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【#59】地下7階・第一話:血に染まる足場
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重い空気が喉の奥に絡みついた。階段を登りきった瞬間、鼻をつく血の臭いが襲ってくる。
目の前に広がっていたのは——血の池。
真紅に染まった液体がフロア一面に広がり、不気味な波紋を広げていた。浮かぶ足場はどれも不安定で、俺の一歩ごとに軋むような音を立てて揺れる。
「……落ちたら最後、か」
その池がただの液体じゃないことは、すぐにわかった。
ぬるりと、池の表面から何かが現れる。手でも足でもない、形容しがたい魔物の一部が、音もなく浮かび上がってきた。黒い目が無数に光っていた。
「来るんじゃない……!」
ミスティの刃を振るい、足場を渡りながら魔物を斬り払っていく。
血の池は静かに、だが確実に俺の足元を崩していく。立ち止まれば沈み、躊躇えば喰われる。
そんな緊張の中、背後から風が吹いた。
空気の層が裂ける音——追跡者だ。
俺と同じ姿、俺と同じ服装。ただし、その体は宙に浮いている。追跡者は血の池に接することなく、滑るように移動している。あれが……浮遊能力?
「お前もこの地獄を飛び越えるつもりってわけか」
追跡者は答えない。ただ俺を見据えたまま、足場の一つに片足を下ろす。
いや——足場の上じゃない。空中に作られた、自分専用の足場だ。
一歩ごとに足元に赤黒いエネルギーが発生し、そこに立っている。崩れることのない踏み台。
「おいおい、俺専用の足場はないのか?」
追跡者はやはり答えない。
ずるいな、と思った。
だがそれ以上に、羨ましさも、怒りもなかった。
ただひとつ、冷静に、目の前の状況を捉えていた。
「……だったら、その足場ごと叩き落とすまでだ」
ミスティの刀身が淡く燃える。足場が崩れる前に飛び移る。その連続。
血の池から魔物が飛び上がり、追跡者がその隙を突こうと動いた瞬間——
「甘いッ!!」
俺は魔物を盾にして距離を取り、一気に追跡者との間合いを詰める。刀と仮面の腕がぶつかり、火花が飛ぶ。
バランスを崩したのは、追跡者のほうだった。空中で軸を取り直すも、その浮遊の一瞬に、ミスティの刃が深く斬り込む。
……決着はまだだ。だが、次の一撃が、全てを決める。
「俺を殺しに来たんだろ? ……降りてこいよ」
俺は血の池の上に立ち、崩れかけの足場で、追跡者を見上げた。
「逃げるな。終わらせようぜ」
目の前に広がっていたのは——血の池。
真紅に染まった液体がフロア一面に広がり、不気味な波紋を広げていた。浮かぶ足場はどれも不安定で、俺の一歩ごとに軋むような音を立てて揺れる。
「……落ちたら最後、か」
その池がただの液体じゃないことは、すぐにわかった。
ぬるりと、池の表面から何かが現れる。手でも足でもない、形容しがたい魔物の一部が、音もなく浮かび上がってきた。黒い目が無数に光っていた。
「来るんじゃない……!」
ミスティの刃を振るい、足場を渡りながら魔物を斬り払っていく。
血の池は静かに、だが確実に俺の足元を崩していく。立ち止まれば沈み、躊躇えば喰われる。
そんな緊張の中、背後から風が吹いた。
空気の層が裂ける音——追跡者だ。
俺と同じ姿、俺と同じ服装。ただし、その体は宙に浮いている。追跡者は血の池に接することなく、滑るように移動している。あれが……浮遊能力?
「お前もこの地獄を飛び越えるつもりってわけか」
追跡者は答えない。ただ俺を見据えたまま、足場の一つに片足を下ろす。
いや——足場の上じゃない。空中に作られた、自分専用の足場だ。
一歩ごとに足元に赤黒いエネルギーが発生し、そこに立っている。崩れることのない踏み台。
「おいおい、俺専用の足場はないのか?」
追跡者はやはり答えない。
ずるいな、と思った。
だがそれ以上に、羨ましさも、怒りもなかった。
ただひとつ、冷静に、目の前の状況を捉えていた。
「……だったら、その足場ごと叩き落とすまでだ」
ミスティの刀身が淡く燃える。足場が崩れる前に飛び移る。その連続。
血の池から魔物が飛び上がり、追跡者がその隙を突こうと動いた瞬間——
「甘いッ!!」
俺は魔物を盾にして距離を取り、一気に追跡者との間合いを詰める。刀と仮面の腕がぶつかり、火花が飛ぶ。
バランスを崩したのは、追跡者のほうだった。空中で軸を取り直すも、その浮遊の一瞬に、ミスティの刃が深く斬り込む。
……決着はまだだ。だが、次の一撃が、全てを決める。
「俺を殺しに来たんだろ? ……降りてこいよ」
俺は血の池の上に立ち、崩れかけの足場で、追跡者を見上げた。
「逃げるな。終わらせようぜ」
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