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それは司令官からとある資料を受け取ってオフィスに戻ってきた時のことだ。


「…あれ?リューコは?」


何故かリューコがいないのだ

まあ単純に外出中ならば良いのだが、誰も知らなかったら心配になるからな。


「あれ?もしかしてすれ違ってないんすか?

外の空気を吸ってくるって外に行きましたよ」


そうだったのか…すれ違ってないということは私がここに来た道とは別の道をつかったのか

まあ施設の外に出てないのなら別にいいや

最近のリューコは一人で行動することが増えたからな

親離れが早いようにも感じるのだが…育った環境があれじゃあ無理もないか


「じゃあ私も外の空気を吸ってくるか…

ニコとジェリーはこの資料をコピーして目を通しておいてくれ」


そう言って右手に持つ資料をニコに渡す

私は既に目を通しておいたから頭にそれが入ってる

ニコにそれを渡して代わりにお菓子をポケットに入れる


「じゃあよろしくな」

「ハイハイ…イッテラッシャイ」


完全に棒読みだったろそれ

呆れて棒読みになってる奴らは放っておいて私は部屋を出た。

さてさて、リューコはどこにいるのかな?









うーん…暇だ

施設を回って色んなものを見てればなにか頭の中にポンッと浮かび上がるかもしれないと思っていたのだが…そんな上手い話はないみたい


「……ん?ここどこだ?」


運が悪いのか私が方向音痴なのか…よくわからないが見覚えのない廊下に一人ぽつんと立っていた。

生憎、近くに地図が掲示してあるなんて都合のいい話はない

人の匂いもしない

そもそもここには義獣人しかいないから本当に獣やら魚の匂いがする

クンクンと鼻を動かしても美味しそうな米の匂いがするだけ


「……米の匂い?

なんでこんな人がいなさそうな空間なのに米の匂いがするんだ?」


不思議に思ってまた匂いを嗅ぐ

少しずつ濃くなる匂いを辿っていくと一枚の扉が目の前にあった。

扉の隙間からは明かりが見える、ということは誰かがいるのか

一体誰がいるのだろうか、そう思って三回ノックをしてみる

はーいと聞き覚えのある声が聞こえて足音が近づいてきた。

まさかとは思うけど…あの人かな?


「ハイハイ誰かしらこんな人気のない所まで来た物好きは……

あらリューコちゃん?」


本当にそのまさかだったよ

扉を開けてひょっこりと顔を見せてきたのは約束の人物鬼灯さんだった。


「どうも…ここ鬼灯さんの部屋だったんですね」

「正確には私専用の研究所ね

義獣人隊の衛生科のほとんどは元医者か化学者なの…そこで一人に一つずつ生活部屋と研究所が与えられるのよ」


そうだったのか…衛生科とはあまり接する機会がなかったから知らなかった。

廊下から半開きの扉の奥を除くとそこにあったのは上手に炊きあげられたほかほかご飯が丼に盛り付けられてた。

もしかして食事中だったのだろうか


「食事中…でしたか?

お邪魔してごめんなさい」

「ん?そんなことないわよ

あれ実験材料だし」


……ほかほかご飯が実験材料?

ドユコト?
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