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プロローグ
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――この世で信じられるものは力だけだ。
奪う側に回った俺はそう確信している。
中学生になり、かつてあった誰でも友達という牧歌的な空気が消失して以来、でかいくせに気の小さい俺はイジメっ子から恰好のターゲットとなった。毎日繰り返される陰湿なイジメに、何度首を吊ろうと思ったかも分からない。
「おい、アンドリュー。スパーリングやろうぜ」
イジメっ子は安藤龍という俺のフルネームを英語のように呼ぶ。なぜそうなったかは分からない。一見イケメンのハーフでも想像させそうなアダ名は、近所でも有名なサンドバッグの愛称となっていた。
俺はスパーリングと称した一方的な暴力に何度も晒された。明らかにイジメだったのに、誰もが見て見ぬフリをした。自分が巻き込まれたくないからだ。
俺はただ怯え、早く一日が終わればいいと思いながら、無遠慮な拳の雨に耐え続けるしかなかった。
文字通りに毎日殴られる俺は毎日、「明日死のう」と思っていた。実際に、生きていても何一つ希望を感じられなかったからだ。
だが、死ぬ度胸もなかった俺は、数人がかりでボコボコにされていたある日、気まぐれに「ちょっと反撃してみよう」と思った。なぜそんな思い付きをしたのかも分からない。よくよく考えたら、イジメっ子のパンチが想像以上に軽かったというのもあるのかもしれない。
反撃が怖かったからビビりながらの一撃だった。だけど、手抜きだったはずの一撃で奴らの顔が一瞬で青ざめた。その数秒で俺の人生が変わった。
確信になりつつある手ごたえを感じながら、今度は拳を強振する。拳に気持ちの良い手ごたえ。イジメっ子が文字通りに吹っ飛んだ。
俺の右ストレートはイジメっ子を一撃でノックアウトした。その日から、すべてのものがひっくり返った。
一般的にイジメられっ子が強くなった場合、自分よりも弱い相手に優しくしてやるものらしいが、俺にいたってはまるで違った。いかんせん、それまでにあまりにも殴られ過ぎていた。それなのにどうして相手に忖度する必要がある?
俺に自制する理由など何一つ残っていなかった。
もともと年の割に体だけは抜群に大きかった。そのせいで「でかい奴を倒した」とドヤりたい不良のターゲットにもなったわけだが、俺が狩る側に回った時、そのフィジカルは反則級のハンデとなる。
手始めに、これまでお世話になった奴らへ片っ端からお礼参りをした。俺が伝説の右を振るえば、威勢の良かった不良たちもバタバタと倒れていった。
謝ったところで許しやしない。お前らだって何も悪さをしていない俺を散々いたぶったじゃないか。自分の時だけ慈悲を求めるのは虫が良すぎる。
俺は奴らのプライドが傷付けられる展開を好んだ。
あいつらの思いを寄せている女子を調べ上げて、好きな娘の前で派手にノックアウトする。優しさが半分どころかプライドが9割の不良にとって、生きていける案件じゃない。俺はそれを知っていて、あえてあいつらのプライドを粉砕していった。あいつらがそのような仕打ちを俺にしてきたからだ。
すべての仕返しを終えると、俺に盾突く者はいなくなった。五六月中学のアンドリューは、不良公認のサンドバッグから恐怖の代名詞へと変わっていた。今では誰もが俺を恐怖し、媚びへつらっている。
最下層から頂点へと昇りつめた俺は、自分ですら理解の出来ない怒りを毎日抱えていた。それは時々発作のように燃え上がり、抑えるために誰かを殴った。そうでもしていないと気が狂いそうだった。
他の不良は冗談みたいに俺へ媚びている。だが、俺は知っている。こいつらの見せる恭順は、動かしがたい力の差からくるものでしかないと。こいつらは俺のことを尊敬してなんかいないし、何なら死ねばいいぐらいに思っている。
