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私の名前はリューコ

でも1週間前までは「五十嵐 灯いがらし あかり」って呼ばれてた

今年で13歳になるこの身体は後何年こうやって心臓を動かせるのか

こうやって呼吸することが出来るのか

どうして私があんな恐ろしい力を抱えなければいけないのか




どうして……?




私が生まれた家庭はごく普通そのものだった

優しい父、優しい母

たった1人の娘である私を大切に育ててくれた

これが普通の幸せ

そう思ってた自分が馬鹿で今になって考えるとどうしようもない


優しいと感じていた親の愛情も

大切に育ててくれたと思っていたあの生活も


ある日を境に異常になってしまったのだ


だけどそれもまた愛情だと勘違いをしていた

昔よく作ってた傷も痩せ気味だった体も今はもう存在しない

ある日警察だと名乗る大人たちが私の両親を連れて行ってしまったから

それから私は気がついた。

自分が与えられていた愛情は「虐待」だったということを


それから私は施設に預けられ5歳から10歳になるまでそこで生活をした

そこで本当の愛情を知ったのだ

施設長の面倒の見方は私がそれまで与えられてきたものとは全く違ったのだ。


気づけば涙が出ていた


こんな幸せがいつまでも続けばいいのに





だけどそんな夢物語はあっという間に終わってしまうのだ

私が10歳になったある日のこと

国の政府が施設にやってきて子供達の無料健康診断をしに来たのだ

施設長はありがたいと言っていたけど私は少しだけ怖かった


そしてその1週間後、また政府がやってきた


どうやら私を引き取りたいらしい

あの時はなんで私だけが?と思った

だけど今考えればそれはただ身寄りのない私がたまたま国が求めていた人間だったことに過ぎないのだと理解出来るのだ。

私は幼いながらも頭を回転させて国にお願いをした


「この施設を支援して欲しい

施設長を楽させてあげるためにお金が欲しいの」


それは10歳の子供からの純粋な願いだったのかもしれない

政府は快く承諾して私は引き取られたのだ

それが地獄の始まりだったなんて思いもしなかった

また本当の両親から貰った偽物の愛情を貰うなんて


毎日検査を受けて注射を打ったり勉強したり決められたご飯を食べたり

時には私が眠ってる間に体を切り刻んだり

外に出ることも許されない


そうか…此処も異常しかないのか


当時は国の政府がやってもいいものか疑問に思った

だけど違った

あいつらは国を騙して私を研究していたのだ




まだ幼かった私は悟った

こんな苦痛を味わうなら施設に残っていれば良かったのだと

そう後悔するほどにそこでの生活が苦しかった。


気づけば私は12歳

ある日私が暮らしていたその場所が爆発事故を引き起こしたのだ

原因なんて知らない

だけどこのどさくさに紛れて逃げることが出来るかもしれない

それに気づいた私は逃げ出した

久しぶりに外に出て知ったのは、私と同じ苦痛を受けて来た同士がいるのだということ

そして私の身体能力は異常だということを


2年ぶりの外の空気はどんなものだったか

そんなの覚えていない

だけどわかるのは


私は自由になった気でいたということだけだった。
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