上 下
36 / 56

4-8

しおりを挟む
「おじさんは義獣人の皆が好きなの?」


それは私からの純粋な疑問だ

それなのに私の手はほんの少し震えていた

自分で聞いときながらいざその答えを聞くことを恐れるなんて情けない

だけどおじさんは私の手を再び優しく握り直してこう言ったんだ


「私は義獣人が好きさ…ただ仲間である義獣人を信じたいだけなんだ

君が求めている答えになっているかは分からないけどこのことを理解してくれたら嬉しいな」


少しだけ肩の力が抜けた気がした

それだけでおじさんはいい人だ、信頼しても大丈夫なんだと認識してしまうのだから私の頭は随分弱い

だけどそれでいいんだ

今の私に人を疑う能力は必要ない


「そっか…

それならいいや、私おじさんにはたくさん感謝してるからさ」


ただ少しだけおじさんを知ることが出来て嬉しいんだ

そんな言葉は心の奥にしまっておくとしよう

いつか話せるその時になるまで…ね















夕日が傾いてきた

おじさんに言われた通り午前中にスイーツを買った私達は寄り道もせずにまっすぐ施設に帰って来た。

帰ってきて改めて気付かされた

使用されている部屋の窓がすべてのシャッターが降りていたのだ。

徹底した満月の夜対策

そこまでしてここのみんなが満月の夜を恐れるのにはきっと共通の理由があるからなんだ

それはあの研究所が行った実験だ

研究の一つとして満月の夜を利用した身体実験があった。

そこで実験を受けさせられた被験体の義獣人たちは皆理性を失いかけた

私はまだ子供だったから義獣人の力が体になじまなない状態での実験により理性は失うことはなかった

しかし今でも覚えている


あの満月の夜

月が降りて、朝日が昇るその瞬間まで彼らが苦しみもがき獣の声を上げていたのを

きっと今の私なら満月をみてその光を浴びただけで理性を失うんだろうな

私はまだ完璧に力を制御することができないから


「さっさと寝よ」


きっとあの日逃げ出した仲間たちもどこかで満月を恐れて眠っているのかな?

それともその逆なのかな?

今の私にはわからないや

しおりを挟む

処理中です...