それでも俺がこうして王様でいられるのは力があるからだ。力こそすべて。それが今の俺にとっての間違いのない公理だった。
奪う側に回った俺はそう確信している。
中学生になり、かつてあった誰でも友達という牧歌的な空気が消失して以来、でかいくせに気の小さい俺はイジメっ子から恰好のターゲットとなった。毎日繰り返される陰湿なイジメに、何度首を吊ろうと思ったかも分からない。
「おい、アンドリュー。スパーリングやろうぜ」
イジメっ子は安藤龍という俺のフルネームを英語のように呼ぶ。なぜそうなったかは分からない。一見イケメンのハーフでも想像させそうなアダ名は、近所でも有名なサンドバッグの愛称となっていた。
俺はスパーリングと称した一方的な暴力に何度も晒された。明らかにイジメだったのに、誰もが見て見ぬフリをした。自分が巻き込まれたくないからだ。
俺はただ怯え、早く一日が終わればいいと思いながら、無遠慮な拳の雨に耐え続けるしかなかった。
文字通りに毎日殴られる俺は毎日、「明日死のう」と思っていた。実際に、生きていても何一つ希望を感じられなかったからだ。
だが、死ぬ度胸もなかった俺は、数人がかりでボコボコにされていたある日、気まぐれに「ちょっと反撃してみよう」と思った。なぜそんな思い付きをしたのかも分からない。よくよく考えたら、イジメっ子のパンチが想像以上に軽かったというのもあるのかもしれない。
反撃が怖かったからビビりながらの一撃だった。だけど、手抜きだったはずの一撃で奴らの顔が一瞬で青ざめた。その数秒で俺の人生が変わった。
確信になりつつある手ごたえを感じながら、今度は拳を強振する。拳に気持ちの良い手ごたえ。イジメっ子が文字通りに吹っ飛んだ。
俺の右ストレートはイジメっ子を一撃でノックアウトした。その日から、すべてのものがひっくり返った。
一般的にイジメられっ子が強くなった場合、自分よりも弱い相手に優しくしてやるものらしいが、俺にいたってはまるで違った。いかんせん、それまでにあまりにも殴られ過ぎていた。それなのにどうして相手に忖度する必要がある?
俺に自制する理由など何一つ残っていなかった。
もともと年の割に体だけは抜群に大きかった。そのせいで「でかい奴を倒した」とドヤりたい不良のターゲットにもなったわけだが、俺が狩る側に回った時、そのフィジカルは反則級のハンデとなる。
手始めに、これまでお世話になった奴らへ片っ端からお礼参りをした。俺が伝説の右を振るえば、威勢の良かった不良たちもバタバタと倒れていった。
謝ったところで許しやしない。お前らだって何も悪さをしていない俺を散々いたぶったじゃないか。自分の時だけ慈悲を求めるのは虫が良すぎる。
俺は奴らのプライドが傷付けられる展開を好んだ。
あいつらの思いを寄せている女子を調べ上げて、好きな娘の前で派手にノックアウトする。優しさが半分どころかプライドが9割の不良にとって、生きていける案件じゃない。俺はそれを知っていて、あえてあいつらのプライドを粉砕していった。あいつらがそのような仕打ちを俺にしてきたからだ。
すべての仕返しを終えると、俺に盾突く者はいなくなった。五六月中学のアンドリューは、不良公認のサンドバッグから恐怖の代名詞へと変わっていた。今では誰もが俺を恐怖し、媚びへつらっている。
最下層から頂点へと昇りつめた俺は、自分ですら理解の出来ない怒りを毎日抱えていた。それは時々発作のように燃え上がり、抑えるために誰かを殴った。そうでもしていないと気が狂いそうだった。
他の不良は冗談みたいに俺へ媚びている。だが、俺は知っている。こいつらの見せる恭順は、動かしがたい力の差からくるものでしかないと。こいつらは俺のことを尊敬してなんかいないし、何なら死ねばいいぐらいに思っている。
それでも俺がこうして王様でいられるのは力があるからだ。力こそすべて。それが今の俺にとっての間違いのない公理だった。
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