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(4)じーちゃん現る
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このまま玄関に向かって、家に帰ろう。
ボクは、そう思っていた。
だって、さっきは理科室に入っちゃたのが失敗。
戸が開かなかったのも、きっとだれかの悪ふざけ。
さっきは助けられたけど、この変な子とも早く離れたい。
力いっぱい走って、ボクはその子を追い抜いた。
音楽室の前を通り過ぎれば、玄関だ。
……おかしい。
いつまで経っても廊下が続く。
どこまで走っても玄関が見つからない。
どうして?
ここは、ボクの学校じゃないの?
「お~い。待ってくれ~! ユウスケは、足が速いなぁ」
あせるボクの背中に、のんきな声が聞こえてくる。
また少し、イライラさせられる……。
あれ?
なんだかこの声には聞き覚えがあるぞ。
あっ!
「じーちゃん?」
バッと振り返ったボクの前に立っていたのは、じーちゃんだった!
今度は、本当にホンモノのボクのじーちゃんだ。
「じーちゃん!」
じーちゃんは、ニコニコしながら頭を撫でてくれる。
ボクは、急に力が抜けてヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。
「ユウスケ? 大丈夫か?」
「うん。じーちゃん、なんでここにいるの?」
「ええっと、ユウスケに会いに行くつもりで……」
「そうなの? 仕事は?」
「休みだった……んじゃないか?」
「そっか。それで?」
「みやげに、あんドーナツを買ったんだよ」
「あの、いつもの商店街で?」
「そうだ。店の人がいつもの兄さんじゃなくてな」
「ふうん」
「『限定の若返りドーナツは、いかがですか』って言うんだよ」
「なにそれ、おもしろそう!」
「そう言うと思ってな、それを買って、それから……」
「それから?」
「あれ? どうしたんだっけ?」
「……じーちゃん、大丈夫?」
「うん、いや、うん。そうだ、そうだ!」
「思い出したの?」
「気づいたら、学校にいたんだよ」
「え? 気づいたらって……」
「なんだかすごく腹が減って、ドーナツを食べたくなって」
「おみやげなのに?」
「うん。ひとつ、食べようと思ってな」
間違いなくボクのじーちゃんなんだけど、少し様子が変だ。
いつもと違って、ぼんやりしてるし。
それに、おみやげ!
じーちゃんが買ってきてくれるおみやげは、ボクの楽しみ♪
ママはいつも「おやつは食べすぎ禁止!」って言う。
でも、じーちゃんのおみやげだけは別。
「もう、父さんは仕方ないわね」って笑って。
たくさん食べても叱られない。
そんな時、じーちゃんはいつもカッコよくウィンクをする。
ママに見えないように、ボクにだけ分かるように。
キュッと片目を閉じて、親指を立てる。
ひひひっと笑う顔は、イタズラに成功した子どもみたい。
そんなじーちゃんとボクは、親友みたいな関係だ。
いつも学校が休みになったら、じーちゃんと過ごす。
だって、すっごくすっごく気が合うんだ。
じーちゃんが、同じ年だったら、絶対に親友だったと思う。
で、なにが言いたいかというと。
じーちゃんは、いつもボクを最優先にしてくれる。
だから、ボクへのおみやげを勝手に食べちゃうなんてことは!
絶対にないんだ。
「オレはいいから、ユウスケが食え」
これが、じーちゃんの口ぐせだからね。
やっぱり、やっぱり、変だ!
「半分に割って、パクッと食べたんだよ」
「うん……」
「そうしたら、なんと!」
「うん」
「オレ、若返って兄ちゃんになってた」
「え?」
これ、この話。
さっきも聞かなかった?
理科室に急に現れたお兄さんの話。
それとまったく同じじゃない?
「それで、次の瞬間には、さっきの理科室にいてなぁ」
「ちょっと待って! さっきのお兄さんって」
「おう! オレだよ。さっきもそう言ったろ?」
「あのお兄さん、ホントにじーちゃんだったの?」
「そうだよ。あれ? まだ信じてなかったのか」
「そりゃ、そうだよ。信じられるわけないでしょ」
「ユウスケは若いのに、頭が固いなぁ」
あ、これも。
さっきまで理科室で一緒だった男の子に言われたセリフ。
まさか、あの子も?
「さっきだって、オレがもう一度食べてみせたっていうのによ?」
「う、うん」
「おまえは、ちっとも信じちゃくれなかったわけだ」
「ごめん! じーちゃん!」
「まぁ、気持ちも分かるけどよ?」
「うん」
「オレだって、子どもだった頃や兄さんだった頃があるんだぜ?」
それは、頭では分かってるんだ。
でも、ボクにとってのじーちゃんは、やっぱりじーちゃんで。
じーちゃんの姿じゃないじーちゃんは……。
やっぱりボクのじーちゃんじゃない気がしちゃう。
しょうがない、よね?
