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■エピローグ Kenshin
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――夏休みが終わって、すぐ秋の気配がやって来た。
本当に時間があっという間に過ぎる。これが大人に近付くってことなんだろうか。
悪友同士の肝試しで始まった奇妙な出来事は、まるで夢だったかのように収束した。オヤジや母さんも、まるでそんなことは無かったとでも言うかのように平常運転で毎日を過ごしている。
――ただ、変わったこともある。
「剣心君、今日も一緒に帰ろう」
隣の席に座る花音が返事も聞かずに俺の手を取る。
「あーまたこの夫婦ラブラブなのを見せつけてるー」
「学校の中でイチャイチャして、なんか幸せ爆発で見てるのがつらいんですけどー」
他の女子たちにからかわれるも、花音はまったく動じない。彼女は強い力で手を引いて、問答無用で俺を立たせる。
「うわ、ちょっと……」
俺は戸惑いながらも引きずられていく。
美織さんとのお別れをした直後に、花音から「ずっと好きだった」と告白された。別に断る理由もないので告白を受け入れたが、早くも恐妻家のようになっているというか、色々と話が違う。
花音は今まで俺を好きだったが、素直になれなかったそうだ。それで26年前に美織さんが事故に遭ったことを知って、考えが変わったらしい。
素直になってくれたのはいいことだけど、ちょっと強くなり過ぎやしないか?
そんな心の声はまったく届かないまま、花音はクラスメイトの女子に反論する。
「別にいいでしょ? わたしは剣心君のことが好きなんだから」
「あー開き直ったー! 前はあんなにツンツンしてたのに!」
「美織さんに言われたの。好きな人には素直になりなさいって。だからそうしているだけだよ」
「毎回出てくるその美織さんって誰なの?」
「うーん、まあ、先輩かな」
言い終わると、また俺は引きずられていく。肝試しに行った悪友たちがニヤニヤしながら俺を眺めていた。後でシメてやるからな、クソ。
美織さんと過ごした日々は、俺に大きな変化をもたらした。
ちょっと前まではただの悪ガキだった俺が、生きることについて前よりも真剣に考えるようになった。
それは周りから見たら微々たる変化かもしれないけど、退屈な人生を生きていた俺には天啓にも等しい気付きだった。
美織さんは26年前全力で生きていた。だからこそ、不慮の事故で亡くなっても幸せな人生だと言い切れたのだろう。
きっと、俺もそんな風に言える人生を送るべきなんだ。昔の人が「生きるというのはただ呼吸をすることではない。行動することだ」って言っていたらしいしな。俺もそう思う。俺は本当にこの人生を生きていくべきなんだ。
「なあ、花音」
俺が呼びかけると、花音が小首をかしげながら立ち止まる。
「俺はさ、美織さんの言っていたことは本当だと思うんだよな」
「……何のこと?」
「生まれ変わって帰って来るって言ってたこと。多分、美織さんなら本当にそうすると思うんだ」
「そう、だね」
手を繋いだまま、再び歩きはじめる。
「だからさ、その時はもう一度同じメンツで会おう。俺とオヤジと、母さんに花音」
「いいね、それ。それまで別れられないねえ」
花音がいたずらっぽく笑う。
「別れないさ、絶対に」
俺は前を向いたまま言う。
人は過去を変えることは出来ない。それでも、未来を変えることは出来る。たとえ理想的な光景で無かったとしても、それでもちょっとぐらいはマシな未来へ作り変えることだって出来る。足掻くことが出来るんだ、生きている限りは。
だから俺は決めたんだ。もっと最高で幸せな未来を作るってことを。
美織さんとまた会った時、恥ずかしくないように。
雲一つない空には、光り輝く太陽が浮かんでいた。
「もう、俺は逃げないからな」
「え? なんか言った?」
「いや、何も……」
