最強の死者、現世に帰還す 〜闇の力でダンジョン無双〜

第二十一話・第四節：闇の王の剣

　カインの身体が、黒い塵となって消えていく。
　俺は無言でそれを見届けた。

　……すぐに理解した。

　カインの”力”が、俺の中に流れ込んできている。
　身体の奥で、何かが変化していく感覚。

　血が煮えたぎり、骨が軋み、筋肉が軋む。

　——これは”進化”なのか？

　そう思った瞬間、俺の腕が異形化した。

　ただの”闇”ではない。

　禍々しくも美しい、黒曜石のような装甲が腕を覆い、鋭利な鉤爪が生まれる。

　”夜喰らい”もまた変貌していた。

　漆黒の大剣は、さらに巨大に、さらに”深い闇”へと染まっていた。
　まるで、“この世の理”すら喰らい尽くすかのような——完全なる”闇の王の剣”へと。
　俺はゆっくりと息を吐く。

「……悪くねえ」

　拳を握る。

　力が漲っている。

　カインの”進化”を取り込み、俺は”最強の死者”として、さらなる高みへと至った。
　そんな俺を、アダムが見つめていた。
　彼の表情は、どこまでも静かだった。

「なるほど」

　アダムは淡々と呟く。

「やはり君は、“進化の完成形”に最も近い存在だ……」
「違えよ」

　俺はアダムを睨みつける。

「俺は”進化”なんざ興味ねえ。ただ、俺を信じてくれた奴の力を喰らって、前に進むだけだ」

　アダムは、わずかに目を細めた。

「……そうか」

　次の瞬間——エリシアが光の槍を構え、アダムに向かって駆け出した。

「——行かせない！」

　エリシアの一撃が、光の刃となってアダムを貫かんとする。

　しかし——

　バシュンッ！

　空間が歪んだ。

　エリシアの身体を、金色の鎖が絡め取る。

「なっ……！？」

　光が収束し、エリシアを”光の檻”が包み込んだ。

「これは……！？」

　エリシアが光の力を解放しようとするが、何も起こらない。

「無駄だよ」

　アダムが静かに告げる。

「その檻の中では、君の”光”は完全に封じられる」

　エリシアは歯を食いしばる。

「放しなさい……っ！」
「——これは君のためでもあるんだ、エリシア」

　アダムは、あくまで穏やかな口調だった。

「君はまだ”覚醒”したばかりだ。今の君では、私には勝てない」

　その言葉に、エリシアは悔しそうに唇を噛む。

　俺は、アダムを睨みつけた。

「エリシアに手ェ出してんじゃねえよ」

　俺は、一歩前に出る。

「俺が相手してやる。さっきの続きだ」
「——そうか」

　アダムは微笑んだ。

「では、始めよう。“人類の進化の頂点”がどちらなのかを決める戦いを——」

　——決戦の幕が、開く。