ボクは、そう思っていた。
だって、さっきは理科室に入っちゃたのが失敗。
戸が開かなかったのも、きっとだれかの悪ふざけ。
さっきは助けられたけど、この変な子とも早く離れたい。
力いっぱい走って、ボクはその子を追い抜いた。
音楽室の前を通り過ぎれば、玄関だ。
……おかしい。
いつまで経っても廊下が続く。
どこまで走っても玄関が見つからない。
どうして?
ここは、ボクの学校じゃないの?
「お~い。待ってくれ~! ユウスケは、足が速いなぁ」
あせるボクの背中に、のんきな声が聞こえてくる。
また少し、イライラさせられる……。
あれ?
なんだかこの声には聞き覚えがあるぞ。
あっ!
「じーちゃん?」
バッと振り返ったボクの前に立っていたのは、じーちゃんだった!
今度は、本当にホンモノのボクのじーちゃんだ。
「じーちゃん!」
じーちゃんは、ニコニコしながら頭を撫でてくれる。
ボクは、急に力が抜けてヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。
「ユウスケ? 大丈夫か?」
「うん。じーちゃん、なんでここにいるの?」
「ええっと、ユウスケに会いに行くつもりで……」
「そうなの? 仕事は?」
「休みだった……んじゃないか?」
「そっか。それで?」
「みやげに、あんドーナツを買ったんだよ」
「あの、いつもの商店街で?」
「そうだ。店の人がいつもの兄さんじゃなくてな」
「ふうん」
「『限定の若返りドーナツは、いかがですか』って言うんだよ」
「なにそれ、おもしろそう!」
「そう言うと思ってな、それを買って、それから……」
「それから?」
「あれ? どうしたんだっけ?」
「……じーちゃん、大丈夫?」
「うん、いや、うん。そうだ、そうだ!」
「思い出したの?」
「気づいたら、学校にいたんだよ」
「え? 気づいたらって……」
「なんだかすごく腹が減って、ドーナツを食べたくなって」
「おみやげなのに?」
「うん。ひとつ、食べようと思ってな」
間違いなくボクのじーちゃんなんだけど、少し様子が変だ。
いつもと違って、ぼんやりしてるし。
それに、おみやげ!
じーちゃんが買ってきてくれるおみやげは、ボクの楽しみ♪
ママはいつも「おやつは食べすぎ禁止!」って言う。
でも、じーちゃんのおみやげだけは別。
「もう、父さんは仕方ないわね」って笑って。
たくさん食べても叱られない。
そんな時、じーちゃんはいつもカッコよくウィンクをする。
ママに見えないように、ボクにだけ分かるように。
キュッと片目を閉じて、親指を立てる。
ひひひっと笑う顔は、イタズラに成功した子どもみたい。
そんなじーちゃんとボクは、親友みたいな関係だ。
いつも学校が休みになったら、じーちゃんと過ごす。
だって、すっごくすっごく気が合うんだ。
じーちゃんが、同じ年だったら、絶対に親友だったと思う。
で、なにが言いたいかというと。
じーちゃんは、いつもボクを最優先にしてくれる。
だから、ボクへのおみやげを勝手に食べちゃうなんてことは!
絶対にないんだ。
「オレはいいから、ユウスケが食え」
これが、じーちゃんの口ぐせだからね。
やっぱり、やっぱり、変だ!
「半分に割って、パクッと食べたんだよ」
「うん……」
「そうしたら、なんと!」
「うん」
「オレ、若返って兄ちゃんになってた」
「え?」
これ、この話。
さっきも聞かなかった?
理科室に急に現れたお兄さんの話。
それとまったく同じじゃない?
「それで、次の瞬間には、さっきの理科室にいてなぁ」
「ちょっと待って! さっきのお兄さんって」
「おう! オレだよ。さっきもそう言ったろ?」
「あのお兄さん、ホントにじーちゃんだったの?」
「そうだよ。あれ? まだ信じてなかったのか」
「そりゃ、そうだよ。信じられるわけないでしょ」
「ユウスケは若いのに、頭が固いなぁ」
あ、これも。
さっきまで理科室で一緒だった男の子に言われたセリフ。
まさか、あの子も?
「さっきだって、オレがもう一度食べてみせたっていうのによ?」
「う、うん」
「おまえは、ちっとも信じちゃくれなかったわけだ」
「ごめん! じーちゃん!」
「まぁ、気持ちも分かるけどよ?」
「うん」
「オレだって、子どもだった頃や兄さんだった頃があるんだぜ?」
それは、頭では分かってるんだ。
でも、ボクにとってのじーちゃんは、やっぱりじーちゃんで。
じーちゃんの姿じゃないじーちゃんは……。
やっぱりボクのじーちゃんじゃない気がしちゃう。
しょうがない、よね?
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