密かな誓いは誰にも聞かれることなく、空の蒼へと溶けていった。
【了】
本当に時間があっという間に過ぎる。これが大人に近付くってことなんだろうか。
悪友同士の肝試しで始まった奇妙な出来事は、まるで夢だったかのように収束した。オヤジや母さんも、まるでそんなことは無かったとでも言うかのように平常運転で毎日を過ごしている。
――ただ、変わったこともある。
「剣心君、今日も一緒に帰ろう」
隣の席に座る花音が返事も聞かずに俺の手を取る。
「あーまたこの夫婦ラブラブなのを見せつけてるー」
「学校の中でイチャイチャして、なんか幸せ爆発で見てるのがつらいんですけどー」
他の女子たちにからかわれるも、花音はまったく動じない。彼女は強い力で手を引いて、問答無用で俺を立たせる。
「うわ、ちょっと……」
俺は戸惑いながらも引きずられていく。
美織さんとのお別れをした直後に、花音から「ずっと好きだった」と告白された。別に断る理由もないので告白を受け入れたが、早くも恐妻家のようになっているというか、色々と話が違う。
花音は今まで俺を好きだったが、素直になれなかったそうだ。それで26年前に美織さんが事故に遭ったことを知って、考えが変わったらしい。
素直になってくれたのはいいことだけど、ちょっと強くなり過ぎやしないか?
そんな心の声はまったく届かないまま、花音はクラスメイトの女子に反論する。
「別にいいでしょ? わたしは剣心君のことが好きなんだから」
「あー開き直ったー! 前はあんなにツンツンしてたのに!」
「美織さんに言われたの。好きな人には素直になりなさいって。だからそうしているだけだよ」
「毎回出てくるその美織さんって誰なの?」
「うーん、まあ、先輩かな」
言い終わると、また俺は引きずられていく。肝試しに行った悪友たちがニヤニヤしながら俺を眺めていた。後でシメてやるからな、クソ。
美織さんと過ごした日々は、俺に大きな変化をもたらした。
ちょっと前まではただの悪ガキだった俺が、生きることについて前よりも真剣に考えるようになった。
それは周りから見たら微々たる変化かもしれないけど、退屈な人生を生きていた俺には天啓にも等しい気付きだった。
美織さんは26年前全力で生きていた。だからこそ、不慮の事故で亡くなっても幸せな人生だと言い切れたのだろう。
きっと、俺もそんな風に言える人生を送るべきなんだ。昔の人が「生きるというのはただ呼吸をすることではない。行動することだ」って言っていたらしいしな。俺もそう思う。俺は本当にこの人生を生きていくべきなんだ。
「なあ、花音」
俺が呼びかけると、花音が小首をかしげながら立ち止まる。
「俺はさ、美織さんの言っていたことは本当だと思うんだよな」
「……何のこと?」
「生まれ変わって帰って来るって言ってたこと。多分、美織さんなら本当にそうすると思うんだ」
「そう、だね」
手を繋いだまま、再び歩きはじめる。
「だからさ、その時はもう一度同じメンツで会おう。俺とオヤジと、母さんに花音」
「いいね、それ。それまで別れられないねえ」
花音がいたずらっぽく笑う。
「別れないさ、絶対に」
俺は前を向いたまま言う。
人は過去を変えることは出来ない。それでも、未来を変えることは出来る。たとえ理想的な光景で無かったとしても、それでもちょっとぐらいはマシな未来へ作り変えることだって出来る。足掻くことが出来るんだ、生きている限りは。
だから俺は決めたんだ。もっと最高で幸せな未来を作るってことを。
美織さんとまた会った時、恥ずかしくないように。
雲一つない空には、光り輝く太陽が浮かんでいた。
「もう、俺は逃げないからな」
「え? なんか言った?」
「いや、何も……」
密かな誓いは誰にも聞かれることなく、空の蒼へと溶けていった。
【了】
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作者さんお疲れ様でした。
ありがとうございます。そう言っていただけるとものすごく嬉しいです。