいって断ったみたいです。だから剣心君に連れて行ってって頼んだんですけど」
「理由は分かったけど、俺も別にヒマじゃないんだけどな」
オヤジはいくらか納得がいかなそうに言った。
「まあいいじゃない。お化け役の人は校舎の中で待っているんでしょう?」
「そうか。それもそうだな。さっさと終わらせて、その人たちも早く帰れるようにしてあげよう」
母さんのフォローにオヤジが勝手に納得して話が進んだ。過程はどうあれ、俺にとっては都合の良い展開なのでそのまま先へと進んで行く。
一応「順路」と書いた矢印がところどころに貼ってあり、鍵のかからない扉には「ここから入れ」とおどろおどろしい文字で書いてある。
これは花音がウチに来る前に用意していたものだった。さすがに何も仕掛けが無い中で裏口から入ろうとしたら止められるだろうという考えからだった。もしかしたら誰かに見られるかもしれないが、今日さえ耐えてくれれば後はバレたっていい。
オヤジが「ここから入れ」の張り紙を見て呟く。
「裏口から入るのか。ここに鍵がかからない話って俺の代から有名だったよな」
「そ、そうなの? オヤジの代から」
「そうだよ。泥棒が入るから直せって言ったんだけどな。開き直って肝試しの入り口かよ。鍵を付けるぐらい、大した予算はいらないと思うんだけどな」
そう言いながらオヤジは裏口の扉を開いて入る。まさか自分が今、不法侵入をしているなんて夢にも思っていないだろう。
「なんか、悪いことでもしている気分になるわね」
母さんがオヤジの背中を見送りながら言う。ああそうだよ。俺たちは家族ぐるみで夜の学校に忍び込むという、立派な犯罪を犯している真っ最中だよ。なんでみんな無駄に鋭いんだ。さっきからバレそうでこっちはヒヤヒヤしてるんだよ。いや、俺たちの立てた計画が穴だらけってだけの話か。そりゃあ学校で家族参加型の肝試しなんてあり得ないよな。ウチの親は引っかかったけどさ。
いずれにしても、もう後に引くことは出来ない。
チャンスはきっと一度きり。今日ですべてを終わらせる。
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