83 / 84
安堵と激励
しおりを挟む
レフリーが試合終了を告げて手を振ると、セコンドのぶーちんと菜々さんがリングへと飛び込んで来た。ぶーちんはともかくとして、菜々さんまで大逆転の満塁ホームランを味方が打ったみたいに大喜びだった。
あたしも彼らと一緒に飛び跳ねて喜んだけど、すぐにフラフラっとなってぶーちんに支えられる。
「……マジで、死ぬかと思った」
思わず天を仰ぐ。あんな倒され方をしたことは前世でもなかったし、ましてや臨死体験みたいな経験なんてあるはずがない。
思い返すと、あの女神との会話が本当にあったのかすら疑わしい。
だけど、事実としてあたしは一光にKO勝ちした。とんでもない強敵だったし、生物的にはハンデ戦と言っても過言じゃない闘いだったけど、それでも勝てた。
「由奈ちゃん、本当に、本当におめでとう」
菜々さんが感動のあまり涙を流している。
ごめんね、菜々さん。もう二度と泣かせないって決めたはずなのに、もうその約束を破っている。菜々さんは血だらけだし汗だくなのにあたしの体をぎゅーって抱きしめてくれる。だからあたしも菜々さんを抱きしめ返した。
離れたところで、セコンドに介抱された一光が立ち上がる。短い間気絶していたものの、そこまで深刻なダメージではないようで自力で立ち上がっていた。鼻っ柱には痛々しい裂傷が残り、そこから血が流れている。
あたしの視線に気付いたのか、菜々さんとぶーちんもやや警戒気味に一光へ視線をやった。
一光がこちらへ歩いて来る。
「効いたよ。今まで喰らった、どんなパンチよりも」
一光が手を差し出した。
「そっちこそ。男子選手よりもよっぽどパンチ力があったよ」
差し出された手を握り返す。あちこちから声援と拍手が沸いた。
一光に賭けて大金を失った者も少なくないはずだけど、彼らからすればそれもはした金だったのかもしれない。あたしたちを包み込む温かい声援は、公式の世界戦と比べても何ら遜色がなかった。
「あなたとはまた闘う気がする」
一光が口を開く。あたしはそれに「うん」とだけ答えた。
「次は絶対に負けないから」
「あたしだって。もっと強くなって帰って来るから覚悟していてね」
お互いに「ふっ」と笑うと、リングを去る一光を見送った。リングに残ったあたしは、ちょっとだけ観客たちに手を振って声援に応える。
良かった。今の心境を一言で表すなら、それ以上に相応しい言葉はない。
色々と大変だったけど、これであたしも菜々さんも、あとはぶーちんも安全は保障されるはずだ。願望含め。
今は一刻も早くベッドに倒れ込みたい。眠ったらまた新たな考えが出てくるだろう。それまではゆっくり休もう。
あたしも彼らと一緒に飛び跳ねて喜んだけど、すぐにフラフラっとなってぶーちんに支えられる。
「……マジで、死ぬかと思った」
思わず天を仰ぐ。あんな倒され方をしたことは前世でもなかったし、ましてや臨死体験みたいな経験なんてあるはずがない。
思い返すと、あの女神との会話が本当にあったのかすら疑わしい。
だけど、事実としてあたしは一光にKO勝ちした。とんでもない強敵だったし、生物的にはハンデ戦と言っても過言じゃない闘いだったけど、それでも勝てた。
「由奈ちゃん、本当に、本当におめでとう」
菜々さんが感動のあまり涙を流している。
ごめんね、菜々さん。もう二度と泣かせないって決めたはずなのに、もうその約束を破っている。菜々さんは血だらけだし汗だくなのにあたしの体をぎゅーって抱きしめてくれる。だからあたしも菜々さんを抱きしめ返した。
離れたところで、セコンドに介抱された一光が立ち上がる。短い間気絶していたものの、そこまで深刻なダメージではないようで自力で立ち上がっていた。鼻っ柱には痛々しい裂傷が残り、そこから血が流れている。
あたしの視線に気付いたのか、菜々さんとぶーちんもやや警戒気味に一光へ視線をやった。
一光がこちらへ歩いて来る。
「効いたよ。今まで喰らった、どんなパンチよりも」
一光が手を差し出した。
「そっちこそ。男子選手よりもよっぽどパンチ力があったよ」
差し出された手を握り返す。あちこちから声援と拍手が沸いた。
一光に賭けて大金を失った者も少なくないはずだけど、彼らからすればそれもはした金だったのかもしれない。あたしたちを包み込む温かい声援は、公式の世界戦と比べても何ら遜色がなかった。
「あなたとはまた闘う気がする」
一光が口を開く。あたしはそれに「うん」とだけ答えた。
「次は絶対に負けないから」
「あたしだって。もっと強くなって帰って来るから覚悟していてね」
お互いに「ふっ」と笑うと、リングを去る一光を見送った。リングに残ったあたしは、ちょっとだけ観客たちに手を振って声援に応える。
良かった。今の心境を一言で表すなら、それ以上に相応しい言葉はない。
色々と大変だったけど、これであたしも菜々さんも、あとはぶーちんも安全は保障されるはずだ。願望含め。
今は一刻も早くベッドに倒れ込みたい。眠ったらまた新たな考えが出てくるだろう。それまではゆっくり休もう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる