学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(29)マッチの使いかた

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 それでもボクたちは、ゆっくりゆっくり歩いた。
 こんな不思議な【迷宮】だもん。
 なにが起こるか、わからないからね。
 それに、『怖い、は大事』だからさ。

 ようやく、プールの真ん中に到着!
 その上に置かれたテーブルの上を見る。

 「これって、アルコールランプだよね」
 「そうだな、最初の試練に出てきたのと同じだ」
 「なんで、もう1回?」
 「う~ん、わからないなぁ」
 「これが、『命の火』ってこと?」
 「ほかに、火を灯せるものもないしなぁ」

 よく見たら、アルコールランプの横にはマッチ箱。
 それも、最初と同じ。
 あとは、小さな容器に水?

 「じーちゃん、マッチ箱もあるね」
 「うん、理科室の時と同じか」
 「じゃあ、違うのは……」
 「巨大ビート板に書いてあったことだな」
 「『命の火を灯すことができるのは、子どもだけ』」
 「うん。それだ。しかし、困ったな」
 「なにが? なにが困ったの?」
 「理科室の時には、あの不思議なドーナツがあっただろ?」
 「うん」
 「それを食べて、オレが若返ってクリアしたじゃないか」
 「そうだね」

 あの時は、じーちゃんだって、わかんなかったけどね。
 ボクと同じくらいの年の子が現れてさ。
 あっという間に、火をつけて。
 それで、クリアしちゃったんだもん。
 ボクは、なんにもできなかった。

 「だけど、もうドーナツは、ないだろ?」
 「うん、ごめんね。ボクのせいだ」

 ホントは、ドーナツがたっくさんあったのに。
 ボクが、糸のこチャレンジで調子に乗ったから。
 ボクをケガさせないために。
 じーちゃんは、ドーナツを投げちゃった。
 ここに今、あのドーナツがあれば。
 こんな試練は、すぐにクリアだったのに。

 「いいんだ、ユウスケ。
  おまえがケガしなかっただけで、オレは満足だ」
 「じーちゃん……」
 「もうなくなったもののことを、考えてもムダだ。
  これからどうするか、を考えよう」
 「うん!」

 じーちゃんは、マッチ箱を手に取った。
 箱をぐいっと押して、中を見る。

 「うん。3本しか入っていないな」
 「やっぱり、イジワルだね。この【迷宮】は!」
 「そうだな、箱いっぱいのマッチがあればな。
  練習ができるんだけどな」
 「ユウスケは、1度もマッチを使ったことがないんだよな?」
 「うん」
 「それじゃあ、まずは練習だ」
 「うん!」

 たくさんの試練の中にはさ。
 やったことないことが、たくさんあったけど。
 ボクは、じーちゃんと一緒に全部クリアしてきた。
 マッチだって、きっと同じ。
 練習したら、きっとできる。
 だって、理科室の時と違って、今度は3本もある!
 最初の試練は、たった1本だったからね。

 あれ?
 ってことは、やっぱりこの【迷宮】って、親切なの?
 変なの!

 「よぉし、まずは、マッチの持ちかたからだな」
 「うん」
 「親指、人差し指、中指の3本でマッチを持つ」
 「こう?」
 「そうだ、うまいぞ~」
 「へへっ」
 「箱の横の、こするところに、マッチを当てて。
  このザラザラしたとこ、そこにな」
 「うん、うん」
 「自分から見て、奥に向かって、一気にマッチをこすりつける」
 「ふうん」
 「まずは、エアでやってみよう」
 「エア?」
 「素振りってことだな。箱を使わずに、空中で練習だ」

 「あんまり力を入れすぎると、マッチ棒が折れてしまう」
 「そうなの⁉︎」
 「そう。オレは、子どもの頃、何度も折ったよ」
 「そっか。じーちゃんも練習したんだね」
 「そうさ。最初からうまくできるやつなんて、いないよ」
 「ボク、やってみる。こう?」
 「軽く、軽く。一気に、って感じだな」
 「こう、かな?」
 「うん、うん」
 「こんな感じ?」
 「うん、大丈夫そうだ。じゃあ、やってみるか」
 「え? もう?」

 練習したけど、まだ自信はないなぁ。
 ……でも! やってみなくちゃ、わかんないよね!
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