最強の死者、現世に帰還す 〜闇の力でダンジョン無双〜

夢乃アイム

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最終話・第三節:最期まであなたのそばにいる

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 光と闇が交差する。

 エリシアの剣が俺の眼前に迫るたび、俺の本能が警鐘を鳴らす。

 だが——俺は踏み込めない。

 彼女の剣を受け、弾き、受け流し……それ以上の攻撃を仕掛けることができなかった。

「……どうして?」

 光の剣が俺の"夜喰らい"を弾く。

 打ち合いの余波でダンジョンの壁が砕け、天井の一部が崩れ落ちる。

 粉塵の向こうから、彼女の声が届いた。

「あなたはいつも迷わなかった」

 エリシアが静かに歩み寄る。

 燃える白い翼が、闇に包まれたこの空間で、ひどく神々しく見えた。

「カインが化け物に成り果てたときも、迷わず戦い、糧にした」

 俺の胸が軋む。

「なのにどうしてそんなに迷うの?」

 俺は、答えられなかった。

 迷うな、と言われても無理だ。

 カインは俺の“仲間”だった。だが——エリシアは違う。

「あなたは何のために戦ってきたの?」

 エリシアが剣を構え直す。

「完全体になりたくないの?」

 彼女の瞳が、俺を射抜く。

「自分の在るべき姿を取り戻したくないの?」

 俺の奥底にある闇が蠢く。

 叫ぶように、囁くように、求める。

 ——殺せ。

 ——喰らえ。

 ——お前はそうして生きてきた。

「……っ」

 膝が震える。

 刃を生やした手が汗ばむ。

 俺の心の奥底が、ずっと凍てついたように冷たくなっていく。

 そして、ある考えが浮かんだ。

 ——ここでいいのではないか?

 俺はエリシアを殺さず、完全体にならず、このまま……彼女と一緒に、崩壊するダンジョンに埋もれて死ねばいい。

 それで、全てが終わるのではないか?

「……っ」

 エリシアが、俺の様子を見て小さく息をついた。

「……やっぱり」

 その声は、どこか悲しげだった。

 彼女は、俺に背を向けると、静かに言った。

「……約束したでしょ」

 燃える翼が、大きく羽ばたく。

「私は最期まであなたのそばにいるって」

 光の剣が、強く輝く。

「……死んで、あなたの力になって——」

 俺は息を呑む。

 エリシアが振り向き、真っ直ぐに俺を見た。

 その瞳に宿るのは、迷いのない覚悟。

「あなたが最期を迎える日まで、私はあなたのそばにいるわ……」

 次の瞬間——

 彼女は再び、俺へと斬りかかってきた。

 俺は本能的に"夜喰らい"を構える。

 刃と刃がぶつかり合い、光と闇の衝撃が周囲を裂いた。

 戦いは、もう止まらない。
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